厚生労働省等の関係省庁と業界団体へ化粧品由来のアスベストばく露による健康被害の救済および実態調査等に関する要望書を提出
公開日:2026年4月10日
本日、厚生労働省等の関係省庁と日本化粧品工業会へ表記のとおり要望書を提出しましたのでご報告致します。

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2026年4月10日
厚生労働大臣 上野賢一郎 殿
環境大臣 石原宏高 殿
内閣府特命担当大臣 黄川田仁志 殿
日本化粧品工業会 会長 小林一俊 殿
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会
会長 小菅千恵子
化粧品由来のアスベストばく露による健康被害の救済および実態調査等に関する要望書
1974年から1977年にかけて株式会社資生堂の仙台駐在所にて化粧品販売員(美容部員)として勤務し、2024年に68歳で逝去された女性について、2025年12月2日付で仙台労働基準監督署により「悪性胸膜中皮腫」による労災が認定されました。
本件は、業務で取り扱っていた化粧品やベビーパウダーに含まれるタルクに不純物として混入していたアスベストの吸引が原因とされており、化粧品販売員としては全国初の認定事例です。
しかしながら、アスベスト関連疾患は数十年に及ぶ潜伏期間を経て発症することが知られており、本件は氷山の一角に過ぎず、同様の業務に従事していた化粧品販売員、さらには長期にわたり当該製品を使用してきた消費者にまで、広範な潜在的被害が及んでいる可能性があります。タルクを含有する化粧品やベビーパウダーは全国的に広く流通しており、その使用人口は極めて多数にのぼることから、本件を個別事案として矮小化することは適切ではありません。
また、国際的には、WHO(世界保健機関)傘下のIARC(国際がん研究機関)が、アスベストばく露と中皮腫・肺がんなどに加え、卵巣がんや喉頭がんとの関連についても十分な科学的証拠があると認定しており、米国においてはタルク製品による健康被害を巡り数万件規模の訴訟が提起され、巨額の賠償や製品の販売中止に至っています。
一方、我が国においては、従来、アスベストばく露は建設業や製造業等の職業性ばく露が中心とされてきましたが、本件は、生活関連製品を通じたばく露という新たな被害類型を示すものであり、現行制度の想定を超える重大な課題を提起するものです。
さらに、当時から現在までタルク製品におけるアスベスト混入に関しては、規制および監視体制が十分であったとは言い難く、結果として被害の発生を未然に防止できなかった可能性も否定できません。
国には、労働安全衛生法および石綿障害予防規則等に基づき、労働者の健康障害を防止するとともに、既存のばく露についても適切に把握し、必要な措置を講じる責務があります。また、薬機法に基づく製品安全の観点からも、国民の健康保護に万全を期すことが求められています。
以上を踏まえ、関係各省と関係団体に対し下記の事項を強く要望いたします。
記
1.化粧品業界におけるアスベスト含有実態の網羅的調査と結果の公表
本件を踏まえ、国内すべての化粧品メーカーに対し、過去から現在に至るまでのタルク含有製品(ベビーパウダー、パウダー状化粧品等)について、最新の分析技術を用いたアスベスト含有の有無に関する再調査を実施するよう指導してください。また、調査結果については、分析手法、分析機関、対象製品の範囲等を含め、透明性を確保した形で公表されるよう徹底してください。さらに、当該調査については、一定期間(例:1年以内)に取りまとめ、第三者による検証を経た上で公表するなど、実効性ある枠組みを構築してください。
2.化粧品販売員および消費者に対する周知とリスク評価、健康管理体制の整備
過去に化粧品販売やメイク業務に従事し、アスベストばく露の可能性がある元従業員および現従業員に対し、業界団体等に協力を求めるなどして、本件に関する情報を速やかに周知してください。また、長期にわたり当該製品を使用してきた消費者に対しても広く注意喚起を行い、相談窓口の設置、健康診断の受診勧奨等の体制を整備してください。その際、健康管理手帳制度の周知はもちろん、その対象とならない消費者等の健康管理のあり方について厚労省と環境省が連携し、継続的な健康管理が可能となる仕組みの構築をしてください。あわせて、過去に流通したタルク含有製品を長期間使用した一般消費者の健康リスクについて検討するため、石綿救済制度の認定者へのアンケート調査を通じて早急に実態調査を実施してください。
3.国際基準に基づく労災等における対象疾患の拡大および認定基準の明確化
WHO/IARCが関連性を認めている卵巣がんと喉頭がんについて、アスベストばく露との因果関係に関する科学的知見を踏まえ、労災保険制度および石綿健康被害救済制度における救済対象疾患への追加を早急に検討してください。