お知らせ

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『悪性腹膜中皮腫』になり5年目を迎えて

公開日:2022年9月7日

※本執筆は、患者の体験をもとに個人の感想として執筆しています。治療選択など、医療に関わる問題については主治医をはじめ、通院されている病院の「がん相談支援センター」など、医療関係者との相談を踏まえてご検討ください。

執筆:東海支部・腹膜中皮腫患者 平田勝久

2018年9月に『悪性腹膜中皮腫』の確定診断を受け4年が経過し、5年目に入りました。

平田勝久(腹膜中皮腫)

当初お腹の張りと脇腹の痛みが継続的にあり、近くの市民病院を受診した結果『悪性腹膜中皮腫』の疑いがあると告げられ「当院では治療実績が無い」とのことで近隣のがんセンターを紹介されました。そこでの診断はお腹全体に播種の拡がりと、腹水が約6ℓ程溜まっていることもあり手術も不可能な状態でステージ4相当の診断!その時は死が間近に迫っているのを痛切に感じました。仕事のこと、家族のこと、経済的なこと、治療のことなどこれから直面するこれらの問題をどうすれば乗り切れるのか悩ましい日々を過ごしていました。

『悪性腹膜中皮腫』と聞きなれない病名は、どのような病気なのか、どんな治療方法があるのか。色々ながんに対する情報発信はインターネットで溢れていましたが腹膜中皮腫に関する記述は非常に少なく、その当時は治療方法の情報を得ることは非常に難しいことだと実感していました。

発症の原因はどこに?

この病気はアスベストを吸い込むことによって発症する病気ですよと主治医から聞かされ、その時はそのような職業経験も思いつかないでいました。スマホでふとアスベストの患者会を見つけ、連絡してみると東海支部事務局の紹介を受けました。

アスベスト関連の労災問題を数多く手掛けられ、私の職業経歴をさかのぼっていくと、設計事務所に23歳で就職してすぐに関連の鉄鋼所に出向し、工場内において『石筆』を使って鋼材、鉄板等へのケガキ作業の為にグラインダーで石筆を削っていたことが分かってきました。石筆を使用して中皮腫を発症し労災認定された方がいる事を聞き、まさか自分が当事者になるとは思いもよらぬ事でした。

中皮腫は『静かなる時限爆弾』といわれますが、まさに40年後静かに破裂してしまいました。

石筆(アスベスト含有)
筆者が当時使用していた石筆

治療経過について

腹膜中皮腫については国内にガイドラインが無く標準治療が設定されていないとの事を主治医から伝えられたときは、「え!治療方法が無い!」と驚きました。ますます希望の持てない厄介な物に取り付かれてしまったものです。

抗がん剤治療は最初に「アリムタ+バスチン+シスプラチン」から始まりましたがこれがキツイ‼常体的な吐き気、倦怠感、食欲不信、耳鳴り、脱毛などの副作用に耐えて6回投与しました。効果は腹水の減少が見られアリムタ単剤に移行しましたが、3回投与後、腹水が元に戻り中止となりました。

お腹の張りが強くなってきたので腹水穿刺で3ℓ程外に出し、つぎの治療薬があるのか無いのか不安にかられているところ、免疫チェックポイント阻害薬を次回から使うことになり、最後の頼みの綱でした。

3回目投与辺りから腹水の減少が見られ、6回投与後にCT造影検査をしたところ腹水が無くなりました。通算67回投与しましたが副作用としては稀にしか出ない『水疱性類天疱瘡』が出現して投薬中断になり、症状も落ち着いていることから1か月に一度の通院での経過観察となり今に至ります。

免疫チェックポイント阻害薬の副作用として私の場合は、湿疹+ひどいかゆみに長期間悩まされ、投薬中断と共に精神的に辛くなり『緩和ケア』を受診することになりました。このことについては後ほど詳しくお話させていただきます。

限られた治療の中で

腹膜中皮腫の治療を経験し思ったことは、肺がんなどは保険適用された治療薬は50種類ほどあるのに、腹膜中皮腫の保険適用薬はありません。胸膜中皮腫に基づいた治療ですが、治療薬の少なさを痛感しました。

中皮腫は全体の80%が胸膜、10〜20%が腹膜とされています。私が通院しているがんセンターにおいても、毎日多数のがん患者さんが来ますが、その中でも腹膜中皮腫の患者はわずか2人しかいないのです。今思えばほとんど患者がいない中、免疫チェックポイント阻害薬を使ってくれたことは、私の運命を左右する出来事であったと思っています。

緩和ケアのお話

緩和ケア受診のきっかけは

1.免疫チェックポイント阻害薬の副作用による長期のひどいかゆみ(特に深夜)とそのことによる不眠+慢性的な倦怠感

2.『水疱性類天疱瘡』出現による休薬の不安

休薬によって症状が悪化しないのか。治療が再開きるのか。次につながる治療薬がないかもしれない。『しんどいな〜、つかれたな〜』という気持ちと、休薬による不安が相互に絡み合い精神的な疲れにつながっていきました。

このことを主治医に話し相談してみると、緩和ケアを受診して『心のケア』をしてみませんか。とのアドバイスがありました。

緩和ケアを受診して思ったことは、病気の事、治療に対する不安など緩和ケアの看護師さんと話すことによって次第に気持ちの整理がつき、心が落ち着きます。

話すことによって心が軽くなり、話すことは大切なことだなと思いました。

長いときは1時間ほど話して帰ってくることもあります。

休薬により不安だった時に、看護師さんから症状が落ち着いているのであれば休薬することにより、副作用が軽減していくから「今、やりたいこと事ができるようになるよ!」と言われ、それも有りだなと思って10ヶ月が経ち、多少の不安は有りますが、以前行けなかった渓流釣りにも楽しく、足を運んでいます。

がんと言われた時から様々な不安やストレスが来ますが、早期に関わりを持って治療で直面する問題を和らげて、『心の休息』をとることの大切さを感じています。

最後に

今のところ症状は落ち着いていますが、悪化した時の治療方法は無いに等しい現状は何ともしがたいですが、落ち込んでいても何も良いことはありません。

治療研究も進んでいることもあり希望を持って、患者会の活動と共に今やりたいことをやって、笑って明るく過ごしていければ良いなと思っています。

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