緩和ケア―じん肺・中皮腫患者さんとご家族のケアへの思い

 私が勤務している病院には、たくさんのじん肺症の患者さんが通院治療されていますが、そのうちの多くの方が、在宅で酸素療法を行っています。私は看護師として、息苦しさを抱える患者さんと家族の方のために何ができるだろうかと日々自問自答していました。ある時、「苦しい、きつい」と訴える患者さんの背中を一晩中さすっている奥様がいらっしゃいました。私が「お薬使いましょうか?」というと、患者さんは「これが一番薬より効くんだよ」とおっしゃいました。ご家族が傍にいて支えてあげることが、患者さんにとって何より心強いのだとあらためて教えられました。だからこそ、患者さんを支えるご家族へのケアが必要性だと感じました。ご家族は、病気のこと、保障のこと、今後の生活の立て直しなど、たくさんの心配事を抱えます。せめてそのうちの、薬や治療・看護で解決できるもの、行政へ橋渡しできるものなどのお手伝いをしたいと思いました。

 ある70歳代の女性患者さんは、中皮腫と診断され、大学病院からの紹介で、化学療法目的で入院していらっしゃいました。アスベストを扱う職歴もなく、10年前に亡くなったご主人様が、ビルの解体業を日雇いで行っていたそうですが、結局どういった経緯で中皮腫になったのかはわかりませんでした。ご家族は、聞きなれない病名と原因に戸惑うばかりで、「残された時間はあとわずか」という医師の告知に途方に暮れていました。私は、残された時間をできるだけ患者さんとご家族が大切に過ごすことに費やして欲しいと思い、アスベストセンターへ救済申請の手続きをお願いしました。この方は、家族に看取られながら亡くなりましたが、亡くなった後も保障や賠償などの裁判は続いています。アスベストによる被害への救済は時間がかかるので、多くの方々の支えや助けがないと患者さんやご家族の負担が大きいと思います。看護師に出来ることは日常生活の援助と共に一緒に日々悩むことです。これからも、患者さんやご家族が教えて下さった事を忘れずケアを行っていきたいと思います。

(長門記念病院 御手洗みどり)

(第109号 2015年6月号掲載)

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