お知らせ

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中皮腫や肺がんなどのアスベスト関連疾患とがん遺伝子パネル検査(がんゲノムパネル検査)

公開日:2022年6月30日

近年、がん治療において、「がんゲノム医療」が注目されています。全ての遺伝子を総称してゲノムと言いますが、がんはこのゲノムの変異が蓄積してがん細胞が無秩序に増殖し、他の組織や臓器に浸潤/転移して発症します。そこで、最新の遺伝子解析装置である次世代シークエンサーを用いてがん細胞のゲノム変異を調べ、その結果に基づいて最も適していると考えられる治療を選択していくのが、「がんゲノム医療」です。

これまで、がん治療は臓器ごとに行われていました。例えば、胃がんには胃がんに効く抗がん剤が使われ、肺がんには肺がんに効く抗がん剤がつかわれるといった治療が行われていました。しかし、がんの原因となる遺伝子異常を見つけることができれば、どの種類のがんであろうと、この遺伝子異常に効く同じ抗がん剤(分子標的薬)を使えることとなります。

そして、このがんの発生や悪性化などに関わる遺伝子異常をセットで一度に見つける検査を「遺伝子パネル検査」といいます。現在、がん遺伝子パネル検査は保険適用されています。このため、中皮腫及びアスベスト起因の悪性腫瘍の患者さんで石綿救済制度や労災保険制度等で認定されている方は、がん遺伝子パネル検査もそれら給付の範囲内で受けられる可能性がありますので、受診先の医師に確認してみることをお勧めします。

また、遺伝子パネル検査により得られたデータは、患者さん御本人のためだけでなく、患者さんの御同意が得られれば、国立がん研究センターのC-CAT(がんゲノム情報管理センター)に登録され、今後の同じがん種の治療研究に使ってもらえることになり、治療法開発に生かされていきます。先述の通り、中皮腫及びアスベスト起因の悪性腫瘍は、遺伝子パネル検査を各種制度の給付の範囲内で受診できる可能性があるため、一定のポイントを押さえれば、ほぼ御負担なくこの検査を受けることができます。

遺伝子パネル検査の受診から結果までの流れ

ここで、この検査の理解のため、遺伝子パネル検査の流れを記載します。

①主治医に遺伝子パネル検査を受けたい旨を話し、受診する病院を選定

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②遺伝子パネル検査を受けるサンプル(検体)を用意

※過去に手術や生検をしており、十分な残量が残されていて、経年劣化していないと想定される場合はそれを用います。そうでない場合は、再度生検を実施して腫瘍組織を用いたがん遺伝子パネル検査を実施するか、血液を用いたリキッドバイオプシーを選択するかを主治医と相談して決定します。2021年8月よりがん組織から血中に漏出する循環腫瘍DNA(ctDNA)を含む遊離DNA(cfDNA)を解析するリキッドバイオプシーが保険収載されています。

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③専門機関でこのサンプルの検査を実施

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④検査結果について主治医を含めた専門家会議(エキスパートパネル)で検討し、病的意義を持つ遺伝子変異の特定と治療法の有無を検討

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⑤がん遺伝子パネル検査外来の医師より結果を説明

遺伝子パネル検査と治療に関する課題

このように記載すると、良いことばかりのようですが、実際にはいくつかの問題点があります。

  • 遺伝子パネル検査を受けることができる条件(標準治療が終了ないしは終了見込みであり、またがん遺伝子パネル検査は一度しか受けられない)があります。これは、すべての遺伝子パネル検査を受ける患者が抱える問題で、今後是正が必要であると考える医療者が多いです。
  • 遺伝子パネル検査を受けても、有効な治療に結び付くケースは多く無く、遺伝子異常が検出される割合は50%程度であり、治療薬にたどり着くケースは10%-20%と言われています(固形がん全体での割合を指しており、中皮腫・肺がんなどの特定のがん腫での割合を指しているものではありません。)。
  • 遺伝子パネル検査を行った際に、家族性腫瘍の原因遺伝子変異(生殖細胞系列遺伝子変異)、つまり遺伝的発がんリスクが発見される場合があります。この遺伝的異常は、親・兄弟・子供などの血縁親族と共有している場合もあります。運命論的な話を聞きたくないということで、生殖細胞系列の遺伝子変異であったかどうかについての説明を受けたくないと思われる患者さんもいらっしゃいます。また、患者さんが生殖細胞系列遺伝子変異かどうかの結果を聞きたい場合でも、ご家族はそう思わない場合もございます。逆に、そうした情報を知っておくことで、人間ドックなどを利用したがん早期発見に役立てられる場合もあります。検査を受ける前に、1)生殖細胞系列遺伝子変異の有無について説明を受けるかどうか、2)説明を受ける場合、ご家族に開示するか、3)ご家族は、開示を希望するかどうか、について外来主治医とよくご相談して決めておくことが重要です。
  • 具体的な治療薬が見つかった場合でも、それらの治療が保健診療で実施できるとは限らず、治験や保険適用外となる可能性があります。治験は、病状により参加できない可能性があります。保険適用外の抗がん剤を用いて治療する場合には、先進医療や患者申出療養制度、自由診療が考えられます。自由診療の場合、高額療養費制度も使用できません。加えて、患者申出療養制度では申請から認可までおおよそ3か月以上かかり(審査によって、不適格と判定される場合もある)、病状の進行の早い中皮腫・アスベスト関連疾患では現実的ではない場合もあります。このため、がん遺伝子パネル検査では受診のタイミングが重要です。受診可能な条件に合う場合は、なるべく早くがん遺伝子パネル検査を受けることをお勧めします。
患者申出療養

患者申出療養の費用負担のイメージ  厚生労働省 患者申出療養制度

自由診療のクリニック等で実施している遺伝子治療や遺伝子検査

各種広告などでは、遺伝子治療や遺伝子検査を実施している自由診療のクリニック等も散見されますが、「がんゲノム医療中核拠点病院」「がんゲノム医療拠点病院」や「がんゲノム医療連携病院」以外で実施されているがん遺伝子パネル検査やそれに関連する診断・治療に関しては有効性が明らかとは言えません。適切な医療機関を通じて検討をするようにしましょう。

自由診療で実施されたがん遺伝子パネル検査結果に紐づけられた治療薬を保険診療で実施する事は、混合診療禁止の法律があるため、本邦では不可能であることにもご留意ください。たとえば、自由診療で実施されたがん遺伝子パネル検査でEGFR遺伝子変異が明らかになったとしても、保険診療でEGFR阻害剤内服の治療を受けることはできません(2022年6月現在)。

 

参考・出典

がん情報サービス がんゲノム医療もっと詳しく

国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査

国立がん研究センター がん遺伝子パネル検査で“次の治療薬”を探索

厚生労働省 患者申出療養制度

国立がん研究センター中央病院 治療選択肢の可能性を求めて(患者申出療養) 

 

監修・鈴木敏夫(筑波大学医学医療系 臨床腫瘍学/腫瘍内科 専任講師

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