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【杜撰な肺がん判定基準】アスベスト(石綿)救済制度で不認定からの労災認定と建設アスベスト給付金制度申請へ

公開日:2024年3月20日

アスベスト(石綿)健康被害救済制度で不認定となった被害に関して、のちに労災請求をした結果、労災認定された事案がありましたので報告します。

事案の経過概要

傷病名:肺がん

傷病発生日:2022年3月(当時69歳)

被災者死亡日:2022年6月

労災請求日:2023年5月(木更津労働基準監督署)

労災認定日:2023年10月31

被災者遺族居住地:千葉県内

石綿ばく露歴

被災者は、昭和40年代から令和元年までにかけて大工として建設業に従事しました。スレート屋根の張り替え、天井張り替えの為の解体作業もしていました。

労災認定までの経緯

被災者の死亡後、遺族は喫煙歴がなかったことからタバコ以外の原因で肺がんを発症したと考え、被災者が大工として建設業に従事していたことから後、石綿健康被害救済制度に特別遺族弔慰金・特別葬祭料の請求をしました。しかしながら、石綿健康被害救済制度にもとづく肺がんの認定要件を満たさず不認定となりました。

その後、遺族は建設アスベスト給付金制度の請求を検討する中で当会に相談がありました。ご相談をお伺いし、まずは労災請求を先行して進めることを提案し、請求をしました。

遺族は被災者が昭和50年代から平成20年代にかけて「自営業」で建設工事に従事していたことから労災認定は困難と考えていましたが、独立までの数年間と独立後の一部期間について「労働者性」を有していた可能性がありました。なお、被災者は自営業者等が加入できる「労災特別加入」はしていませんでした。

結果、被災者の胸部CT画像から胸膜プラークが認められること、労働者としての石綿ばく露期間が10年以上認められることから労災認定となりました。

本件からみえてくる石綿健康被害救済制度の問題

本件は、アスベスト(石綿)救済制度において不認定となりながら、労災認定された事案です。主に環境省が所管している石綿健康被害救済制度の肺がん判定基準が被害の実態を無視した荒唐無稽なものであるものを端的に示した事例です。「どんな症状が出るの?どのように診断されるの?」のページで示しているように、労災制度では被災者が石綿ばく露作業に従事していたことを前提に、「ばく露基準」を軸に予備的・代替的な基準を設けて認定をしています。

一方で、石綿救済制度は石綿ばく露作業に従事していない被害者の救済も図ることから、石綿ばく露年数等の基準を設けない形で制度設計されました。中皮腫の場合、その原因はアスベストばく露以外のものは考えられませんので一定の合理性がありますが、肺がんについては明らかな職業歴があり、労災制度の対象とならない可能性のある建設業の自営業者などは大きな不利益を被ることになります。

労災保険においてアスベスト肺がんの認定者では「石綿ばく露歴10年+胸膜プラーク所見」を満たす被災者が最も多いと考えられます。しかし、「胸膜プラーク」は石綿を多く吸っていれば必ず発現するものでもなく、仮に所見があると考えられた場合でも専門家間でその評価が割れることも珍しくありません。場合によってはその評価が裁判で争われることもあります。石綿小体や石綿繊維の本数計測も検体の部位などによって検出本数が異なってくることも珍しくなく、過去には労災制度と石綿救済制度の結果が大きく異なる事案もありました。

つまり、それらしく定められている「医学的基準」は、石綿ばく露の影響を評価する確実な指標とはなりません。それにも関わらず、そのような不確実な基準を判定の唯一絶対のものに据え置いているために本件のような事案が生じてしまっています。

この問題は10数年にわたり、環境省に対して判定基準の見直しを求めていますが、全く改めようとしていません。環境省がこのような被害者切り捨ての運用を続ける限り、これからも救われるべき被害者が救われない状況が続いていきます。

本件遺族については、幸いに労災認定されたことによって建設アスベスト給付金の申請にもつなげることができました。しかし、晩年、家族に「辛いから殺してくれ」と訴えた被災者がかえってくるわけでもなく、そのような辛い記憶が遺族の中からなくなるわけではありません。関係行政機関は被災者と家族に真摯に寄り添い、「救済」とは何なのか、何ができるのか改めて問い直していただきたいと思います。

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