緩和ケア―緩和ケアには診断時から関わりを

 皆さんは"緩和ケア"という言葉を聞いたことがありますか?"緩和ケア"という言葉は、新聞やテレビを通じて一般市民に浸透し始めているように思います。しかし、多くの方がイメージしている緩和ケアは、"緩和ケア病棟に入院しなければ受けられないケア"、あるいは"何も治療をしない看取りのケア"というものかもしれません。緩和ケアに長年携わっている私達は、病気を診断された時から始めるケアであり、辛い症状や気持ちの辛さを和らげ、その人らしい生活が送れるための基本的で継続的なケアであると考えています。そのためには医師だけでなく看護師や薬剤師、医療ソーシャルワーカー、栄養士、理学療法士等、多職種がチームを組んで行うことが非常に重要とされています。緩和ケアはどのような療養の場においても提供されるべきであり、病と共にその人らしく生きることを支えるケアだと私は思っています。

 治療にともなう気持ちの辛さを理解することの大切さは、30年前、私が看護学生であった時にしっかりと教えられました。しかし実際に病院看護師として仕事を始めると、治療成績ばかりが注目され、"病と共に生きる"という視点での医療は提供されていませんでした。ある患者さんはこんなことをおっしゃっていました。「悪いものは手術でとってもらった。体の中にがんはないから退院できると先生は言うけれど、すぐに仕事に戻れるのだろうか。不安でいられない。手術して生きる希望まで切り取られてしまった感じがする」。この患者さんの言葉は、私にとって衝撃的でした。治療開始前の患者さんの思い、退院後の患者さんの生活状況についての理解がなかったことを深く反省しました。すぐに病棟チームでケアの方向性を検討し直したことをよく覚えています。

 医学の進歩にともない、新薬の開発や治療法が登場しています。しかし、診断や治療には辛さが伴うことは否めません。どうぞ皆さん、辛い症状や気持ちを我慢することはありません。是非ご自身の辛さを身近にいる医療者にお伝えください。かならず皆さんの体験を理解し、一緒に辛さの緩和に取り組んでくれる医療者がいるはずです。まず、お互いが一歩踏み出し、歩み寄って、より良い緩和ケアについて考えていけたらよいと思います。


(医療法人社団杏順会越川病院 がん看護専門看護師 中山祐紀子)

(第110号 2015年7月掲載)

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