(6) 胸膜中皮腫に対する外科治療のガイドライン

 胸膜中皮腫の手術についてシリーズでご紹介しました。2013年に発表された国際中皮腫会議(IMIG)のガイドラインによると、胸膜中皮腫の治療は、「手術が可能ならば、手術が望ましい」とされています。今回は、このガイドラインについてご説明します。

 2012年9月に国際中皮腫会議が米国ボストンで開催されました。会長は、胸膜中皮腫に対する外科治療の第一人者であるシュガーベーカー先生でした。会長が胸部外科医でしたので、昨年の国際中皮腫会議では、胸膜中皮腫に対する外科治療が盛んに討議されました。シュガーベーカー先生はハーバード大学教授で、ブリガムアンドウイミンズ病院の胸部外科長です。私はアメリカ医師免許も取得し、彼の病院で胸部外科医として働き、胸膜中皮腫の手術を教えていただきました。

 国際中皮腫会議が公表した胸膜中皮腫に対する外科治療のガイドラインをご紹介します(1~6)。ガイドラインの筆頭執筆者は、ニューヨークの世界的に有名な癌センターの胸部外科長であるルーシュ先生です。

2004年、私はアメリカ医師免許も取得し、ハーバード大学教育病院のブリガムアンドウイミンズ病院で、シュガーベーカー先生と一緒に手術をしていました。

2012年、ニューヨークのメモリアルスローンケタリング癌センターのルーシュ先生の部屋にて

  1. 外科手術による肉眼的な完全切除と微小転移のコントロールが、他の悪性腫瘍を治療する際と同様に、胸膜中皮腫に対する集学的治療でも極めて重要な役割を果たします。
  2. 肉眼的な完全切除が達成できると判断される時には、手術が必要です。
  3. 手術の種類(胸膜外肺全摘術または胸膜切除剥皮術)は、胸膜中皮腫の分布などの臨床的な因子、施設の経験、外科医の判断および専門的な技術や知識に依存します。これらの手術は、合併症や術死の割合が許容範囲内の外科医によって実施されるべきです。
  4. 胸膜中皮腫の全患者は、まず腫瘍内科、放射線腫瘍科、胸部外科を含む多くの専門科で評価されるべきです。
  5. 臨床病期分類が、治療前に実施されるべきです。
  6. 胸膜中皮腫の組織型は、治療開始前に組織の生検で確認されるべきです。

 胸膜中皮腫の治療方針の決定・手術・術後の管理は、たいへん高度な専門的知識と技術を必要とします。スイスでは、5年間に中皮腫の手術を15例以上経験した外科医のみが執刀を許された研究がありました。患者さんが多数の病院に分散している日本では5年間に15例以上の中皮腫の手術を経験した外科医は極めて少ないです。経験豊富な外科医を受診されることを強くお勧めします。

 患者さんの健康回復とご家族の安心を心からお祈り申し上げます。

(第89号2013年9月掲載)

ハーバード大学医学部の本部・その横に見える高層ビルが、ブリガムアンドウイミンズ病院の研究棟です。

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