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悪性心膜中皮腫の発症と治療(患者手記)

公開日:2024年3月7日

執筆:関東支部 齊藤賢二

※本執筆は、患者の体験をもとに個人の感想として執筆しています。治療選択など、医療に関わる問題については主治医をはじめ、通院されている病院の「がん相談支援センター」など、医療関係者との相談を踏まえてご検討ください。

心膜中皮腫の確定診断

皆様初めまして、千葉県市川市在住の齊藤賢二と申します。

心膜中皮腫

中皮腫患者の方は胸膜や腹膜が多い中で、私の場合、2022年8月、その数も少なく全体の1%以下という悪性心膜中皮腫の確定診断を受けました。以後約1年半、化学治療を継続しておりますが、現在は月一度、倍濃度のオプジーボのみの点滴を行っておりまして、数度の副作用に苦しめられましたが今は仕事も復帰してなんとか元気でやっております。

数多くの中皮腫の患者さんと同じく治療のエンドが見えないことに憂鬱になることも少なくありませんが、食事や睡眠、そして体を動かすことに注意しながら毎日を送っております。

心臓の突然の高鳴りと突然の余命宣告

2018年に還暦を過ぎ定年となりましたが、長く勤めた会社の営業の仕事が嫌いでもなく、毎日のように外廻りや出張を重ねていました。休日には50代に始めた趣味のランニングを続けており、時々マラニック(マラソンとピクニック半々)を仲間と一緒に行なって気分転換と体力維持に努めていましたが、2022年の4月のある日、突然心臓がポコポコ動いたような気がしましたが、それほど気にはなっておりませんでした。そして翌週、春の三浦半島の岬めぐりの中で坂道を走っていた時に突然心臓が高鳴り、脚を進めることができませんでした。仲間から離脱して岩場で腰をおろし、海を見ながらぼんやり休息していました。しかしその後もなかなか心臓の動きが穏やかになりませんでした。

それ以後はこの症状は顕著となって、しまいには走ることができなくなり、階段を数段登るところで息切れを起こす事態となりました。

会社の近くの呼吸器科病院で受診しましたが原因がわからず、何度か通ううちに足に浮腫みが発生したところで早急な処置を要すとのことで紹介状を携えて、都内の総合病院へ駆け込み、緊急入院となりました。循環器内科での各種検査の結果、心臓の外膜(心膜内)に水が溜まった「心タンポナーゼ」という診断を受けましたが、心臓周辺に血の塊のようなものが確認されたものの何故水が溜まったのかわからないまま一週間以上経過しました。

その後とうとう心嚢水からがん細胞が検出されたということでしたが、原発不明がんの扱いのまま、とり急ぎ抗がん剤の投与を行って翌日退院となりました。この時、腫瘍内科の主治医の口から出た言葉は「余命は1〜2ケ月」、「あなたは心臓だから・・」でした。その場はすっかり動揺してしまい言葉を失いました。翌日、治療を始めれば余命は3ケ月以上になるのか?と問いましたが、「その可能性はある」といった非情なものでした。

当然ながら、自分がまもなく死を迎える、という宣告が現実のものと実感できませんでした。数日後のPET検査の結果、心膜炎が認められたということでしたが、診断は悪性胸膜中皮腫となっており、このとき主治医から今後はオプジーボとヤーボイ治療を始めるとの話がありました。患部は心臓なのになんで胸膜中皮腫なのか?といった疑念を持ったままでしたが、後日受け取った環境再生機構への申請書向けの診断書には「悪性心膜中皮腫」と病名が変更されていました。その理由を主治医に問いましたが、「心臓と肺は接触しているので胸膜も心膜もさほど差は無い」といったよくわからない回答でした。

今考えると、2022年当時は心膜中皮腫においては未だオプジーボ、ヤーボイ投与が承認されていなかったため、先行治療を優先に考えて後日の修正を可能にする確定診断を用いたのではないかと思いますが、本件を追及しても病が好転することもなかろうし、十分な説明も期待できないと思い、それ以後問い続けることは止めました。主治医も心膜中皮腫の経験は無いと口にしていましたし、何かにつけて明瞭な説明もありませんでしたので、別の病院でセカンドオピニオンを受けることにしました。しかしながら結果は、通り一遍の概説と当方が希望したわけでもないのに転院は認められないとの門前払い的な言葉も浴びて、けっこう高額な面談費用もあって憤慨と落胆を同時に味わうことになりました。

退院後に妻と樹木葬の「広告」を出している家の近くのお寺の見学に行き、大まかな説明も受けましたが、近日中にこの土の中に眠る予感がどうもしませんでした。

治療の効果と肺への転移、手術

発症から一年が経過した2023年7月のCTの結果、心膜に発生したがんは、オプジーボが奏功したのかだいぶ小さくなっているとのことで、当初あった動悸も無くなり、ときどき期外収縮を覚える程度になっております。その他の副作用と思われるものとして、オプジーボ+ヤーボイ投与2回目の後の一昨年10月、爪に血が飛び、ついで二週間ほど倦怠感と食欲不振に襲われましたが、血液診断の結果、副腎不全によるコルチゾール低下ということで即時入院となりました。点滴を数時間行ってまもなく食欲が回復して10日間で退院しましたが、コルチゾール増加剤の服用は生涯続くことになりそうです。

次いで昨年1月のCT検査の結果、肺に大きめの腫瘍が二か所あるとのことで、切開除去手術を行いました。心膜炎とは無縁でしょうが、悪性の可能性が有るとのことでしたので早々に処置を行いましたが結果は良性で事なきを得ました。4月にはへその左がけっこう痛むということで大腸の内視鏡検査を二回受け、異常無しとのことでしたが、腸が伸びている?とのことで原因は加齢なので治らないとのことでしたが、これまた現在も薬を飲み続けております。

6月には体全体に大きく発疹が広がって高熱も出ましたが、ステロイド剤を飲んで治りました。以上のような副作用や関連病?を経ましたが、右肺は未だに時折小さな痛みが出るものの、心臓や呼吸器系の痛みも皮膚炎の再発も無く、今のところ大きな障害は出ておりません。

造船所や製造工場でのアスベスト(石綿)ばく露

私は1982年に現在の会社に入社して以後約20年間弱、造船所ほか製造工場を主に自社製機械の整備や修理に明け暮れておりました。今考えると老朽化した建築物や設備には相当アスベストが使用されていた可能性が大きく、機械や附帯設備の修繕等の時にはけっこうな量が飛散していた環境で仕事をしていたことと思います。中皮腫は発症まで40年程要すると言われますが、ふり返るとその通りで、正にわが身に降りかかってきた禍だと改めて自覚しました。保障申請については、環境再生機構への申請は早めに行っていましたが、労災申請の方は勝手がわからず躊躇しておりましたが、アスベスト患者と家族の会から助言をいただきまして昨年4月に申請を行いました。

後に労働基準局から詳細資料の提出要請がありましたが、自身の作成分と雇用者側担当分は会社にお願いして(快諾されたわけではありませんでしたが)作成提出、申請後半年を待たずして認定となりました。因みに環境再生保全機構は認定まで1年強を要しました。コロナ禍の在宅勤務時に現場出張名と業務内容が記された命令確認書(当時の上司捺印有り)20年以上分をたまたまスキャンして保存しておりました。労災資料提出に際して、これを添付したことが審議に有効だったかもしれないと勝手に考えております。

主治医や看護師との関係や今後のこと

大きな障害は出ていないといっても時々心肺またはその近辺、並びに上半身のあちこちに「なにこれ?」といった一瞬、または継続した痛みが出ることがありますが、長引くようなことも無いので主治医への報告はつぶさに行っておりませんし、診察時にはおおかた忘れてしまっております。

冒頭に述べましたマラニックはとうぶん参加できそうもないですが、週末にはスロージョギング(早歩きよりやや早い程度)を数キロ行っております。罹患前と比べて食事量は一時かなり落ちましたが、最近は普通に食べられるようになっております。

一昨年の8月以来、中皮腫キャラバン隊のzoom会談に参加させていただいて、多くの方々の苦労や工夫を拝聴したり、実際に都内で懇親会に参加させていただいて貴重な意見を伺ったりしてたいへん勉強させていただきました。

この中で主治医との意思疎通がうまくいかない、信頼関係がいまひとつ、といった話を多数お聞きしましたが、上述しましたように私も同様で、主治医に対しては臨床を行う技師といった感覚を拭い去ることができません。このような状況の中で私は、がんサポートセンターの看護師と治療日には必ず面談を行って、そこで愚痴や悩みをぶつけるようにしております。よく話すと看護師自身の主治医の評価も、他の患者の思いも私と同じところが多々あることがわかってきて、安堵感を感じることができるようになりました。このおかげもあってか病院を変更することなく現在に至っておりますが、これが妥当な選択だったかどうか今は何もわかりません。

この病気に限らず各種の治療には、体力増強または維持が必要で、それに栄養補給が不可欠なことと思います。それにも増して心の健康を保つことが第一かと思います。好きなことを進んで行ってみる、不要で不快なお付き合い等は遮断、あまり考えこまない、なんとかなるさの楽観的に過ごす等々。

この先を考えると目の前の霧や雲を蹴散らすことができないこともありますが、自分の好きなこと、興味のあることを率先してやっている最中は体の中の血の巡りも良くなっているかもしれません。大きくなくても目の届く、廻りの小さな楽しみを見つけて過ごしていきたいと思います。

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