(8) セカンドラインの抗がん剤治療について

 (7)で、胸膜中皮腫の抗がん剤の標準的治療法についてお話ししました。これは胸膜中皮腫と診断されて初めて受ける抗がん剤治療(初回治療、ファーストラインともいいます)についての話でした。初回治療だけで病気が安定していればいいのですが、抗がん剤治療は病気を治しきる治療ではないので、再び病気が進行してくることになります。このとき、行う抗がん剤治療のことをセカンドラインの治療といいます。

 現在、確立されたセカンドライン治療はありません。これはセカンドライン治療を行ってはいけない、とか、行っても意味がない、という意味ではありません。大多数の人に当てはまる治療として挙げるだけの治療法がない、ということです。

 アメリカのNCCN (National Comprehensive Cancer Network) 臨床実践ガイドラインでは、初回治療でペメトレキセド(商品名アリムタ)を使用していない場合は、その治療をオススメしています。あるいは、初回治療で治療効果はあったけれど、倦怠感などの副作用のため中断していたといった場合には、初回治療と同じ治療をしてみるのもひとつと書いてあります。その他に、ビノレルビンやゲムシタビンといった薬剤も候補薬の一つとして挙げています。

 ビノレルビンは、ビンカアルカロイド系の薬としては、神経系に対する毒性が比較的弱く、重い神経障害を引き起こすことはほとんどありません。注意が必要なのは、白血球減少による感染症や貧血、出血傾向です。また、麻痺性イレウスや間質性肺炎、気管支けいれん、心筋梗塞などが起こることもあります。

 ゲムシタビンは、一般的な副作用としては、骨髄抑制と吐き気・嘔吐、口内炎などの消化器症状が多いとされています。そのほか、発疹などの過敏症、頻脈、発熱、頭痛、めまい、脱毛などが起こることもあります。施設によってはこの2剤を組み合わせた治療を行う場合もあります。

 セカンドライン治療は確立されたものがないため、主治医から提案される治療法が異なる可能性があります。抗がん剤治療を安全に行うためには、治療法そのものについて主治医のみならず、看護師、薬剤師など医療スタッフも十分知っている、すなわち馴れていることが大切です。そのため、治療効果が同等であれば、その医療機関で最も馴れている治療法を行うことが勧められています。どんなにすぐれた治療結果が報告されていても、その医療機関でそれまで一度も行われていない治療法というのは心許ないものなのです。

 標準的治療のときにもお話ししましたが、抗がん剤治療は病気を治しきる治療法ではなく、病気はあるけど進行を抑えて少しでもいい状態を長続きするための治療法ですから、患者さん自身がその治療法とつきあっていけるかどうかがとても大切な問題です。

 セカンドラインの治療を考えなければならないとき、初回治療の時より体調が悪いことは十分考えられます。体調が悪ければそれだけ治療効果が出にくく、かえって副作用が出やすいといわれています。

 そのときの全身状態、検査結果、それまでの経過と患者さん自身の気力が、抗がん剤治療とつきあっていけるかどうかを十分考えることが大切です。

 初回治療の前には抗がん剤治療がどんなものか知らなかった患者さんも、セカンドラインの治療では、自分の経験からある程度想像することが出来ます。もちろん薬が変われば副作用の出方も変わってくるでしょうが、セカンドラインの治療を考えるときは、ご自身の経験も踏まえながら、主治医と話し合い納得して治療を受けることが大切です。

(第91号2013年11月)

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