(3) 胸膜中皮腫の手術について <1>

 胸膜中皮腫の治療は、「手術が可能ならば、手術が望ましい」とされています。前回は、「胸膜中皮腫の手術方法」をご紹介しました。今回は、胸膜中皮腫に対する胸膜外肺全摘術が可能な患者さん、手術時間、手術中輸血の有無についてご説明します。

 「胸膜中皮腫の手術方法」は、会の相談役で聖路加看護大学の長松康子先生が作成されたウエブサイトに解りやすく説明してありますので、是非ご覧になって下さい。また、山口宇部医療センターのウエブサイトには、「胸膜外肺全摘術」が多くの写真入りで紹介してあります。

 胸膜中皮腫の治療は、「手術が可能ならば、手術が望ましい」とされています。どのような患者さんには、手術が可能なのでしょうか。

 胸膜中皮腫に対する胸膜外肺全摘術が可能な患者さんについて、ご説明します。目に見える中皮腫を全て摘出できることが大前提です。切除できない場所まで中皮腫が進行している場合は、手術をお勧めできません。お腹や骨などに転移している場合も手術は不適切です。目に見える中皮腫を全て摘出できると判断された患者さんは、全身状態が良ければ、年齢は75歳ぐらいまで可能です。胸膜外肺全摘術は片方の肺を全て取り除きますから、肺活量などの肺機能が良いことが必要です。胸膜外肺全摘術は大きな手術なので、心臓・腎臓・肝臓などの全身の機能も良好なことが望ましいです。

 胸膜中皮腫は、上皮型・二相型・肉腫型に分類されます。二相型は、上皮型と肉腫型の混合です。治療成績は、上皮型が最も良く、肉腫型は悪いです。二相型の治療成績は、上皮型と肉腫型の中間とされています。胸膜中皮腫の治療成績を比較する場合には、上皮型・二相型・肉腫型の割合を考慮する必要があります。例えば、上皮型の患者さんを多く手術していれば、治療成績は良く、肉腫型の患者さんを多く手術していれば治療成績が悪くなります。

 胸膜中皮腫にも進行程度を示す病期分類があります。1期・2期・3期・4期と分類されていて、数字が大きいほど進行しています。胸膜外肺全摘術が望ましい患者さんは、上皮型と二相型であれば1期・2期・3期で、肉腫型の場合は1期のみと判断しています。胸膜中皮腫の治療成績を比較する場合には、型の分類と同様に、1期・2期・3期の割合も考慮する必要があります。例えば、1期の患者さんを多く手術していれば、治療成績は良く、3期の患者さんを多く手術していれば治療成績が悪くなります。胸膜中皮腫に対する手術の適否の判断は難しいとされていますので、経験豊富な呼吸器外科医を受診されることを強くお勧め致します。

 胸膜外肺全摘術は、片方の肺・壁側胸膜・横隔膜・心膜を切除し、横隔膜と心膜は人工の膜で再建する難しい大手術です。手術時間は、平均7時間半です。短ければ5時間で、長ければ10時間ぐらいかかります。手術時間の前後に麻酔をかけて、麻酔を覚ます時間も加わります。外科医は、手術中に「飲まず・食わず・出さず」で、頑張っています。胸膜外肺全摘術は大きな手術ですが、4割強の場合に手術中の輸血は不要です。輸血する時は、血液センターから供給される検査済の安全な血液を使用しています。ご家族、親戚や友人の血液を輸血のために提供していただくことはありません。胸膜外肺全摘術の前に抗癌剤治療を受けられた患者さんは、抗癌剤の影響で貧血になっていて輸血を要する割合が高いようです。胸膜中皮腫に対する手術は難しい手術とされていますので、経験豊富な呼吸器外科医を受診されることを強くお勧め致します。患者さんの健康回復とご家族の安心を心からお祈り申し上げます。

(第86号2013年5月掲載)

「看護師のための中皮腫情報サイト」

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