中皮腫・アスベストの病気のこと

どんな治療ができるの?

どんな治療ができるの?

更新日:2024年4月8日

公開日:2022年2月25日

「中皮腫」や「肺がん」の治療には、手術・薬物療法・放射線治療・緩和医療などがあります。中皮腫と肺がんでは、生存率が異なり、医療機関によって手術などの治療経験が異なることはもちろん、薬物療法における選択肢などの差も大きいです。特に、近年は肺がん治療に大きな進展がみられます。患者さんの年齢や基礎体力、人生における考え方などの情報を整理し、適切な医療関係者とのコミュニケーションを経た上で、「患者さん本人の納得」も大切です。

中皮腫とは異なり、肺がんにはアスベスト以外の原因(喫煙等)も影響して発生してしまうものも多くありますが、アスベストばく露の有無によって治療方法や選択肢は変わりません。

中皮腫(胸膜、肺、腹膜、心膜)

中皮腫

中皮腫は、手術・薬物療法・放射線治療・緩和医療が基本的な柱となります。組織診断(上皮型・肉腫型・二相型)、病期(ステージ)、患者さんの身体状況、患者さんの治療を含む生き方の考え方などを踏まえて検討されます。なお、ガイドラインが作成されているのは「胸膜中皮腫」のみになります。腹膜その他の部位については、薬物療法を中心に胸膜中皮腫に準拠して治療がされます。

手術:胸膜外肺全摘出術(EPP)と胸膜切除剥皮術(P/D)

手術は、中皮腫の進行がそれほど進んでいない一部の患者さんが対象となります。経験豊富な医療機関での手術が推奨されます。胸膜外肺全摘出術(EPP)と胸膜切除剥皮術(P/D)の優位性については議論が続いています。術式の選定は、セカンドオピニオンなどを活用して経験豊富な医療機関の意見を踏まえて慎重に判断してください。「中皮腫における胸膜外肺全摘出術(EPP)と胸膜切除剥皮術(P/D)の優位性の比較」も参考にしてください。

薬物療法:初期治療に複数の選択肢

抗がん剤は、アリムタとシスプラチンの併用療法が標準治療となります。一部、標準治療を経た上で選択肢が限られる際に、その他の抗がん剤が検討される場合があります。免疫チェックポイント阻害薬は、オプジーボ単剤療法(二次治療以降)、オプジーボとヤーボイの併用療法(一次治療)が承認されています。手術が困難な患者の方には、免疫チックポイント阻害薬(オプジーボとヤーボイ)や抗がん剤(アリムタとシスプラチン)が一次治療として選択できます。免疫チェックポイント阻害薬は抗がん剤とはことなる副作用の出現にも十分に留意して、がん診療拠点病院等の診療体制の整った医療機関で行うことが重要です。「【最新治療への考え方】悪性胸膜中皮腫に対するオプジーボ(一般名:ニボルマブ)とヤーボイ(一般名:イピリムマブ)の併用療法と副作用」もあわせて参考にしてください。「超高齢(80歳以上)の切除不能な悪性胸膜中皮腫の患者に対する一次治療としてのニボルマブ・イピリムマブ併用療法の安全性: 後方視的単施設研究ケースシリーズ報告」も参考にしてください。まれに、がん遺伝子パネル検査(がんゲノムパネル検査)でも使用可能な薬剤が検討できる場合があります。

放射線治療:再発防止や疼痛緩和

放射線治療は、放射線のもつエネルギーを利用してがん細胞を死滅させる治療法です。中皮腫では、胸膜外肺全摘術(EPP)を経たのちに再発予防のために実施する場合や、手術が困難な胸膜中皮腫においてがんを小さくさせたり、痛みをやわらげる目的で実施されます。

緩和ケア:診断時から治療・療養をサポート

緩和ケアは、痛みや吐き気、呼吸困難などのからだの苦痛、不安や気持ちの落ち込みなど、心の辛さなどを和らげたりすることを目的に、医師や看護師だけでなく薬剤師、栄養士、心理療法士などの多職種によるチームによってケアにあたります。がんと診断された時点から並行して受けることが推奨されており、肺がんの患者さんなどに対する研究から、生活の質(QOL)や抑うつの改善がみられる研究もあります。緩和ケア専門外来などが設置されている病院もあります。加えて、各がん拠点病院に設置されているがん相談支援センターなどを通じても具体的なケアを受ける方法などについて相談することができます。

腹膜中皮腫

腹膜中皮腫は、薬物療法・緩和医療が基本的な柱となり、胸膜中皮腫に準拠して治療がされます。国際的には手術を第一選択とするのが主流で、日本でも一部の医療機関が手術を実施しています。組織診断(上皮型・肉腫型・二相型)、病期(ステージ)、患者さんの身体状況、患者さんの治療を含む生き方の考え方などを踏まえて検討されます。なお、胸膜中皮腫以外の腹膜・心膜・精巣漿膜中皮腫ではガイドラインが作成されていません。腹膜その他の部位については、薬物療法を中心に胸膜中皮腫に準拠して治療がされます。
なお、2023年11月24日に腹膜中皮腫などに対してもオプジーボ(一般名:ニボルマブ)の使用について保険適用されました。

手術:経験豊富な医師との相談が必須

手術は、胸膜中皮腫以上に実施している医療機関が少ないです。手術を検討する場合は経験豊富な医療機関で相談することが必須です。「悪性腹膜中皮腫(Diffuse malignant peritoneal mesothelioma)について」も参考にしてください。

薬物療法:限定的な選択肢

免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボ単剤療法が腹膜中皮腫に対して保険適用されている唯一の治療法です。抗がん剤は、アリムタとシスプラチンの併用療法のみが原則的に使用できます。まれに、がん遺伝子パネル検査(がんゲノムパネル検査)でも使用可能な薬剤が検討できる場合があります。

放射線治療:選択肢にはならず

放射線治療は、腹膜中皮腫では一般的に選択肢になりません。

緩和ケア:診断時から治療・療養をサポート

緩和ケアは、痛みや吐き気、呼吸困難などのからだの苦痛、不安や気持ちの落ち込みなど、心の辛さなどを和らげたりすることを目的に、医師や看護師だけでなく薬剤師、栄養士、心理療法士などの多職種によるチームによってケアにあたります。がんと診断された時点から並行して受けることが推奨されており、肺がんの患者さんなどに対する研究から、生活の質(QOL)や抑うつの改善がみられる研究もあります。緩和ケア専門外来などが設置されている病院もあります。加えて、各がん拠点病院に設置されているがん相談支援センターなどを通じても具体的なケアを受ける方法などについて相談することができます。腹膜中皮腫の患者さんが緩和ケアを利用した事例(「『悪性腹膜中皮腫』になり5年目を迎えて」)なども参考にしてください。

肺がん

肺がんにはガイドラインがありそれにそって、手術・薬物療法・放射線治療・緩和医療が基本的な柱となります。組織診断(主には腺がん・扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がんがありますが、10種類以上に分類)、病期(ステージ)、年齢や身体状況、患者さんの治療を含む生き方の考え方などを踏まえて検討されます。中皮腫とは異なり、ここ数年の治療の選択肢が劇的に変化しています。

手術:「胸腔鏡補助下手術」と「完全鏡視下手術」

手術は、主に非小細胞肺がんにおいて実施されます。近年は「胸腔鏡下手術」が主流となっており、おおきく「胸腔鏡補助下手術」(テレビモニターと開胸部からの観察の併用)と「完全鏡視下手術」(テレビモニターの観察のみ)にわかれます。従来の皮膚を大きく切開した形での手術よりも傷が小さく、術後の痛みが小さいとされています。2018年にはロボットを用いた胸腔鏡手術も保険適用されています。ただ、術式ごとに長所や短所があります。また、薬物療法の効果が期待できる組織型やがんのひろがり、患者さんの身体的状況などから総合的に判断が必要です。呼吸器外科専門医のいる経験豊富な医療機関で相談し慎重に判断してください。

薬物療法:多様な個別の選択肢

抗がん剤は、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、イリノカテン、S-1(エス-ワン)など多様な治療薬が用いられています。どの抗がん剤をどの順番で使用するか、主治医との十分なコミュニケーションの上で決定する必要があります。
分子標的治療薬は、遺伝子の変化をもつ肺がんに用いられます。治療のタイミングや遺伝子の変化など、個々の患者さんに適した治療薬は十分な検討が必要です。がん拠点病院など、経験豊富な医療機関で相談してください。
免疫チェックポイント阻害薬は主に非小細胞肺がんの治療において用いられますが、一部の小細胞肺がんでも用いられます。オプジーボ、ヤーボイ、キートルーダなどがあり、抗がん剤と組み合わせて使用されることもあります。免疫チェックポイント阻害薬は抗がん剤とはことなる副作用の出現にも十分に留意して、がん診療拠点病院等の診療体制の整った医療機関で行うことが重要です。

放射線治療:再発防止や疼痛緩和

放射線治療は、放射線のもつエネルギーを利用してがん細胞を死滅させる治療法で、手術や抗がん剤と併用して用いられる場合や単独で用いられる場合、痛みをやわらげる目的で実施されるケースがあります。

緩和ケア:診断時から治療・療養をサポート

緩和ケアは、痛みや吐き気、呼吸困難などのからだの苦痛、不安や気持ちの落ち込みなど、心の辛さなどを和らげたりすることを目的に、医師や看護師だけでなく薬剤師、栄養士、心理療法士などの多職種によるチームによってケアにあたります。がんと診断された時点から並行して受けることが推奨されており、肺がんの患者さんなどに対する研究から、生活の質(QOL)や抑うつの改善がみられる研究もあります。緩和ケア専門外来などが設置されている病院もあります。加えて、各がん拠点病院に設置されているがん相談支援センターなどを通じても具体的なケアを受ける方法などについて相談することができます。

石綿肺

じん肺の一種である石綿肺に根治を目指す治療法はなく、薬でたんの排出をうながす、咳をおさえる、在宅酸素療法などの症状をやわらげる治療がされます。

びまん性胸膜肥厚

根治を目指す治療法はなく、たんの排出を薬でうながしたり、在宅酸素療法などの症状をやわらげる治療がされます。

良性石綿胸水

多くの場合は、胸水が自然に消滅するために経過観察がなされます。一部の方は、胸水がなくならず、胸水を抜くなどの治療がされます。

岡部和倫(ベルランド総合病院呼吸器腫瘍外科部長)
岡部和倫(ベルランド総合病院呼吸器腫瘍外科部長)

胸膜中皮腫の手術は、胸膜外肺全摘術(EPP)と胸膜切除剥皮術(P/D)が実施されています。私は、両術式を患者さんに応じて使い分けていて、治療成績は世界トップクラスと評価していただいています。手術の適否の判断とEPPまたはP/Dの選択のためには、豊富な経験が必要です。更に、手術や術後管理の質は大きく異なりますので、適切な外科医の受診を強くお勧めします。

【経歴】

大分医科大(現大分大医学部)卒業後、岡山大学附属病院勤務中に、合計6年3カ月間ハーバード大学に留学。アメリカ医師免許も取得し、ハーバード大学の教育病院で、クリニカルフェローを務めた。胸膜中皮腫外科治療の権威だったシュガーベイカー教授のもと、最先端の診療と手術技術を学んで帰国。山口宇部医療センターなどを経て現職。Best Doctors in Japanや優秀臨床専門医に認定されている。

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