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船乗りだった父の良性石綿胸水の発症によるアスベスト被害(遺族手記)

公開日:2024年3月7日

執筆:北海道支部 椿 美恵子

中皮腫の疑い

始まりは2005年(平成17)の春、父が78才の時でした。北方領土生まれの父が初めて生まれ故郷への墓参に参加することになりました。そこで健康診断書が必要となり根室の病院にて検査の結果、アスベストによる中皮腫の疑いと診断されました。

なぜに船乗りがアスベストの病気になったのかと本人も家族も頭を傾げましたが、機関長だった父に色々な話を聞くと、エンジン室には沢山の石綿を使用していて父が補修なども度々おこなっていたようです。そのせいかわかりませんが、かなりのアレルギー体質で母には体がチクチクしてかゆいとよく言っていたようです。

良性石綿胸水の診断

その後、根室の病院から札幌の大学病院へ移り再検査をしたところ、良性石綿胸水と診断されました。病気に効く薬はなく家族全員途方にくれました。

父がこれなら、がんのほうがまだましだ…とつぶやきました。私もそう思いました。

その後根室に戻り、苦しい胸を抱え保健所、元の会社と回り、石綿による健康被害の申請書を作成し翌年、環境再生保全機構に提出しました。

4月に出した書類の返答が10月にありましたが、そのころから良性石綿胸水は認定の病名に入っていなかったことから不認定の通知がきました(注:石綿健康被害救済制度では、良性石綿胸水は現在も対象疾病になっていない。なお、労災保険制度では対象になっている)。

父はそのころ、生きる気力もなくなっており胸には水がたまっているせいか食事もあまりとれず大好きなお酒も飲まず、すっかりやつれてしまってました。そこへ不認定の通知。希望を全く失った父はそこから、ガタガタと悪くなり、2か月あまりで亡くなってしまいました。無念なことだったと思います。

船員保険制度への申請と造船アスベスト被害の国家賠償請求訴訟を提訴

時がたち、2023年に新聞でアスベスト健康被害に関する記事をみたことから患者と家族の会に相談し、父の被害に関して船員保険制度へ請求することにしました。まさか認定されるとは思っていませんでしたので、約半年後に認定の連絡が来た時には大変驚きました。

請求時、父が当時通院していた病院にはカルテ等が残っておらず、父が良性石綿胸水に罹患していると証明するための資料は死亡診断書などに限られていました。

この度、父の被害について国に責任があったと考え、裁判を起こしました。

父のように危険をしらずに、無防備でアスベストを吸い、病気になってしまった人やそれが原因だとも知らずに亡くなった方々は数多くいらっしゃると思います。そんな方々の思いの束が国に届くことを願います。

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