お金と補償のこと

お金と補償のこと

更新日:2022年9月26日

公開日:2022年2月7日

「中皮腫」「肺がん」「石綿肺」「びまん性胸膜肥厚」「良性石綿胸水」などのアスベスト(石綿)の病気は、その多くが根本的な治療法がありません。治療や療養には、経済的な負担が重くのしかかります。そのため、アスベスト(石綿)の病気に対しては療養環境の改善等を目的とした公的制度が整備されています。公的制度には、労災保険制度、石綿健康被害救済制度、建設アスベスト給付金制度、介護保険制度、傷病手当金、障害年金、障害者手帳などがあります。ただし、これらの制度を利用するためには、それぞれの窓口に申請する必要があります。

また、公的制度ではありませんが、雇用されていた会社や国、建材メーカーなどに対して賠償を求めることもできます。上記の一部の制度・権利は、ご遺族の方々も請求・申請・請求が可能となっています。請求・申請には時効などがありますのでご注意ください。

 

監修

位田 浩(弁護士(位田浩法律事務所)・アスベスト訴訟弁護団事務局長)

伊藤明子(弁護士(かけはし法律事務所)・大阪アスベスト弁護団

坂本はと恵(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター)

労災保険制度

お仕事が原因で、中皮腫や肺がんや石綿肺などのアスベストが原因の病気になった場合に、医療費や通院交通費、休業のための補償などが支給される制度です。事業主などでのお仕事は対象となりませんが、わずかでも雇われていたお仕事の関係でアスベストを吸った可能性がある方は対象となる可能性があります。中皮腫など、アスベストの病気になられたすべての方はまず、労災保険制度の請求と認定を目指してください。石綿健康被害救済制度との同時申請も可能です。

対象者 業務上の事由により中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水に罹患した患者、あるいはこれら疾病によってお亡くなりになった方の遺族
申請手続 窓口:労働基準監督署
必要書類:労災保険給付関係請求書など
給付の内容

・療養(補償)等給付(医療費、通院費用など)
・休業(補償)等給付(年齢を問わず、入通院や療養のために労働ができず賃金等の支払いがされていない場合)
・遺族(補償)等給付
・葬祭料、労災就学援護費等

※石綿肺は、管理4の方か管理2及び3でじん肺法所定の合併症のある方が対象となります。
※給付金額は認定者ごとに異なります。
※各給付には請求期限があります。
【ご注意ください】労災保険制度における中皮腫患者さんの通院交通費

石綿健康被害救済制度

お仕事以外の原因やアスベストを吸った記憶が全くない方で、中皮腫や肺がんや石綿肺などのアスベストが原因の病気になった場合に、医療費や療養手当などが支給される制度です。事業主など、一度も人に雇われてお仕事をしたことがない方も対象となります。労災保険制度との同時申請も可能です。労災保険制度の対象となりうる方でも労災請求をしていない方が多く見受けられます。

対象者 中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚に罹患した患者、あるいはこれら疾病によってお亡くなりになった方の遺族
申請手続 窓口:独立行政法人 環境再生保全機構
必要書類:認定申請書など
給付の内容 療養中の方
・医療費
・療養手当(月額103,870円)

認定されたのち、療養中の方がお亡くなりになった場合
・葬祭料(199,000円)
・未支給の医療費等
・救済給付調整金(医療費および療養手当、遺族へ支給した未支給の医療費などの合計が280万円に満たない場合に差額を支給)

未申請・認定前に療養中の方がお亡くなりになった場合
・特別遺族弔慰金(2,800,000円)
・特別葬祭料(199,000円)※労災保険制度との同時申請ができます。
※各給付には申請期限があります。

 

建設アスベスト給付金制度

建設現場で働き、中皮腫や肺がんや石綿肺のアスベストが原因の病気になった場合に給付金が支給される制度です。支給には、業務の内容やアスベストを吸った時期などの要件があります。申請をする方は、建材メーカーへ補償を求めることも検討してください。

対象者

中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水に罹患した患者、あるいはこれら疾病によってお亡くなりになった方の遺族のうち、以下のいずれかの要件に該当する方

・昭和47年10月1日から昭和50年9月30日のあいだに、「石綿吹き付け作業」に係る建設業務に従事
・昭和50年10月1日から平成16年9月30日のあいだに、「一定の屋内作業場」でおこなわれた作業に係る建設業務に従事

申請手続 窓口:厚生労働省労働基準局労災管理課建設アスベスト給付金担当
必要書類:特定石綿労災等支給決定情報提供申請書、給付金申請書など
給付の内容

・石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のない方(550万円)
・石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のある方(700万円)
・石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のない方(800万円)
・石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のある方(950万円)
・中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺管理4、良性石綿胸水である方(1,150万円)
・上記の疾病によってお亡くなりになった方(1,200万円〜1,300万円)

※給付金は損害の一部を補填するものです。建材メーカー等への賠償を求めることも検討してください。
※療養中の方が給付金を支給された後、症状が悪化した方やお亡くなりになった場合には、差額の追加給付金が請求できます。
※石綿関連建設業務への従事期間が一定期間未満であった場合、肺がんの方で喫煙習慣があった方は、給付金等の金額が1割減額されます。

 

工場型アスベスト被害補償

アスベスト(石綿)製品製造工場で仕事をしていた方やそこに出入りしていた方、アスベスト含有製品を工場内等で取り扱っていた方は、大阪・泉南アスベスト訴訟最高裁判決に基づいて国と和解して賠償を得られる可能性があります。

対象者

中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水に罹患した患者、あるいはこれら疾病によってお亡くなりになった方の遺族のうち、以下の要件に該当する方に対して国が損害賠償の支払いをおこなうことがあります。

・昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までのあいだに、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、労働者として、石綿粉じんにばく露する作業に従事した方(運送業者のような間接的な業務の従事者も含みます)。

請求手続 窓口:弁護士に依頼し、裁判所への裁判手続き
必要書類:裁判手続き関係書類
賠償の内容

・石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のない方(550万円)
・石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のある方(700万円)
・石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のない方(800万円)
・石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のある方(950万円)
・中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺管理4、良性石綿胸水である方(1,150万円)
・上記の疾病によってお亡くなりになった方(1,200万円〜1,300万円)

※10%相当の弁護士費用と遅延損害金が別途支払われます。
※賠償金は損害の一部を補填するものです。雇用されていた会社へ賠償を求めることができる場合もあります。
※療養中の方が賠償金を受け取った後、症状が悪化した場合やお亡くなりになった場合には、差額の慰謝料等の請求もできます。

団体交渉・裁判

労災制度や石綿健康被害救済制度、建設アスベスト給付金制度などによる給付では、中皮腫や肺がんや石綿肺などアスベストが原因の病気になった場合の損害の一部しか補償されません。アスベストユニオンなどの労働組合に加入して雇用されていた(雇用されている)会社と団体交渉を通じて補償に関して話し合うこともできます。また、アスベスト訴訟に実績のある弁護士や弁護団(実績やノウハウがない弁護士や弁護士事務所が一定数あります)を通じて裁判等を通じて会社や国、建材メーカーに対して補償を求めることができます。

対象者 中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水などに罹患した患者、あるいはこれら疾病によってお亡くなりになった方の遺族
申請手続 窓口:アスベストユニオン、弁護士・弁護団
必要書類:調査結果復命書など
支援の内容

・雇用されている、されていた会社との団体交渉や示談交渉
・雇用されている、されていた会社、建材メーカーや国などへの損害賠償請求

※弁護士・弁護団は、最高裁判決などの獲得実績などに違いがあります。

介護保険制度・傷病手当金・障害年金・障害者手帳

介護保険制度

介護保険は、中皮腫や肺がんや石綿肺などのアスベストが原因の病気になった方の中には、身体機能の状況などに応じて申請ができ、認定を受けることができます。「介護」という言葉が先行して、申請をしない方が目立ちますが、40歳以上の患者さんは認定されて介護サービスを受けられる可能性があります。「まだ介護は必要ない」と感じる方も申請を検討してください。

対象者 ・65歳以上の中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水などに罹患した患者など
・中皮腫・肺がんの患者さんは、40歳~64歳でも一定の要件を満たす場合、介護保険申請の対象となる場合があります。
申請手続 窓口:市町村またはお住まいの地域を管轄する地域包括支援センター
※申請窓口の名称は市町村により異なりますので、ご心配な場合はWEBサイトなどで事前に確認しましょう。
必要書類:①要介護認定申請書
     ②介護保険被保険者証(65歳以上)
        40歳~64歳の場合は、健康保険被保険者証を提示
給付の内容 ご自宅などで受けられるサービス(居宅サービス)
・軽度者に対する福祉用具貸与の例外給付(「車いす及び車いす付属品」、「特殊寝台及び特殊寝台付属品」など)
・訪問介護、訪問介護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導など介護保険施設で受けられるサービス(施設サービス)
・医療、介護、リハビリテーションなど地域の小規模老人ホーム等で受けられるサービス(地域密着型サービス
・食事、排せつ、入浴の介助など
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護など

※利用できる介護保険サービスは、要介護認定の介護を必要とする度合い(要支援1~2、要介護1~5までの7段階)によって異なります。
※中皮腫・肺がんの患者さんであれば、40歳以上で介護保険サービスを利用できる可能性があります。

傷病手当金

雇用されている方で、中皮腫や肺がんや石綿肺などのアスベストが原因の病気になり、治療等の関係で会社から給与等の報酬が受けられない場合に給付を受けることができます。ただし、労災保険制度における休業補償との併給はできませんので、労災認定された場合は支給分を返還する必要があります。労災認定の可能性や見通し、家計の状況等を勘案して申請を考えてみましょう。

対象者 中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水に罹患した患者など
申請手続き 窓口:雇用されている会社を通じて、健康保険組合や協会けんぽなどの保険者へ
必要書類:健康保険傷病手当金支給申請書など
給付の内容

・傷病手当金

※支給される1日あたりの金額は、「『支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額』(※)÷30日×(2/3)」が基本となります。
※後に労災認定を受けて休業補償給付が支給された場合は支給された金額を返還する必要があります。ただし休業補償給付が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます。その他、申請者の状況によって調整があります。

障害年金

中皮腫や肺がんや石綿肺などのアスベストが原因の病気になった方で、初診日から1年6ヶ月を経過して、日常生活や働くことが困難な場合などに「障害基礎年金」か「障害厚生年金」が支給されます。支給の条件には、国民年金や厚生年金保険などへ加入しているなどの条件があります。また、労災保険制度における休業補償や障害補償年金との併給はできますが、労災保険制度の給付が併給調整で減額されて支給されることになります。

対象者 中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水に罹患した患者、原則として初診日から1年6ヶ月が経過し、障害認定基準を満たしている方
申請手続き 窓口:年金事務所または市区町村
必要書類:年金請求書、受診状況等証明書など
給付の内容 ・障害基礎年金(18歳年度末(高校卒業時)までの子がいる場合は加算あり)
・障害厚生年金(配偶者がいる場合は配偶者加給年金あり)
※障害厚生年金は、標準報酬月額などによって年金額が異なります。
※労災の障害補償年金などを受給されている方は併給できますが、労災からの支給額が調整されます。

障害者手帳

中皮腫や肺がんや石綿肺などのアスベストが原因の病気になった方で、身体の障害が一定の条件にある方は「身体障害者手帳」が交付され、さまざまなサービスや経済的な支援を受けることができます。医療関係装具の購入費軽減、日常生活用具の支給、所得税や住民税などの控除・減免を受けることができます。

対象者 中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水に罹患した患者などで、交付要件を満たしている方
申請手続き 窓口:市区町村(福祉事務所や福祉担当課)
必要書類:身体障害者診断書・意見書など
サービスの内容 ・税金の優遇(所得税、住民税、自動車税、相続税など)
・各種割引・優遇(飛行機・電車・バスなどの運賃、高速道路等の有料道路料金、NHK受信料、福祉タクシー料金など)
・補装具・用具費の支給(人工肛門、人工膀胱、介護ベッドなどの購入に際し給付券を配布)
・手当や貸付等(手当給付〔重度の障害がある方が対象〕、生活福祉資金の貸付)
・就職・転職等の支援
※障害の程度によって、手帳が交付されない場合があります。
※受けられるサービスは、障害等級によってことなります。
坂本はと恵(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター)
坂本はと恵(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター)

日本における公的制度は、原則自己申請制となっていることから、ご自身に合致した制度を見つけて申請し、無事サービスを受けるまでに苦慮する方も少なくありません。

一人で抱え込まず、おかかりの病院の相談支援センターにお声掛けください。

お手伝いさせていただきます。

【経歴】

精神科クリニックと国立がんセンター中央病院での勤務を経て、2004年9月に国立がん研究センター東病院に異動、患者・家族支援相談室の立ち上げに携わる。2014年4月にサポーティブケアセンター/がん相談支援センターに組織改組、2016年4月より副サポーティブケアセンター長。社会福祉士・精神保健福祉士。

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