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腹膜中皮腫の治験(臨床試験)中断とその後の治療、生活(患者手記)

公開日:2022年12月5日

※本執筆は、患者の体験をもとに個人の感想として執筆しています。治療選択など、医療に関わる問題については主治医をはじめ、通院されている病院の「がん相談支援センター」など、医療関係者との相談を踏まえてご検討ください。

執筆:岡山支部/腹膜中皮腫患者 柏山典子

腹膜中皮腫の発症と確定診断

腹膜中皮腫治療

私は、2020年4月に確定診断を受けた腹膜中皮腫(上皮型)患者です。腹水があることがわかったのは、山陰に住んでいた2017年の1月、膀胱炎を繰り返すためにCT撮影をしたときでしたが、自覚症状なく量も少なかったので経過観察ということで特に気にすることはありませんでした。

4月には定年前の最後の勤務地となる主人の地元である岡山に引っ越しました。翌年の2018年2月に人間ドックを兼ねた婦人科検診で、腹水を指摘されて再検査を受けることになりました。希少ながんの可能性があると言われて不安な気持ちを抱きながら総合病院の婦人科で精密検査を受けましたが、腫瘍マーカーや画像では多めの腹水の所見はあるものの異常所見なし、「経過観察」と言われてホッとしました。

2019年3月に終の棲家として購入したマンションに移り、腹水は近くの内科で半年に一度エコーでチェックをしてもらっていました。

2020年2月の婦人科検診で腹水の量が増えているので再検査を強く勧められて、検診で訪れた病院の婦人科を受診。腹水を採取して検査をしたところ、先生からヒアルロン酸値が異常に高く、「中皮腫」という病気の可能性があると話がありました。「中皮腫」?今まで聞いたことがない病名です。すぐにネットで調べましたが、完治が難しい、治療法が確立されていない病気と知り愕然としました。

3月に腹腔鏡の生検を受けるため入院をすることになりました。世間では受験がひと段落した時期で、家庭教師とコロナの対応で中止になった学習障害児の学習支援の仕事に支障が出なかったのが唯一の救いです。入院中に担当医と話す機会があり生検の画像を見せてもらったとき、私がネットでみつけた中皮腫の画像と同じだったのでショックを受けました。先生から「食べて栄養をつけなさい。体力が勝負ですよ」と声をかけられ、やはり大変な病気なのかもしれないと実感しました。

覚悟はしていましたが、4月1日にあっさりと「悪性腹膜中皮腫上皮型」と確定診断を受けて「これからどうしたらよいのか?」と私より主人が先に涙を流したときは、「泣きたいのは私だ!」ときつい口調で感情をぶつけてしまいました。気持ちに余裕がなかったです。また、なぜ2年前に別の病院でもっと検査をしなかったのかと自分への腹立ちと後悔もありました。

抗がん剤治療開始

大学病院で治療を受けるために転院し、初診のときにこれからお世話になる腫瘍センターの教授から「余命は私が決めるものではないです。治療法は限られていますが、抗がん剤の治療を始めましょう。」と言われ、もう少し生きることができると夫婦で希望を持ちました。

初回のアリムタ+シスプラチンの抗がん剤治療は副作用のチェックをするために入院して受けます。副作用については、入院前日に初参加した中皮腫サポートキャラバン隊の中皮腫ZOOMサロンでお話を伺っていたので、食欲不振対策としてご飯をお粥や麺類に変更してもらったり、高カロリー飲料を持ち込んだりとなんとか乗り切ることができました。副作用は比較的軽かった方だと思います。しかしコロナ感染リスク回避のため主人と面会は一切できず、必要なものは詰め所経由での受け渡しという心細い2週間を過ごしました。

その後、通院でアリムタ+シスプラチンの投与を3回の計4回をしたのち、アリムタ剤維持療法に切り替わり、腫瘍は現状維持が続いていました。

VIOLA治験

アリムタ単剤維持療法6回目が終了した頃、「ONO-4538(ニボルマブ)第Ⅱ相試験 悪性中皮腫(胸膜を除く)を対象とした他施設共同非盲検対照試験」(VIOLA)が地元の病院で実施されるという情報が入ってきました(2022年12月5日現在、募集終了)。

腹膜中皮腫の治療は胸膜に準ずると聞いていたのに、何故、胸膜以外の中皮腫にはニボルマブ(オプジーボ)使用が認められないのか?と疑問に思っておりましたので、良い巡り合わせにとても感謝しました。体調や血液検査では問題なく治験に参加可能の条件を満たしていることを確認して前を向いたつもりでした。しかし治験に参加して有効性を試したいと思う反面、アリムタ単剤維持療法で進行が止まっているのにリスクを負ってまで治験に参加することに対しての迷いが出てきました。主治医の先生、治験担当の先生や同志の皆さんに背中を押していただいて、2021年1月に初回のニボルマブ投与が始まりました。

毎回の血液検査と6週に一度の造影CT撮影の結果に一喜一憂。皮膚乾燥や甲状腺機能が低下するなど副作用と考えられる症状が出始めました。治験担当の先生をはじめ、治験コーディネーターさん、看護師さん、薬剤師さんがしっかりサポートしてくださり、その都度対処していただきました。この治験は事務局の皆様はじめ同志の方々や要望書にご署名いただいた多くの方のご尽力で実現したと伺っております。治験に参加できたこと、そして延命につながっていることを感謝申し上げます。

治験の中断

治験は2週間に1回のペースで、毎回の血液検査や検尿、6週間ごとの胸部レントゲン撮影、造影CTでの検査を実施しながら行われました。副作用の皮膚掻痒や甲状腺機能低下は薬で対応でき、ニボルマブの治療は続いていました。

2021年の夏頃、膨満感があり、9月の造影CTで腹水の増量が認められましたが、一過性の場合もあるそうなので、しばらく様子を見ることになりました。しかし、その後も腹水は増えて、12月初めの評価CTで、これからのことを考えて23回で治験を終了し、抗がん剤の治療に戻ることを決断しました。

治験関係者の方やご尽力いただいた皆さんの期待に添えず申し訳ない気持ち、病気が進行したショック、抗がん剤が再び効いてくれるのか不安な気持ちで心はザワザワ。気持ちの切り替えができるまで時間がかかりましたが、前を向かなければ先に進みません。

これからの治療は引き続き、こちらの病院でお願いしました。その理由は、中皮腫研究の第一人者でいつもきちんと説明をしていただき信頼できる主治医の先生をはじめ、親身になってサポートしてくださる経験・知識が豊富な看護師さんもたくさんおられて、とても居心地が良かったからです。

再び抗がん剤治療へ

12月半ばにPCR検査で陰性を確認後、アリムタ+カルボプラチンを投与するために入院。前回より骨髄抑制が強く出現するかもしれないと説明を受けました。長引けば新年を病院で迎えることになると心配していましたが、白血球・ヘモグロビン・血小板の数値は下がったものの、少しずつ回復して予定通り年内に退院しました。

年明け2022年1月から4週間に1回のペースで、アリムタ+カルボプラチンの投与が続き、4回目の治療が終わった後のCT検査で現状維持だったため、主治医の先生から経過観察を提案されました。次回の診察まで色々と考えましたが、急に止めるのは不安に思い、前回同様アリムタ単剤での維持療法をお願いしました。

現在は、6月のCT検査で「皮下脂肪に変化はなし」でしたが腹水の減少が確認されて、一安心したところで、4週間間隔のアリムタ単剤治療を続けています。

穏やかに過ごせる時間も大切に

治療薬が限られているので、この薬が効かなくなったらどうしよう、腹水がまた増えているのではないか?と不安な気持ちになることもありますが、主治医の先生のアドバイスにいつも救われています。またブログやzoomで知り合ったお仲間との情報交換や勉強会なども私の元気の源です。

日常生活では、アリムタの治療に切り替わる頃、我が家にワンちゃんがやってきました。ポメラニアンとチワワのミックス犬。いたずら大好き、やんちゃでわがままな男の子で名前はロク。主人が当直のときは1時間くらい散歩に連れていき、運動不足を解消してくれます。

また仕事を辞めたために時間に余裕ができた2年前から治療と並行して始めたスヌーピーのフィギア作りは、最後まで続けることはできないかもしれないと思いながらのスタート。説明書をきちんと読まずに作るので、失敗も多々ありましたが、12月に最終号が届いて完成します。 

来年3月には5年の再任用の期間が終了する主人と、2人で穏やかに過ごせる時間も楽しみにしています。1年後もこのようなご報告ができるのを目標に日々を大切にしていきたいと思っています。

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