環境大臣へ石綿健康被害救済制度における「特別遺族弔慰金」および「救済給付調整金」の 増額改定に関する要望書を提出
公開日:2026年3月6日
本日、環境大臣に対して以下の要望書を提出致しましたのでご報告致します。

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2026年3月6日
環境大臣 石原宏高 殿
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会
会長 小菅千恵子
石綿健康被害救済制度における「特別遺族弔慰金」および「救済給付調整金」の増額改定に関する要望書
日頃より、石綿健康被害対策の推進にご尽力いただき、厚く御礼申し上げます。
2025年12月26日付で公表されました「石綿健康被害救済制度の療養手当等の見直し」の方針において、近年の物価上昇を踏まえ、療養手当および葬祭料の増額改定が示されました。しかしながら、今回の見直しにおいて、特別遺族弔慰金(280万円)および救済給付調整金(基準額:280万円)が増額の対象外とされ、据え置かれる方針であることは、法の規定および制度の論理的整合性を欠くものであり、到底承服できるものではありません。石綿救済法は「すき間のない救済」をする理念のもとに設計された背景がありますが、今回の除外は一部遺族への差別的な扱いであり、「新たなすき間」を国が故意につくることにつながります。
つきましては、以下の法的根拠に基づき、これら給付についても物価変動等を反映した増額改定を行うよう強く要望いたします。
記
- 法第20条の規定に基づき、算出根拠の変化を総額に反映させるべきである
「石綿による健康被害の救済に関する法律」(以下「法」という)第20条第2項には、特別遺族弔慰金の額の決定プロセスについて、明確に以下の通り規定されています。
「前項の特別遺族弔慰金の額は、指定疾病について受ける医療に要する費用及び第十六条第一項の療養手当の額を勘案して単一の金額として政令で定める額とする。」
すなわち、特別遺族弔慰金の額(280万円)は、恣意的に決められたものではなく、「医療費」や「療養手当」の額を構成要素として積み上げ、勘案して設定されたものです。今回の環境省の方針では、「近年の物価上昇」を理由に、構成要素である「療養手当」等を増額することとされました。これは、弔慰金の算出根拠(勘案要素)である「療養手当の実質的価値」が変動していることを、行政自らが公に認めたことに他なりません。
法の規定上、算出の基礎となる要素(療養手当等)が増額されるにもかかわらず、その結果として導き出される総額(特別遺族弔慰金)を平成18年の制度創設時の水準に固定し続けることは、法第20条第2項の「勘案して定める」という規定との論理的整合性を著しく欠く運用と言わざるを得ません。
- 基準額の据え置きは、調整金受給遺族への「実質的な減額」を招く
救済給付調整金(法第23条)は、制度のはざ間に置かれた遺族の不公平感を解消するため、「特別遺族弔慰金の額(280万円)」から「既支給の療養手当等」を控除して算出されます。 今回の方針通り、療養手当の単価のみが増額され、天井となる280万円が据え置かれた場合、計算上、遺族が死後に受け取る調整金の額は従来よりも減少することになります。
物価高騰に対応するために療養手当を上げた結果、皮肉にも遺族が受け取る最終的な調整金が目減りし、給付総額の実質価値が低下するという事態は、制度が本来意図した「不公平感の解消」という目的に逆行するものです。
- 基金残高は約750億円あり、増額は十分に可能である
本制度の財源となる「石綿健康被害救済基金」には、現在、約750億円もの残高があります。仮に、今回の私たちの要望を反映させても年間に2億円程度(令和6年度支給実績の対象者数の合計587人に対して1割増額の28万円を支給したとすると約1.6億円となる)の支出の増加にしかなりません。
750億円という潤沢な基金残高に対し、この支出増は極めて軽微であり、財政上の懸念は皆無です。被害者救済のために集められた資金を、物価高騰に苦しむ遺族のために活用せず、法の趣旨に反して据え置く合理的な理由はありません。
以上の通り、特別遺族弔慰金の据え置きは、法の規定(第20条第2項)との整合性が取れず、制度運用上の矛盾を生じさせるものであり、この法令への違背は取りもなおさず令和7年12月26日の環境大臣ご自身のメッセージにある「引き続き、石綿健康被害救済制度を着実に運用し、石綿による健康被害の迅速な救済に努めてまいります。」とのお言葉にも、大きくそむく状況を作り上げることにほかなりません。 このため、特別遺族弔慰金の額(および連動する救済給付調整金の算定基準額)について、現在の280万円から物価上昇率等を勘案した額への引き上げを行うよう、政令の改正を強く要望いたします。