3.ピアサポート ―体験的知識―

 ピア・サポートの特徴には、(1)「 体験にもとづく共感」、( 2)「 体験的知識」、( 3)「 支援し合う関係」、( 4)「 ロールモデル」の4つをあります。今回は(2)体験的知識について説明します。

 専門家が専門的知識を持っているように、ある体験をした人はその体験を通じて得た情報やものの見方、感じ方、ある問題に対する対処方法などを知恵や知識として蓄えています。これを「体験的知識」と呼びます。 アスベストの被害者とその家族は、労災の申請、病気の治療、会社との交渉などの体験を通じてそれぞれがその人なりの体験的知識を身につけています。労災申請を例に考えてみましょう。

 最初はどうしたらいいかわからなかったけれど患者と家族の会に連絡して相談したら道が開けた、そこで労災の専門家と相談しながら資料をひとつひとつ集めて作り、ようやく申請にこぎつけた・・・そのような過程で体験した中で得られた知識や知恵が「体験的知識」です。そのときの不安な気持ちや安堵感、周囲とのやりとりの中で学んだことなども体験的知識と言えます。また、何かをしてみてうまくいったときだけでなく、うまくいかなかったときに得られる知識や知恵も重要な「体験的知識」となります。同じように、アスベスト関連疾患の治療や療養、家族としてのケアの体験の中で、それぞれが体験的知識を蓄積しています。

 体験的知識はそれぞれの人が試行錯誤しながら身につけたものであり、専門家が持っていない情報にあふれています。ひとつひとつの体験的知識はその人固有の体験に基づいているため一般化することはできませんが、他の人が問題を解決する参考となったり、問題に対する見方を変えたり、問題に対処していこうとする姿勢を育むきっかけとなります。

 中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会のように活動を継続している組織には、さまざまな立場の人々、いろいろな経験をした人々が集まり、知恵や知識が共有され、交換されています。この関わりの中で、集団としての体験的知識が蓄積され、会の財産となっていきます。

(相談役 北星学園大学 大島寿美子)   

(第102号 2014年11月掲載)

「看護師のための中皮腫情報サイト」

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