中皮腫・アスベストの病気のこと

どんな病気になるの?なぜ病気になるの?

どんな病気になるの?なぜ病気になるの?

更新日:2022年11月24日

公開日:2022年2月25日

アスベスト(石綿)を吸ってしまったことによる代表的な病気には、悪性腫瘍である「中皮腫」(読み方:ちゅうひしゅ)「肺がん」、非悪性腫瘍である「石綿肺(アスベストが原因のじん肺症)」「びまん性胸膜肥厚」「良性石綿胸水」があります。国際的には、「卵巣がん」や「喉頭がん」との関わりも指摘されています。
国内外を問わず、有名人(俳優・作家・スポーツ選手・政治家など)の方の被害も公表されており、「誰がなってもおかしくない病気」です。アスベストは天然の鉱物で、日本では明治時代からアスベスト産業が興りました。日本で使用された石綿の多くは海外から輸入されたものです。特に、1970年代から1980年代後半にかけて大量に使用され、輸入量は1,000万トンを超えています。現在は輸入・使用・流通等は禁止されていますが、2000年代前半まで広く利用されていました。

アスベスト疾患の被害者数

中皮腫は胸膜に発生することが最も多く、一部に腹膜、まれに心膜や精巣漿膜に発生します。人口動態統計に基づく中皮腫の年間死亡者は1600人以上にのぼっています。2021年には1635人(男1383人:女252人)となっています。日本の被害のピークは2030年から2035年ごろにかけてピークをむかえるという報告もあります。国際的には、仕事を通じて被害を受ける方(職業ばく露)では、中皮腫の10倍以上のアスベストが原因の肺がん被害が生じているとする推計もあります。

中皮腫アスベスト死亡被害者数

アスベストの病気になる理由

アスベストは自然の鉱物で人の髪の毛の直径よりも極めて細く、肉眼では見ることが出来ない繊維状のものです。そのため飛散しやすく、吸入されて人の肺に沈着します。この体内に滞留したアスベストが要因となって、10年から60年以上という長い潜伏期間を経て中皮腫や肺がんなどの病気を引き起こすことがあります。

それぞれの病気の発症には、アスベストを吸った量などによってもリスクは異なり、仕事で多く吸っても病気を発症しないこともあります。ただし、中皮腫は少ない量のアスベストを吸ってしまっただけでも発症してしまうことがあります。

中皮腫や肺がんなどの発症とタバコ(喫煙)の関係

中皮腫の発症に喫煙歴は関係ありません。肺がんの発症には喫煙歴も関係があります。アスベストばく露歴と喫煙歴のある方では、リスクが相乗的に高まるとされています。石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水などの発症と喫煙歴は関係がありませんが、いずれの疾患でも発症後の喫煙は呼吸機能に影響を与えるものですので十分に考慮しましょう。

アスベストと関連のある仕事

以下のような職業についていた方はアスベストを吸ってしまった可能性があり、発症の可能性があります。あくまで一例であり、どのようなお仕事であっても、作業の内容によっては危険性が生じる可能性があることにご注意ください。

石綿鉱山業、砕石作業、石工(蛇紋岩等)、石綿紡織製品製造業、石綿水道管製造業、建設業(石綿吹付工、現場監督、とび、大工、配管工、電気工、左官工、解体工、塗装工、看板工、鉄筋工、重機オペレーターなど)、造船業、自動車整備業、バス運転手、港湾荷役・港湾運送業、船舶関連業、鉄鋼関連業、鉄道業(JR・国鉄等)、タバコ製造業、農業、看護師、歯科技工士、美容師、学校教員、劇団員、運搬・運送業、道路関連業、倉庫内作業、消防士、自衛隊、各業種における事務職員、各業種におけるタルク(滑石)を扱う作業

お仕事以外のアスベストばく露の可能性

お仕事以外の石綿ばく露でアスベストの病気になってしまう原因には主に次のような形態があります。

①環境ばく露

居住・通勤圏内に石綿を扱う工場や作業場があった、建築物の改修・解体工事があったことで、周辺・近隣に飛散した石綿を吸ってしまうことで病気になってしまうことがあります。さいたま市、東京都大田区、横浜市鶴見区、岐阜県羽島市、大阪市西成区、大阪府泉南市・阪南市、兵庫県尼崎市、奈良県王子町・斑鳩町、香川県高松市、佐賀県鳥栖市などに関連があります。

②家庭内ばく露

石綿製造業、建設業などの作業者が家庭内に作業着や防じんマスク等を持ち帰り、洗濯等をしていた家族が病気を発症することがあります。

③建物ばく露

公営住宅等においては天井に石綿が吹き付けられ、むき出しになっていることもありました。居住区域以外には、学校(各種教室、体育館等)、鉄道事業者が所有している建物でも石綿吹付がむき出しになっていた例もあります。

鈴木敏夫(筑波大学医学医療系 臨床腫瘍学/腫瘍内科 専任講師)
鈴木敏夫(筑波大学医学医療系 臨床腫瘍学/腫瘍内科 専任講師)

中皮種の薬物治療は長らく進歩が見られていませんでしたが、ニボルマブ療法の承認、ニボルマブ+イピリムマブ療法の承認に端を発して、有望な臨床試験の結果が次々に報告されてきています。乳がんに対して本邦でも保険承認されているアベマシクリブ(CDK4/6阻害剤)を用いたp16ink4A陰性の中皮種患者さんに対する第2相試験(MiST2試験)の結果が2022年にLancet Oncology誌に報告され、今後の開発に期待が持てる内容でしたが、中皮種にもついに分子標的薬が参入してくるのかと喜ばしい気持ちになりました。希少がんであるが故に臨床試験の実施が困難となり得る領域ではありますが、創薬技術のみならず、ヒト検体を用いたオルガノイドなどでのpreclinical studyの確立が強く望まれる分野だと考えています。アスベスト吸入という発症リスクが同定されているため、疾患予防の観点から、遺伝子変異以外のアプローチでも病態解明の努力を継続することが必要なのは間違いありません。

【経歴】

千葉大学医学部医学科卒業後、東京都済生会中央病院、東京都立多摩総合医療センター呼吸器科勤務の後、千葉大学呼吸器内科にて基礎研究の他、悪性胸膜中皮種症例に対するNK4遺伝子発現型アデノウイルスベクターを用いた医師主導第1相臨床試験に従事。米国Vanderbilt University Medical Center勤務の後、2019年より筑波大学医学医療系 臨床腫瘍学/腫瘍内科にてがんゲノム医療、オルガノイド開発を含めた各種トランスレーショナルリサーチに関わっている。

【監修記事】

中皮腫や肺がんなどのアスベスト関連疾患とがん遺伝子パネル検査(がんゲノムパネル検査)

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