(9) 緩和ケアをあわせて考えることについて

 今まで、「中皮腫の標準的治療」と「セカンドライン治療」についてお話しさせていただきました。今回は「緩和ケアをあわせて考えること」についてお話します。

 胸膜中皮腫の患者さんにはどのような症状が出るのでしょうか。胸水が少量で症状がない時期もあれば、胸水が増加して咳がでたり、息切れがすることもあります。胸膜に発生した腫瘍が胸膜全体に広がると胸郭が硬くなり大きな呼吸がしにくくなります。胸膜の腫瘍が胸壁に広がり肋骨を壊したり、肋間神経にダメージを与えると胸痛が出現します。これらの症状の程度や進行の早さは個人によってかなり差があります。

 疼痛は最も大きな苦痛のひとつです。疼痛が強ければ、動く気にもなりませんし、食欲もでません。いろいろなことを考えるのも億劫になります。放置しておくとそれだけで衰弱してしまいます。

 ところが、現在、がん性疼痛の80~90%は消炎鎮痛剤やオピオイド薬の適切な使用によってコントロールできます。オピオイドというのはモルヒネやコデインといった麻薬を含む幅広い言い方です。現在では世界保健機構(WHO)の提唱する手順で使用することが広く知れ渡り安全に使用できるようになっています。

 がんによる疼痛にはかならずオピオイド薬を使用するというわけではありません。程度が軽ければ通常の消炎鎮痛剤を使用し、それだけで十分疼痛が取れない場合にオピオイド薬を追加します。

 消炎鎮痛剤は1日の薬量が決まると、それ以上使用しても効果は増強しない上に胃潰瘍などの副作用が出やすくなります。それに対して、オピオイド薬は、疼痛の程度によって増量していくと、それまでの用量では取れなかった疼痛を除くことができるのです。オピオイド薬は用量を増加していくと除痛効果も高くなりますが、便秘、腹部膨満などの傾向が強まります。

 このため、オピオイド薬をうまく使用するためには便通をちゃんと整えておくことが大切です。便のことを話題にするのは恥ずかしいかもしれませんが、とても大切なことです。看護師あるいは主治医の方とホンネで話ができるかどうかが疼痛コントロールのポイントだと私は考えています。

 酸素不足による呼吸困難には酸素吸入を行いますが、それでも不十分なときはオピオイド薬を使用します。このときにも便通の対策が大切です。

 体のだるさや倦怠感も症状として出現します。このときにはステロイドホルモンを使用します。症状に応じて少量から少しずつ増量していきます。

 以前に比べるといろいろな症状を緩和する方法は随分増えたと思います。しかし、薬剤が増えれば、副作用もその分増えます。どうしても和らげて欲しい症状の優先順位、患者さん自身の生活の中で守りたいものの優先順位を決めながら治療を行います。

 苦痛や希望はどちらも人によってさまざまです。自分にとっての苦痛、希望を率直に伝えていくことが自分らしく生活していくために何より大切だと思います。

(第92号2013年12月)

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