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がんゲノム医療って何? -第3回 全ゲノム解析と、今後のゲノム医療の展望-

公開日:2023年12月19日

執筆者:北関東支部/藤下 一(SNSハンドル名:スノー・マン)

監修者:東京大学医学部附属病院ゲノム診療部 部長・教授 織田克利

「がんゲノム医療って何?」の最終回の第3回目の今回は、全ゲノム解析がテーマです。

全ゲノム解析って何をするの、何ができるの?

全ゲノム解析ってあまりポピュラーな言葉ではなく、ご存じない方も多いと思います。

解りやすくするため、がん遺伝子パネル検査と比較して説明したいと思います。がん遺伝子パネル検査は、すでに解っている100から700程度のがん関連遺伝子を測定し、分子標的薬を用いた治療に結び付けるのが目的です。一方で、全ゲノム解析は、各症例に対して、約2〜3万の遺伝子を含むあらゆる遺伝情報を、(遺伝子と直接関わらない範囲まで含めて)読み取り解読するものです。今後のがんや難病の治療に役立てようと、一大プロジェクトとして厚生労働省が主導しています。簡単いうと、「病気の原因となりうる遺伝情報を全部解読して、がんや難病を治してしまいましょうプロジェクト」です。


出典:厚生労働省 全ゲノム解析等実行計画2022(概要)

このプロジェクトにより、2019年に「全ゲノム解析等実行計画」が決定され、その後改定された「全ゲノム解析等実行計画2022」が公開されています。ここに、「全ゲノム解析等の推進によって目指す医療の姿」として以下の文章が記載されています。

・国民へ質の高い医療を届けるために、戦略的なデータの蓄積を進め、それらを用いた研究・創薬などを推進することで、将来的な「がん・難病等の克服」を目指すことが、全ゲノム解析等の推進によって目指す医療の姿である。

また、解析結果の日常診療への早期導入や、新たな個別化医療の実現についても更に推進する。

※本実行計画における「がん」とは、難治性がん、希少がん、小児がん、遺伝性がん等の、全ゲノム解析等による一定の効果が見込まれるが、民間だけでは研究・創薬等が困難ながん種を想定。

全ゲノム解析ってどのように進められるの?

しかし、ひとくちに遺伝子情報を全部読み取るといっても、簡単な事ではありません。このため、全ゲノム解析は、以下のような大規模な組織・事業体制を取ることが提案されています。この案をみても産業界・行政・公的研究機関共同の大プロジェクトであることが見て取れます。ある厚生労働省の官僚曰く、厚生労働省始まって以来最大のプロジェクトであると発言していました。


出典:厚生労働省 全ゲノム解析等実行計画2022(概要)

中皮腫およびアスベスト起因疾患の患者さんはどう考えればよいの?

では、中皮腫およびアスベスト起因疾患のがん患者さんは、全ゲノム解析をどのように考え、対応していけばよいでしょうか?

全ゲノム解析は大きな効果を狙っています。そのため、研究・開発には膨大な労力を必要とします。厚生労働省が示している以下の図の通り、その成果が研究・開発を通して、実際の患者に還元されるには、数年単位の時間がかかると想定されています。


出典:厚生労働省のホームページ「全ゲノム解析等に係る検討状況等について」(厚生科学審議会科学技術部会全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会(第16回)資料1

以上を踏まえて、中皮腫およびアスベスト起因のがん患者さんの、がんゲノム医療に対する考え方を整理してみましょう。

中皮腫およびアスベスト起因のがん患者さんとしては、現時点で使える「がん遺伝子パネル検査」に関して主治医とよく相談・理解の上、有効に活用することが重要です。なお、「がん遺伝子パネル検査」には、メリット・デメリットがありますので、実施に当たって主治医や遺伝カウンセラー等と、しっかりコミュニケーションをとることも重要です。(看護師、薬剤師、臨床検査技師、認定遺伝カウンセラーの医療資格をもつ専門的なスタッフとして、「がんゲノム医療コーディネーター」が対応してくれる施設もあります。)

そのうえで、全ゲノム解析から有用な治療法が開発されないかどうかに関心を持っておくのが現実的な対応だと思います。

これまで、3回にわたってがんゲノム医療について記載してきました。しかし、この領域は進歩・変化の著しい領域です。情報収集をおこなって、がんゲノム医療をうまく使いこなしていけるとよいですね。

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