(13) 中皮腫のセカンド・オピニオン(3)

 (12)同様、胸膜中皮腫の患者さんとご家族90名のうち、診断から永眠まで経過の詳細を把握した21名の報告を続けます。

 最初は、患者さんとご家族の入眠導入剤等の精神科領域の内服薬の開始についてです。患者さんでは、診断時から内服が9名、第二治療期から6名、進行期から4名、終末期から0名、なし1名で、抗うつ剤を内服したことが明確な人が6名でした。ご家族では、診断時から内服が8名、第二治療期から4名、進行期から1名、終末期から0名、なし5名、不明3名でした。

 中皮腫の患者さんやご家族は、診断時から約3分の1は「うつ状態」で不眠となり入眠導入剤を内服し始める方が多く、その比率は病状の進行と共に高まっていくこともわかりました。医療者は、中皮腫の患者さんとご家族に対し、診断時期から「こころ」へ配慮し話を聞く時間を別途とり、「必要なサポートを行う姿勢がいつでもあることを伝える」等、緩和ケア的関わりが必要であることが良くわかる結果でした。

 90名中の胸膜中皮腫患者さんの多くには、「石綿」で発症したという「社会的な痛み」が共通していました。原因と思われる石綿ばく露の機会が不明の方の場合でも、「何となく石綿のことがもやもやする感じ」があり、「私は石綿に関係ない中皮腫と断定して、社会的痛みから逃れる」方も見うけられました。労災申請等では、過去の会社や同僚の協力や非協力による苦労が皆さんあり、「石綿」「家族」「過去の会社や同僚」等を含め、心理的痛みとも関連しますが「社会的痛み」を複雑にしていました。

 胸膜中皮腫の患者さんやご家族は、「突然治癒困難」で「予後が短い場合が多い疾患」となり「治療法の選択」を迫られ、「自分と家族で人生の選択に突然巻き込まれる」スピリチュアルな「痛み」があり、更に「会社や国やのその他が対策をとっていれば自分は発症しなかった」「自分の人生は違っていたのでは?」という「社会的」な痛みにも関連する「スピリチュアルな痛み」を抱えた方も多かったのです。多くのがん患者に共通する、「身体的痛み」、「心理的痛み」に加えて、「社会的痛み」と「スピリチュアルな痛み」が強い状態に中皮腫の患者さんやご家族はあると、思われました。「会社や労災のことは支援者等に任せる」、「患者と家族の会、ケースワーカー、セカンド・オピニオンの医師に相談し、狭い意味の治療以外の緩和ケア的配慮のできる医療機関を選択し痛みを軽減」していました。

 胸膜中皮腫の患者さんとご家族に接する医療関係者に求められていることは、「石綿・アスベストという有害物による被害者である点を基本とし共感的に接する」ことが基本としてもとめられていると思います。心理的には、「診断期からうつ状態や不眠が生じやすいので、絶えず相談しやすい環境とし、声掛けをわすれない」ことでしょう。社会的問題では、「監督署、支援団体、MSWその他に任せることが可能な部分はチームで分担してもらい、患者さんと家族の社会的負担軽減をはかること」が大事です。エビデンスがない治療の選択もあるので、セカンド・オピニオンでの納得を活用すること」も大事です。「患者と家族の会等のピアカウンセリングや緩和ケア医療との接点をもち、診断時期から永眠(長期生存される場合もありますが)までの流れの中で時期に応じた接し方を計画しておくこと」が求められます。

 緩和ケアに関しては、聖路加看護大学の長松康子先生との研究過程で、研究参加者一同以下の図が現在の日本の胸膜中皮腫に必要だということになりました(改訂版アスベスト関連 早期発見・診断の手引き p72~76)。


図 胸膜中皮腫の望むべき緩和ケア

 最後に、セカンド・オピニオン外来をしてきて感じることを、いくつかまとめてみます。

  1. 外科治療は実績のある医師を選択し、無理に切り過ぎないことも肝心です。
  2. シスプラチンとアリムタの抗がん剤治療が可能な場合、一度することが望ましいと思います。抗がん剤治療を長期間し続けることは望ましくない人も多いので、生活の質の総合判断が大事となり、セカンド・オピニオンの活用がのぞまれます。
  3. 胸膜中皮腫は簡単に治癒する病気ではないので、「治る選択を必死に考え」てつきあいをする病気ではなく、「自分なりの人生感、生死感にあい、後で悔いることのない選択をすること」をつきあう基本において、「これは是非したいという治療はする」と「うまくつきあえる」病気であると思います。
  4. 胸膜中皮腫は、「うまくつきあえば」身体や心理的な「痛み」はかなり解消できる疾患です。緩和ケア医、家庭医、セカンド・オピニオン等の医師や医療関係者を適切に選択しましょう。選択のためには、患者と家族の会等、良い相談者の選択が人生にとり本当に大事です。
  5. 胸膜中皮腫には、石綿による被害という社会的「痛み」があり、平均的には1年前後の予後の場合も多い疾患です。身体的「痛み」、社会的「痛み」、心理的「痛み」等が重層化しやすい。特にスピリチュアルな「痛み」は治療的な病院では除きにくいと思います。緩和ケアの早期の併用が望まれます。

 在宅緩和ケア、腹膜中皮腫等について経験したこともありますが、紙数もつきたので、掲載の機会があれば述べてみたいと思います。

(第96号2014年4月)

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