(1) 胸膜中皮腫の手術前と手術後の病期の違い

 病気にかかった時には、「重い状態なのか、軽い状態なのか、進行しているのか、早期なのか、治りやすいのか、治りにくいのか、どのような治療が適切なのか」などと考えると思います。外科医の私達も、病気の患者さんを診察しながら同様な内容を検討しています。病気がどのくらい進行しているかを示すために「病期」という指標があります。1期、2期、3期、4期に分けられ、数字が小さいほど病気が早期で、数字が大きいほど病気が進行しています。

 手術前の患者さんの病期は、「臨床病期」とされています。この文章内では、理解しやすくするために臨床(手術前)病期と書きます。臨床(手術前)病期の判定には、レントゲンやCT(コンピューター断層撮影)などの画像診断が主に用いられます。CTでは、体の断面の画像を見ることができます。患者さんが手術を受けられた場合は、摘出された臓器を顕微鏡で調べて病期を判定します。摘出臓器の顕微鏡検査を病理検査と言いますので、「病理病期」とされています。この文章内では、理解しやすくするために病理(手術後)病期と書きます。

 一般に、治療の方針を決める時や患者さんの今後の状態を予想する時に病期がたいへん参考になります。すなわち、「臨床(手術前)病期が1期なので、手術しましょう」、「臨床(手術前)病期が4期なので、抗がん剤の治療をお勧めします」、「病理(手術後)病期が3期なので、今後5年間生きられる確率が20%です」などと病期が盛んに利用されています。

写真1:顕微鏡で観察した胸膜中皮腫の細胞

 胸膜中皮腫でも病期は制定されています。しかし、胸膜中皮腫の場合は、臨床(手術前)病期の正確な判定が難しいとされています。また、臨床(手術前)病期よりも病理(手術後)病期が進行していることが多いとされています。したがって、多くの患者さんで手術前と手術後の病期が異なります。皆さんも「手術を受けてみたら、思っていたよりも病気が進んでいました」という患者さんやご家族の言葉を聞かれたことがあるのではないでしょうか。

 胸膜中皮腫の臨床(手術前)病期の正確な判定が難しい理由をご説明します。現在利用可能な画像診断方法では、胸膜中皮腫の病気の範囲を精密に確認できないからです。臨床(手術前)病期よりも病理(手術後)病期が進行している理由をご説明します。病理(手術後)病期は顕微鏡で判定されますので、胸膜中皮腫の病気の範囲を精密に確認できるからです。

 胸膜中皮腫の臨床(手術前)病期は、患者さんの治療方針を決めるためにたいへん重要です。正確な臨床(手術前)病期の判定は難しいので、経験豊富な医師を受診されることを強くお勧め致します。患者さんの健康回復とご家族の安心を心からお祈り申し上げます。

写真2:胸膜中皮腫のCT画像

(第84号2013年3月掲載)

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