全国の各病院における中皮腫等希少がんの診療（治療）状況の調べ方とその問題点
公開日：2024年4月3日
執筆：北関東支部／藤下 一
（SNSハンドル名：スノー・マン）
監修：吉田達哉（国立がん研究センター中央病院呼吸器内科）
１．中皮腫などの希少がん患者の病院えらび
がんに罹患した場合、先ずどの病院で治療を受けるかは、患者さんにとって大きく切実な問題となります。その際に、どの病院が罹患したがん種の治療をどれだけの件数行っているかは、患者として最も知りたい情報のひとつとなります。希少がん、特に中皮腫については、経験豊富な治療機関にかかることが重要となるため、どの病院が、どれだけの治療を行っているかを知ることは、病院選びの大きなポイントです。ここで、今すぐ病院の治療件数を知りたい方は、以下の説明を飛ばして、「４．中皮腫等希少がんの診療状況の調べ方」の章に進んでいただいて結構です。
２．がん登録推進法と院内がん登録
病院の治療実績の検索には、民間の口コミサイトもありますが、情報の信頼性という面では、今一歩の印象です。例えば、大手のがん治療口コミサイトで悪性胸膜中皮腫を検索してみましたが、国立がん研究センターの手術件数は記載されていませんでした。
このため以下に、より信頼できる国のがん統計結果からの調査方法を記載します。具体的な調べ方を記載する前に、どのようにがんに関するデータが集められ集約されているかを記載します。
今回利用するのは、「がん登録」というシステムによるデータで、平成28年に「がん登録等の推進に関する法律（がん登録推進法）」が施行され、この法律によって「全国がん登録」が開始されました。そのなかでも今回利用するのは「院内がん登録」として国が指定するがん診療連携拠点病院等を中心に、全国約850病院で行われているもので、各施設でがん診療を行ったすべての患者さんのデータを全国共通のルールに従って登録するものです。
以下に院内がん登録の流れを、国立がん研究センターの「がん情報サービス」から引用させていただきます。
３．一般的ながん種の病院ごとの診療方法
ここまで聞くと、国立がん研究センターが公開している情報を確認すればよいと考えるのですが、ことはそう簡単ではありません。
先ず希少がんでない、一般的ながんについては、同じくがん情報サービス「院内がん登録全国集計結果閲覧システム」から検索することが可能です。
４．中皮腫等希少がんの診療（治療）状況の調べ方
一方で、「院内がん登録全国集計結果閲覧システム」からは、中皮腫をはじめとした希少がんが、どの病院でどれだけの数、診療されているかの検索を行う事ができません。このため、国立がん研究センターに問い合わせする部署・方法を確認しました。手間のかかる方法ですが、以下の方法で確認できます。
問い合わせ先：国立がん研究センター がん情報サービスサポートセンター
電話番号 0570-02-3410
問い合わせの例
「施設別がん登録件数検索システム」を用いて、悪性胸膜中皮腫に関する2020年度から2022年度、過去3年間の全国診療件数トップ10の病院を教えてください。
問い合わせのしかた・ポイント
「施設別がん登録件数検索システム」を用いて、○○がんの２０△△年度から２０××年度の診療件数トップ□□の病院を教えて欲しいと依頼してください。ここでのポイントは、「施設別がん登録件数検索システム」というフレーズを先方に伝えることです。なお、現時点の最新の情報は2022年度のものとなります。
なお、近くのがん連携拠点病院で相談したい場合は、上記のがん情報サービスサポートセンターで、どの病院のがん相談支援センターに問い合わせればよいかを確認することができます。ちなみに、私が在住している栃木県で「施設別がん登録件数検索システム」が使えるのは、栃木県立がんセンターのみでした。
５．問い合わせに関する注意点と問題点
注意点としては、上記で確認した内容は個人での使用に限ると念を押され、他の方と共有できないことです。このため、心苦しいのですが、私自身が入手した情報もここに記載することができません。とても手間ですが、情報を必要とする方が問い合わせるしかないのが現状です。
現在、一般的ながんでのこの情報は、がん情報サービスから入手できる一方で、希少がんは直接問い合わせなければならず、さらにその情報を他者と共有できないのは不合理と言わざるをえません。くわえて、どのがん相談支援センターで情報収取ができるかも、がん情報サービスサポートセンターに問い合わせなければ知ることができません。
がん患者、特に希少がん患者にとって、最も知りたい情報ですので、早急にアクセスが改善されることを希望します。