お知らせ

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医学的な資料が無い形でアスベスト(石綿)被害が船員保険認定(労災認定)された良性石綿胸水の事例

公開日:2024年3月9日

ご遺族の方から、被災者本人が通院していた医療機関では胸部レントゲン(X線)写真やCT画像、カルテが廃棄されてしまっている状況でご相談を受けることがあります。

このような状況だからといって、必ずしも労災請求等をあきらめる必要はありません。船員保険制度で認定された事例を紹介します。

事案の経過概要

傷病名:良性石綿胸水
※死亡診断書の直接死因は「胸膜炎」

傷病発生日:2005年8月(当時77歳)

被災者死亡日:2007年1月

船員保険申請日:2023年2月

船員保険認定日:2023年6月

被災者遺族居住地:北海道

石綿ばく露歴

被災者は、昭和20年代から昭和50年代の約30年間、水産会社の従業員(機関長)として船舶(漁船)の排気管や継手などアスベスト(石綿)を部分的に剥がして内部点検をしたり、新たな石綿製品を船内設備に巻き付けて防熱処理をするなどの作業、劣化した設備部品の交換作業などにしました。

労災認定までの経緯

被災者が死亡して10年以上経過した2023年1月に遺族が当会に相談。時効等の関係があったことから23年2月に船員保険へ申請をしました。

申請後、被災者が当時通院していた医療機関に対して、通院時のカルテ等が残っていないか照会しましたが全て廃棄されていました。それに伴い、申請時に求められる「医師証明」も得られませんでした。

そのような状況下、船員保険の審査にあたった医師は、以下のような意見をまとめました。

・本例が「良性石綿胸水」であれば石綿ばく露が原因と考えられる。
・死亡診断書によると、死因(胸膜炎)は、良性石綿胸水によるものと判断される。
・「良性石綿胸水」で肺が繊維化すると、がん細胞は見つかってないが、じん肺と同様になり、呼吸困難になることはありうる。
・本件を不承認とした場合、死亡診断書が偽りだという証明がないと、直接死因「胸膜炎」、原因「良性石綿胸水」を覆すのは難しい。

その上で、船員保険制度において職務上認定されました。

本件をめぐる意義

本件は医学的な資料がなく、死亡診断書にしか死因にかかる記録がない事案でした。

本件の認定にあたって、大きな判断材料となったと考えられるものに、被災者が勤務していた会社から証明を得られた「作業状況証明書」があります。ここには当時、被災者が漁船の機関長としてどのような作業をしていたのかが詳細に記載されていました。これは被災者が船員保険の申請を検討していた中で集めていた資料と思われ、今回の認定に事実上、大きな役割を果たしたと思われます。

また、もう一つ本件を判断する上で影響を与えたのが、厚生労働省の運用です。労災保険制度においても本件と同様に年数の経過において医学的資料が得られない事案があります。

厚生労働省は、通達「石綿による疾病の認定基準について」(基発0329第2号 平成24年3月29日)において、一定条件においては「死亡診断書等の記載事項証明書等の記載内容により判断すれば足りるものであること」としています。

船員保険制度等でも、原則は厚生労働省の認定基準と運用を準用していますので、極めて適切にその方針を貫いた結果が認定につながったものと考えられます。

本件のように、死亡原因が確認できる死亡診断書等以外の医学的資料などが全くなく、労災請求等をためらっておられるご遺族もおられると思います。時効等の関係があることから、お早めにご相談ください。

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