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震災とアスベスト(石綿) 能登半島地震(2024)を受けて考える

公開日:2024年3月1日

執筆・建築物石綿含有建材調査者 永倉冬史
(中皮腫・じん肺・アスベストセンター事務局長)

能登半島地震(2024)が発生

能登半島地震が1月1日にありました。アスベストと地震の関係では、阪神・淡路大震災が1995年の1月17日にありました。来年が30年目になります。アスベスト被害の潜伏期間がだいたい30年から40年と言われていますので、病気の方が出てきてもおかしくない時期にさしかかってきているということです。日本で地震による災害とアスベストが関連付けられたのは、この阪神・淡路大震災が最初です。その後、新潟県中越地震であったり、2007年の能登半島地震、新潟県の中越沖地震、東日本大震災、熊本地震があります。

今年の能登半島地震については全壊が83棟、半壊が1249棟ということですので、これらの建物の中にどのぐらいのアスベストが顕在しているかという情報をこれから正確に確かめる必要があります。

東日本大震災での経験

東日本大震災では建物の全壊・半壊・一部損壊を含めると、115万戸以上が確認されているという状況が発表されています。

2011年4月10日、地震の発生から1ヶ月後ぐらいの状況ではがれきを寄せてありましたが、この中にアスベスト建材が大量にありました。がれきの中にアスベスト含有建材の破片とか、鉄骨に吹き付けられた建材などが散見される状態でした。

震災とアスベスト

だいたい2ヶ月ぐらい経つと、津波被害の被災地がだいぶ変わり、乾燥して、粉じんがもう出始めている時期でした。この頃には、重機ががれきをかき分けていく、寄せていくというような作業が行われることによって、大量の粉じんが発生する時期にさしかかっていました。壁の裏側に吹き付けアスベストが見えたり、天井が抜けて、天井裏の吹き付けアスベストが露出してきたりしていました。

震災とアスベスト

石巻市では典型的な吹き付けアスベストで、クロシドライトという青石綿が鉄骨からボタボタと周辺に巻き散らされていました。これは料亭でしたが、解体には地元の自治体も協力して、この鉄骨解体を行ったんですが、それがうまくいかなくて、国のほうが引き取って環境省のほうで予算を立ててもう1回やり直したという、いわくつきの料亭の建物でした。こういった建物が1棟あると、周辺への飛散も大きくなりますし、費用的にも大変な工事になっていきます。こういうものを見逃さないで、早い段階で集約し、とどめていくということが大切です。

震災とアスベスト

能登半島については、雪の状態などもありますし、古くからの日本家屋が多かったということもあって、ちょっと状況は違うとは思いますけれども、2ヶ月ぐらい経つとやっぱり津波の被害の被災地でも乾燥してくると思います。

マッピングとアンケート調査

東日本大震災の時には調査活動と報告活動の2つの活動を主にやってきました。被災地の巡視調査とかマッピング、それからがれき、建材のアスベスト含有の分析、それから気中石綿濃度測定、アンケート調査などです。調査結果を現地に必ず報告をしていくということを私たちは心がけてやってきています。大きな意味でのリスクコミュニケーションということになろうかと思います。今年の能登半島地震でも、これらが進めていければいいと思いますが、現地との関係でどこまでいけるかというのは今、未知数です。

東日本震災の際は、調査結果を自治体に持って行ったのですが難航しました。自治体の職員さんも被災者なわけです。アスベストの問題はあるけれども、今を生きている人をどうやって救っていくのか、街が崩壊しているのにアスベストのことを言っている場合じゃないだろうということで、いろんなことを私たちも言われました。ただ、アスベストの問題が発生していることは間違いありません。数十年後に地域は復興したけれども、その復興の陰で亡くなっていく人が1人でも2人でもあってはいけないということで、私たちは使命感を持って自治体の職員の方にいろんなことを言われ、批判されながらも伝えてきました。何度も何度も伝えていると伝わるものもあり、石巻市などについては今も年に1回ぐらい自治体に行って、被災地のアスベスト調査についての報告とか協議のことができる関係になってきています。これは継続することが大事なんだろうなと思いますが、能登半島でも今後、そういうことが課題になってくると思います。

例えば東日本震災で言えば、石巻市の沿岸地帯の倉庫だったり工場だったりの波形スレートがあるなどの情報をマッピングして、その自治体の人に提供するというような趣旨で、こういったマッピングをして、その結果を地図に落としていったということをやりました。石巻市では現在も持ち主が手放してしまった倉庫がそのまま放置され、波形スレートが地面に散乱している場所もあります。また、同じ建物に使われている波型スレートでもアスベストが含有しているものとそうでないものがあり、一部の検査だけで入っていないからということでバサっと解体してしまわないように自治体に情報提供しています。

震災とアスベスト

今、被災地にボランティアの人たちが入ろうとしていますけれども、そういう人たちにきちんとした情報を渡すことが重要です。被災地では天井裏などに隠れていた吹き付けアスベストなど、飛散性の高いものが露出してきます。これらの情報の共有が重要です。被災直後の復旧作業では、がれき撤去などの際に、ボランティアとか撤去作業者が無防備でアスベスト粉じん曝露をするということが、東日本大震災のときまではありました。さらに、災害廃棄物の仮置き場でアスベストの含有廃棄物、これは分別がきちんとしていないと、アスベスト粉じんが発生して、これが重要な問題になってきます。このような点が震災被災地でのアスベストのリスクとして考える必要がある重要な点です。

東日本大震災の関係では被災地でがれき撤去に関する講習会も無料で実施しました。解体業をやっている人たちを450人くらい集めて特別教育を行いました。それから、作業主任者教育ですけれども、これも宮城と福島であわせて89名。これらの人たちにアスベストについての基本的な知識と、これからがれき解体をやるときには重要な点を守ってくださいということで説明しました。その結果の報告書として「市民のためのアスベスト対策ガイド」というものを作って広く配布しました。

震災とアスベスト

本来は、災害発生前の自治体による建物のアスベスト調査、調査に基づいた計画的な撤去事業の推進が重要です。災害が起こる前にアスベスト建材をなるべく減らすことです。

それから平時に、アスベスト粉じんの危険性についての情報の周知。これは各自治体が建物を調査して記録に残しなさいという事業をやっています。ただ、義務ではないので、やっている自治体、やっていない自治体とがあります。自治体には災害が起こる前に、災害発生時のアスベスト粉じん対策の準備と、復旧作業時のボランティア向け、作業者向けの防じんマスクを、これを備蓄していただきたいと思います。使い捨てタイプの、アスベストに有効な防じんマスクがありますので、そういったものの備蓄も呼びかけています。

災害発生時、復旧作業時のボランティア向け、事業者向けの情報提供、これも重要です。N95というタイプの防じんマスクは東日本大震災では、警察と自衛隊がかなり持っていってしまって、なかなか一般の作業者まで届かなかったということがありますので、これは今から準備する必要があると考えています。災害廃棄物仮置き場における防じん対策。これは震災に限らず、水害被害の被災地などでも起こりうることですけれども重要なことです。

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