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【石綿救済制度】アスベスト肺がんをめぐる医師の診断書記載問題と環境省および環境再生保全機構の対応の問題

公開日:2025年9月16日
解説:中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会
事務局長 澤田慎一郎

アスベスト(石綿)による健康被害の中で「肺がん」は最も被害者数の多いアスベスト関連疾患です。

「石綿健康被害救済制度」の申請において、肺がんを含む被害者の一部が直面する、主治医が申請書類の「石綿が原因であることの根拠」欄を記載してくれない問題について解説します。

想定の2割しか救済されていない「肺がん」被害者の現状

アスベスト肺がんの被害は深刻であるにもかかわらず、現在、救済・補償を受けているのは消極的に見積もって想定された被害者の約2割程度に過ぎません。


出典:全国労働安全衛生センター連絡会議 特集/石綿健康被害補償・救済状況の検証/2014年度以降なだらかな増加傾向、肺がんが202223年度700件台。2024年度個別周知の影響にも注目

 

石綿健康被害救済制度の設計当時、環境省はアスベスト肺がんの被害者数を中皮腫と同程度と見積もりました。これは国際的ないくつかの推計に比べて消極的で、2倍以上の被害者がいるとされているのが一般的です。それにもかかわらず、その見込みに全く届いていません。本来であれば、環境省や審査業務を担う環境再生保全機構は、申請を増やすための努力をすべき立場にあります。しかし、後述するように環境再生保全機構の現状の窓口業務は申請を抑制していると捉えられかねない対応をしています。その現状を環境省も放置しています。

医師の診断書記載を阻む「石綿を原因とすることの根拠欄」

問題の具体的な根源は、救済制度で指定されている「肺がんの診断書」にあります。申請書類には、「石綿を原因とすることの根拠」という欄があり、「胸膜プラーク」や「肺繊維化」といったアスベストばく露を示す所見の有無の記載を医師に求めています。「当たり前」のように感じられるかもしれませんが、この記載欄が障壁となることがあります。

私たちの経験上、レントゲンやCT画像から「胸膜プラーク」の有無を正確に診断できる医師が必ずしも多くないと感じています。胸膜プラークの有無をめぐって、中には裁判の中で争われることもある問題で診断には多くの経験が求められます。

そのため、診断に長けていない医師は記入を困惑し、あるいは所見はないと考え、患者さんやご家族に「書けません」と話されます。医師から書けないと伝えられる患者さんやご家族の多くはその時点で申請をあきらめてしまうと想像されます。

労災制度の申請はシンプル

アスベスト肺がんの救済において、労働災害補償制度(労災)と比較すると、石綿健康被害救済制度の厳しさが浮き彫りになります。

労災の場合、医師が記載する部分は「傷病の部位及び傷病名」のみであり、「肺がん」と記載すれば申請が可能です。医師は余計なことを考える必要がなく、スムーズに申請書が作成されます。

「空欄」のままでも審査してくれる

再び、話を救済制度に戻したいと思います。先に触れた「石綿が原因であることの根拠」の記入欄ですが、実は空欄でも審査はされます。というよりも、この記入欄の記載内容は全く審査に影響しません。

というのも、審査は申請者が提出するレントゲンやCTの画像データなどに基づいて、石綿健康被害判定小委員会の委員が行うため、主治医の診断意見に関係なく審査がされます。したがって、記載がなくても判定されるのです。なお、主治医が根拠欄に何らかの所見があることを記入しても、それが判定小委員会の委員によって否定されることも珍しくありません。

以下は、実際に申請時に提出した申請書の一例です。これで問題なく審査がされます。

実際に申請に用いられた記入書類。結果的に救済制度では不認定となったが、のちに労災認定となった。

あるいは、以下のようにまったくの空欄で申請したものもあります。

しかしながら審査結果は以下のように来ました。すなわち、申請書類の「石綿が原因であることの根拠」の記入欄は全く意味がないことがわかります。

環境省・環境再生保全機構の「申請抑制」と改善への提言

環境再生保全機構の窓口担当者は、医師が根拠欄を書けずに困っている申請者がいることを認識しています。しかし、担当者らはそのような申請者に対し、「法律上そうなっているので、先生に書いていただくようお願いしてほしい」としか案内していません。「書ける部分だけ記載し、根拠欄は空欄でも問題ない」という運用上の実態や、審査が可能であるという重要な情報が申請者に伝えられていないのです。

この対応は私が確認したところ、一担当者の問題ではなく、環境再生保全機構の組織全体としての統一的な対応です。積極的に申請を促す意思がないと見受けられます。このような状況は、「申請抑制」と捉えられても仕方がありません。

環境再生保全機構は申請抑制と捉えられる窓口対応を直ちに見直すべきです。環境省は、同機構のこのような対応を改めるように指導すべきです。

もしアスベスト肺がんの申請で困っている方がおられましたら当会にご相談ください。

石綿健康被害救済制度で不認定になったとしても、労災制度で認定される可能性は大いにあります。制度の基準の違いにより、片方で認められなくても、もう一方で認められるケースがあるため、決して諦めずに相談や申請を検討することが重要です。

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