【全国初】化粧品販売員(美容部員)のアスベスト健康被害による労災認定
公開日:2026年3月23日
昭和40年代後半から約3年にわたり化粧品販売員(美容部員)として働いた女性が、「悪性胸膜中皮腫」を発症したことに関して、仙台労働基準監督署が胸膜中皮腫の発症と業務におけるアスベスト(石綿)ばく露の関連性を認めて労災認定されました(2025年12月2日付)。本件においては、被災者が扱っていた化粧品に使われていたタルクにアスベストが含有していたとして業務との関連性を認めたものです。アスベスト被害は建設業や製造業に多いのが実態です。これまでにタルクに不純物としてアスベストが含有していたとして看護師などが手術用手袋の再利用作業などを通じて労災認定がされていますが、化粧品販売員として化粧品経由のアスベストばく露を認定した事例としては全国初となります。
本件は、アスベスト被害の複雑さを示すものであり、過去に化粧品を扱ってきた方々へアスベスト被害の警鐘を鳴らすものです。これまでにも、化粧品経由でのアスベスト被害があった可能性を示唆するものですが、本件以前に労災認定がなかった事実から、被災者本人にアスベストばく露(タルク経由)の認識がなかった可能性があります。潜在的なアスベスト被害者の救済を考える上で大きな意義を持つ認定です。
本件被災者の概要
生年月日:1956年(昭和31年)
傷病名:悪性胸膜中皮腫
傷病発生日:2024年(令和6年)4月(当時68歳)
被災者死亡日:2024年(令和6年)10月(死亡時68歳)
労災請求日:2024年(令和6年)8月8日(仙台労働基準監督署)
労災認定日:2025年(令和7年)12月2日(仙台労働基準監督署)
被災者居住地:被災者本人の当時の居住地は宮城県内
石綿ばく露歴
被災労働者は、高校卒業後の1974年(昭和49年)3月から1977年(昭和52年)6月までの約3年3ヶ月間、株式会社資生堂仙台駐在所(現:資生堂ジャパン株式会社)において、化粧品販売員(美容部員)として従事しました。業務内容は顧客の化粧等に関する相談対応やメイクの実施であり、その際に使用した化粧品やベビーパウダー(タルク)の中にアスベストが混入していた可能性が否定できず、この期間が石綿ばく露期間として認められました。その後、被災者は他の小売業等にも従事しましたが、資生堂時代の石綿ばく露が認められ認定となりました。
労災認定までの経過
被災者は2024年1月頃から体調不良を自覚し、同年4月にT大学病院を受診して「悪性胸膜中皮腫」と診断されました。同年8月8日に当会事務局の澤田が代理人となり、仙台労働基準監督署へ労災請求を行いました。しかし療養中の同年10月31日に被災者は死亡し、その後は遺族(長女)が未支給の保険給付等を引き継いで請求しました。仙台労働基準監督署による調査の結果、美容部員時代の石綿ばく露が業務上疾病として認められ、2025年(令和7年)12月2日に労災認定(決定)されました。
労災認定の理由
①1974年3月から1977年6月まで(約3年3ヶ月)、株式会社資生堂仙台駐在所にて化粧品販売業務に従事。 現場は会社から派遣されていた薬局等。
②厚生省(当時)からベビーパウダー等の品質確保に関する通知(昭和62年)が発出される以前の期間であり、事業場で取り扱っていた商品に石綿(タルク中の不純物)が含有されていた可能性や、被災者が業務でそれを吸入した可能性が否定できないと判断された。
③石綿ばく露作業の従事期間が1年以上あり、最初の石綿ばく露から10年以上経過して悪性胸膜中皮腫を発症したことから、認定基準(労基則別表第1の2第7号8)を満たす業務上の疾病として認められた。
本件労災認定の意義
本件認定は、建設業や製造業以外の「サービス業・販売業」におけるアスベスト被害の救済にとって非常に重要な意味を持ちます。 過去にも、医療用ゴム手袋の再利用や時計の宝石加工で「打ち粉」としてタルク(ベビーパウダー)を使用し、中皮腫を発症して労災認定された事例はありましたが、今回は化粧品販売員がメイク業務の中でタルク製品を吸入したことによる認定事例です。
これまでにタルクが混入したベビーパウダーが広く使用されてきており、当時の美容部員等で同様のばく露を受けた方は多数潜在していると考えられます。 中皮腫はわずかな量のアスベストばく露でも発症する可能性があり、潜伏期間も平均して数十年を要します。 アスベストが原因であることや、過去の化粧品等との関連性が十分に認識されていないため、中皮腫を発症しても泣き寝入りしている、あるいは労災申請に至っていない被害者が多く存在すると危惧されます。
相談を受け付けます。
本件のように、過去に化粧品販売等の業務でベビーパウダーやタルクを扱い、アスベスト関連疾患(中皮腫など)を発症した方やそのご遺族から、また中皮腫を発症しているものの原因がわかっていない方や肺がんを発症している方でアスベストとの関連性があるかもしれない方の相談を受け付けます。
(全国共通フリーダイヤル)0120-117-554 またはメール・LINE(当会HPからご確認ください。)







