<6・26>省庁交渉 開催のご案内とアスベスト石綿健康被害に係るすき間のない救済を求める要望書
更新日:2026年6月3日
公開日:2026年5月30日
中皮腫などのアスベスト健康被害に関して、厚生労働省や環境省への要望書を関係省庁へ6月3日に提出しました。
本要望書に対する回答は、6月26日(金)14時30分〜から予定しております省庁交渉の会場(衆議院第二議員会館大会議室)にて各省庁からもらう予定です。当日はその回答を受けて、患者さんやご家族から実情を踏まえた声を伝えていただきます。
ご参加を希望の方はこちらからお申し込みください。お問い合わせ内容に「省庁交渉参加希望」とご記入ください。
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2026年6月3日
環境大臣 石原宏高 殿
厚生労働大臣 上野賢一郎 殿
総務大臣 林 芳正 殿
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会
会長 小菅千恵子
アスベスト石綿健康被害に係るすき間のない救済を求める要望書
アスベスト健康被害をとりまく諸制度に関して、「被害者が適切な医療と補償を受けられる社会」を実現するため、下記の通り速やかな検討と具体的措置を要望します。
1 アスベスト被害者の給付格差をなくす取り組み(環境省)
労災と救済給付の給付水準や給付体系には大きな格差があります。制度の違いにより補償・救済額や支援の内容が大きく異なり被害者間に著しい不公平が生じています。治療費や交通費の自己負担増によって経済的困難に直面し、生活が困窮するなどのケースも生じています。救済給付を労災と同等の給付水準への見直しが求められます。
前回の石綿健康被害救済小委員会では、私たちが主張していた物価上昇を考慮した見直しについて取りまとめ報告では一切の言及もされなかったにもかかわらず、「経済財政運営と改革の基本方針2025」が2025年6月13日に閣議決定されたことを理由に石綿健康被害救済制度の療養手当等の見直しを図ました。このような経過自体、石原環境大臣が国会答弁で述べた「真摯に寄り添う」姿勢に反しています。加えて、見直しが療養手当等の一部に限定されたことは極めて不当です。
2022年6月17日に公布・施行された改正石綿健康被害救済法では、附則において施行後5年以内の見直しを規定しています。
①石綿健康被害救済制度における、「特別遺族弔慰金」(280万円)と「救済給付調整金」(基準額280万円)の給付額について、今回の療養手当等の引き上げ割合と同水準の見直しを速やかに実施してください。現行の変更は患者・遺族間の不公平感を増長させるものに他なりません。2026年4月10日の衆議院環境委員会で環境省環境保健部長は「経済的負担の直接的な軽減を目的とした給付を対象」にしている一方で、上記の給付は「お見舞い金」である性格を踏まえて、ただちに給付水準を改訂する予定はないとの答弁をしました。しかし石綿健康被害救済法の逐条解説には、特別遺族弔慰金について「含まれ得る要素としては、例えば、被害者本人又はその遺族が負担したと考えられる医療費や療養に係る諸経費を勘案している」と記載されています。免疫チェックポイント阻害薬の登場で患者の予後にも変化が生じています。同部長は、「今後も制度をとりまく状況の変化を注視」するとの見解を示されましたが、仮に環境省の主張を前提とした場合、どのような状況の変化が生じた場合に見直しするのか明確にしてください。「社会の連帯共助の精神に基づき」給付されている犯罪被害者給付金制度は2025年に最低額が320万円から1060万円に引き上げられています。
②2023年6月に取りまとめられた「石綿健康被害救済制度の施行状況及び今後の方向性について」(以下、小委員会報告)では、今後も「必要な調査を実施」し、制度をとりまく状況を注視する旨の記載がされています。この点、2023年6月27日の石綿健康被害救済小委員会において浅野直人委員長は「何が必要かということはその都度その都度出てくる」、「何が必要な調査であるかということについては、相当幅広に考えることができる」と発言しています。療養手当の見直しは本質的に制度の運営の根幹であるにもかかわらず、小委員会も開かれていません。小委員会での議論を速やかに開始し、「特別遺族弔慰金」と「救済給付調整金」の給付額見直しを早急に判断した上で、療養手当を含む給付額の抜本的見直し、居住地などに考慮した交通費などの支給、遺族給付の創設を検討してください。加えて、救済給付調整金の算定に医療費を含むことの運用をやめてください。さらに、労災認定等ののち、当該被災者の療養中の休業補償が時効等で支給されない場合に救済給付調整金や特別遺族弔慰金の返還を求めないでください。
③石綿健康被害救済基金は特定の4社に限定し、わずかに上乗せの拠出をさせています。これら以外にも、民事訴訟でアスベスト健康被害発生の責任が認定されている会社が多数出ています。拠出のあり方について見直すとともに、現行の4社および追加の拠出を求めるべき企業を石綿健康被害救済小委員会等で速やかに再選定し、「治療研究推進」と②で記載した新規給付のための財源をつくってください。
2 「中皮腫を治せる病気にする」ことを含めたアスベスト疾患の治療・研究開発の促進(環境省、厚労省)
「中皮腫を治せる病気にする」ための国の研究支援が不十分です。その他のアスベスト疾患も抜本的に治療研究の支援を見直す必要があります。国の支援の乏しさが治療の選択肢の乏しさにつながっています。環境省が管理している石綿健康被害救済基金においては約750億円の残高があるにもかかわらず、その一部を治療研究の支援に一切活用していません。
厚生労働省では労災疾病臨床研究事業費補助金の予算を増額し、年間で約1億円の研究支援にあてていますが、「中皮腫を治せる病気にする」ためにはまだまだ程遠い支援額です。国の責任が認められた、あるいは一定の責任を認めた肝炎やエイズ等の薬害事件の関係ではそれぞれ30億円以上の予算があてられています。
①厚生労働省と環境省は中皮腫をはじめとしたアスベスト疾患を治せる病気にするための治療戦略目標を打ち立ててください。5月20日には、具体的な回答が全くなく、厚労省からは環境省と連携して再回答する旨の回答がありました。再回答してください。その際、いつまでに中皮腫を治せる病気にするのか目標を示してください。
②5月20日の回答に係る要望書に記載した「石綿健康被害救済基金の一部を治療研究の支援へ活用」に加えて、以下のようなアカデミアや製薬企業等を支援するための政策を進めてください。
ア.中皮腫研究・開発税額控除制度を創設し、研究開発費の30パーセント程度について、現行の試験研究費税制とは別枠で直接法人税額から控除できる仕組みを整備
イ.中皮腫治療薬等の研究開発について、開発の各段階に応じた公的支援を拡充するとともに、開発失敗リスクに対応した損失補填制度を整備
ウ.中皮腫の診療・治療経験が豊富な医療機関に対し、医師主導治験におけるデータ管理、統計解析、薬事・PMDA対応等を担う専門人材の確保に係る費用を支援
エ.中皮腫治療薬について、企業が意欲的に研究開発に取り組めるよう、薬価を十分に評価するとともに、後から対象疾病が拡大した場合であっても、市場拡大再算定等の適用を柔軟に見直すなど、研究開発投資を継続的に回収可能な薬価制度を整備
オ.欧米等で承認済みの革新的な中皮腫治療薬・治療機器について、海外臨床試験データを最大限活用し、市販後調査等を前提として、国内承認を迅速化する特例措置を整備
③現在、中皮腫に関する症例データは各医療機関で分散しており、全国的に統一されたレジストリとしては十分に機能しているとは言えない状況です。患者の利益につながるよう、医療関係者がリアルワールドデータにもとづいた治療選択を提示できる環境をつくってください。また、現状の治療法開発には臨床試験に使用可能なレジストリと、そのもととなるリアルワールドデータの利用が必須です。今後の中皮腫登録は上記治療法開発研究に利用可能となるよう、治療法開発研究を行っているアカデミアの意見を取り入れて、PMDAとも連携し治療法開発研究に資する登録の在り方やレジストリ構築へと改善してください。
3 石綿ばく露者の健康管理の体制構築(環境省、厚労省)
アスベストはあらゆる職業、地域で使用されてきました。しかし、石綿ばく露者の健康管理に関しては、厚労省の石綿健康管理手帳は一部の元労働者を対象としたものであり、環境省は「石綿読影の制度に係る調査」においてきわめて限定的な自治体を対象とした時限的な調査事業しか実施していません。これらにおいては建設業等における自営業者・一人親方等は必ずしも対象となりません。また建物などからの環境経由の石綿ばく露者も対象となっていません。直近では、能登半島地震に関連して被災地でアスベストが露出した環境でのボランティア作業などが確認され、健康不安が生じています。2025年12月には仙台労働基準監督署が、元化粧品販売員の業務上での石綿ばく露と中皮腫発症との関連性を認めて労災認定しています。
①2026年4月10日付で当会から厚労省等に提出した化粧品由来のアスベストばく露に関する要望書における「1.化粧品業界におけるアスベスト含有実態の網羅的調査と結果の公表」と「2.化粧品販売員および消費者に対する周知とリスク評価、健康管理体制の整備」の要望について回答してください。健康管理については建設業等の自営業者や震災ボランティア、幼少時のベビーパウダーの使用や学校内での石綿ばく露等の問題、石綿読影の精度に係る調査の実施自治体が全自治体の2パーセント以下(全人口の10パーセント以下のカバー率)であることも踏まえて回答してください。
②現行の平成18年通知「タルクの品質管理について」に定められた普及型X線回折法は、検出限界が概ねトレモライト0.5重量%、クリソタイル0.8重量%とされており、現在の0.1%基準に照らすと、微量のアスベストを見落とすおそれがあります。したがって、FDAで検討されている手法や国際的な分析実務も踏まえ、分析マニュアルを抜本的に見直してください。具体的には、X線回折法のみに依存するのではなく、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)等により繊維形態を確認できる高感度な分析法を検査プロセスに導入し、アスベストの検出精度を高める体制を整備してください。また、ベビーパウダーに限らず、医薬品、医薬部外品、化粧品等に使用されるすべての原料タルクについて、市場流通前の段階で高精度なスクリーニングと監視を徹底してください。
③5月20日に厚労省からはこれまでの安全確保の徹底を求めてきた対応を引き続きしていく旨の回答がありました。上記要望について検討しない場合は、昭和62年通知(「ベビーパウダーの品質確保について」)と平成18年通知(「タルクの品質管理」について)の順守で各種製品等へのアスベスト混入が防げていたことを明言してください。
④中皮腫患者の中には労働等を通じて明確にアスベストばく露の確認ができない被災者がいます。一般環境経由のタルクやベビーパウダー経由のアスベスト被害の認識について説明してください。
4 すき間のない補償・救済をはかるための取り組み(環境省、厚労省)
石綿健康被害者は労災制度や救済制度で補償・救済が図られていますが、「すき間のない救済」を徹底するために以下の事項について迅速にご対応ください。
①石綿健康被害救済制度に関連して医療機関に申請予定者ないしは認定者が依頼する文書料等について救済給付から支給してください。労災保険制度では、石綿疾患療養管理料(225点)、石綿関連疾患労災請求指導料(450点)などの診療点数が設定されています。
②石綿健康被害救済制度における肺がんの認定者は中皮腫の1に対して0.15です(労災は0.73)。石綿健康被害救済基金の残高が積み上がっている原因にもなっています。判定基準が労災制度に対して厳格で、申請・認定が進んでいません。びまん性胸膜肥厚や石綿肺と同様に、肺がんの判定基準に「石綿ばく露歴」を取り入れ、労災相当の基準としてください。5月20日には、「石綿救済制度は労災と異なりばく露歴の確認が困難なケースが多く精査ができない」旨の回答がありましたが、労災では本人(ないしは遺族)の証言を基礎に、同僚等の証言が得られない場合でも基労補発第0727001号平成17年7月27日付け「石綿による疾病に係る事務処理の迅速化等について」において指示されている裏付け資料等で石綿ばく露を判断しています。この判断を準用して石綿ばく露の考え方を取り入れてください。準用できない場合はその理由を明確に示してください。明らかな石綿ばく露のある建設労働者等が救済されません。
③国際がん研究機関(IARC)をはじめ、国際機関において卵巣がん、喉頭がんとアスベストばく露の関連性が指摘されています。2026年5月20日には、環境省と厚労省の双方から収集した知見等について共有・連携をとっていく旨の回答がありました。その後、どのような作業を実施したのか教えてください。
④中皮腫は、腫瘍そのものによる全身症状に加え、抗がん剤治療、免疫療法、放射線治療等に伴う副作用を生じることが多く、疼痛管理、呼吸器症状、消化器症状、感染症、精神症状等への対応のため、複数診療科(歯科、リウマチ科等)の受診が不可欠となる場合が少なくありません。しかし現状では、主治医が中皮腫治療と関連して受診を指示した他科受診の治療費について、他院受診ばかりでなく、主治医が所属する当該病院であるにもかかわらず石綿手帳の利用を拒否して自己負担を徴収する事案の相談が寄せられています。環境省、厚生労働省は、そうした事態に遭って困っている患者や家族自身に解決を委ねるだけでは、極めて不十分ですので、さらに改善するための具体的対策を示してください。また、千葉労災病院では「HbA1c」の検査について、検査の実施背景を一切考慮せずに費用を患者に保険負担させています。千葉労働局も「病院の判断」を理由に一切の指導をしません。厚労省と環境省は指導をしてください。5月20日に厚労省は千葉労働局へ状況を確認すると回答されました。確認後の指導状況について教えてください。同じく、5月20日に環境省は、環境再生機構から周知を行っていると回答されました。具体的な周知の内容を教えてください。
⑤建設アスベスト給付金制度において、申請から2年や3年以上も審査がされずに放置されている異常な事態が続いています。その間に病状が進行するなど、被害者に深刻な不利益が生じています。過度な立証を求めずに、提出資料から一定の合理性が判断できるのであれば速やかに認定するなど、審査の長期化を解消してください。私たちに寄せられる相談では、担当者に連絡をしても審査にかけない具体的な説明がなく困惑しているという相談が多数あります。労災や石綿救済制度に準じて、申請ごとの処理期間等を記録して公開してください。現在の状態は行政手続法第6条(「申請に対し、相当の期間内に処分をしなければならない」)および9条(「行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない」)、独立行政法人通則法第30条等を踏まえ、労災保険制度や石綿健康被害救済制度における環境再生保全機構の対応に準じ、申請ごとの処理期間(受付から決定までに要した日数)を厳格に記録・管理し、その平均処理期間や進捗状況を速やかに一般に公開してください。できない場合は、これらができない理由を説明してください。申請者から審査議事録の開示請求があった場合は石綿健康被害救済制度の判定のように議論の内容を具体的に記録したものを開示してください。
⑥建設アスベスト給付金制度に関連して情報提供サービスの提供が請求から3ヶ月以上しても何の回答もありません。担当者に問い合わせをしても理由の説明がありません。昨年、「丁寧な対応に努める」旨の回答がありましたが、回答内容と実態が乖離しています。また、労災認定事案について事業主や関係会社の不合理な主張をそのまま採用して「提供する情報なし」とする対応があります。被災者の職種などを考慮し、必要な場合は原処分庁の認識を確認するなどして柔軟に対応してください。労働者期間の問題で労災が不認定とされた事案も、自営業期間等に石綿ばく露が認められる事案は原処分庁の認識を確認して情報提供サービスで適切に情報を提供してください。5月20日には、「検討を要するものに相当の時間がかかるものがある」旨の回答がありました。一般的にどのような場合にそのような事案が発生するのか例示してください。
<事例1>
当該被災者は労働者として内装作業に従事。労働者期間はばく露が認められて業務上認定されたものの、自営業期間は元請業者の「アスベストはない」との主張が記録され、労災記録上もばく露なしとされた。労災請求段階から自営業期間も屋内作業での石綿ばく露の主張をしていた。
<事例2>
当該被災者は現場監督として建設現場や橋梁工事などに関わっていた。しかし、「申請者の石綿ばく露作業は、施工管理時の耐火被覆工事中の階の通過」を理由に提供情報なしとされた。被災者の主張でも、原処分庁の決定でもこのような一時的なばく露とは認識していない。
⑦建設アスベスト給付金制度において、実際に請求した請求区分では不認定でも、それ以外の区分で認定条件を満たす場合には、再請求させずに当初の請求で認定決定するべきです。例えば、請求区分「③石綿肺管理3合併症なし」で請求した場合でも、管理3ではないが「①石綿肺管理2合併症なし」には該当する場合は、区分①で決定してください。また、請求区分「⑦肺がんを原因として死亡」で請求した場合でも、肺がんを原因として死亡したものではないが、区分「⑤肺がん」に該当する場合には、区分⑤で決定してください。
また、上記のような当初の請求区分には該当しないものの、それ以外の認定区分には該当する事例は多数あり得えます。本来、いずれかの認定区分で認定するべき請求事例が、単に請求区分が違うからという理由で認定されない事態が生じていますが、それは問題ないのか明らかにしてください。
5月20日の回答で、建設アスベスト給付金の請求書「3.請求に関する情報」に「該当する番号を1つ記載」と様式で定めているので、請求区分は一つしか記載できないとの回答でした。しかしながら以前の請求書の様式では「該当するものを記載」とだけ書いてあり、「1つ」とは限定していません。そもそも建設アスベスト給付金制度の本来の趣旨は、請求区分を1つに絞って請求させることを絶対とするものではないと考えられます。複数の請求区分で請求されたとしても、該当する認定区分(1つ)で認定すれば良いだけの話なので、上記の問題を解消するためにも、複数の請求区分による請求を認めるべきです。
5 地方公務員災害補償基金の審査業務見直し(総務省)
地方公務員災害補償基金は地方公務員を対象として業務上(公務上)災害に罹患した方の災害補償の審査業務を担っています。アスベスト関連疾患を問わず、ひろく問題が指摘されていますが、下記の事項について見直し等を要望します。
①審査業務を厚生労働省(労働基準監督署)に委託してください。現在、アスベスト疾患においては一人の医師だけで、年に4回の審査しかしていません。そのため、申請から決定までに労災保険制度と比較して非常に長期の時間を要しています。また、審査が一人の医師に委ねられており、これまでの審査事案からも独善的な判断が散見されます。平成21年6月1日地基補第161号「石綿による疾病の公務災害の認定について」において労働者災害補償保険制度における「石綿による疾病の認定基準について」(平成 24 年3月 29 日基発 0329 第2号。以下「石綿労災基準」という。) に準じて判断をするとされているにも関わらず、勝手な解釈を用いて労災認定基準から逸脱した判断をしています。令和7年5月27日に判決が言い渡された公務外判断をされた中皮腫遺族がその取り消しを求めた裁判において、東京高裁は「被控訴人の専門医が、中皮腫が最初の石綿のばく露から発症までの潜伏期間が相当長期間になるものであるにもかかわらず、被災者が県職員として勤務を開始した昭和48年4月から同人が中皮腫と確定診断された昭和62年3月までの期間がおよそ14年にとどまっており、非常に短いことを指摘し、これを主たる根拠の一つとして、被災者の中皮腫の公務起因性を否定する意見を述べているが、(中略)裁判所が疾病と公務との間の相当因果関係を判断するに際しても参考にすべきものと解される石綿労災基準では、中皮腫について、石綿ばく露作業の従事期間1年以上等の条件を満たせば、最初の石綿ばく露作業を開始したときから10年未満で発症したものを除いて業務上の疾病と取り扱うものとしていることを踏まえれば、被災者について最初の石綿のばく露から中皮腫発症までの期間が比較的短いこと及び上記専門医の意見は、上記イの認定判断を左右するに足りない」と判示しました。地方公務員災害補償基金は上告せず、判決を受け入れています。同じアスベスト被害者であるにも関わらず、このような審査体制の問題から公平な対応がされない事態は極めて深刻です。中皮腫の請求件数で言えばこれまでの201件の請求に対して認定が104件で約52パーセントの認定率しかありません。労災では約93パーセントと比べると明らかに低いです。また、腹膜中皮腫は高濃度ばく露でないと発症しない等の労災の審査において用いられていない勝手な解釈を用いて審査を歪めています。医学的根拠をもとに、その理由を説明してください。中皮腫について言えば、ばく露の評価そのものを審査医の勝手な判断に委ねていることに問題があります。石綿肺などでは、都道府県労働局が決定した管理区分決定などを無視してその判断を否定するなどの決定があります。地方公務員災害補償法を改正して審査業務を厚生労働省へ委託してください。
②少なくともアスベスト疾患に係る公務外決定された事案では、審査請求においては都道府県支部審査会において原処分の判断を異なる視点で審査する医師が全くおらず、再審査請求においても原処分に関わった同じ医師が判断をします。すなわち、申し立て手続きが有名無実化していて全く意味がありません。過去10年において、アスベスト疾患事案において審査請求及び再審査請求で原処分が取り消された件数を明らかにするとともに、審査請求及び再審査請求業務も厚生労働省へ委託してください。
③北海道労働局で、石綿ばく露によるじん肺管理区分4の認定を受けた者が公務災害申請を行ったところ、石綿関連疾患性自体を否定され、公務外処分とされた事案があります。しかし、厚生労働省「石綿による疾病の認定基準について」では、「じん肺管理区分が管理4に該当する石綿肺」は「労働基準法施行規則別表第1の2第5号に該当する業務上の疾病として取り扱うこと」と明記されています。また、地方公務員災害補償基金通知「石綿による疾病の公務災害の認定について」においても、公務上外の判断は労災認定基準に準じて行うこととされています。これらを踏まえれば、管理4の石綿肺事案について、石綿関連疾患性そのものを否定できる法令上、通達上又は医学上の根拠がどこにあるのか明らかにしてください。また、厚労省通達では、中皮腫について、「石綿肺の所見が得られていること」又は「石綿ばく露作業の従事期間が1年以上あること」のいずれかに該当する場合には、胸膜、腹膜、心膜又は精巣鞘膜の中皮腫を業務上疾病として取り扱うこととされています。
しかし、腹膜中皮腫の公務上外判断において、「大量ばく露」という追加要件が求められている事案があります。厚労省通達には、腹膜中皮腫について「大量ばく露」を要件とする記載は存在しません。にもかかわらず、腹膜中皮腫についてのみ独自に「大量ばく露」要件を追加して判断しているのであれば、その法令上、通達上の根拠を明らかにしてください。特に、当該要件が厚生労働省通知、地方公務員災害補償基金通知、専門検討会報告のいずれに基づくものであるのか、具体的に示してください。
<継続要望事項>
下記の事項については今回は回答を求めませんが、重大な事案として引き続き改善等を求めます。
厚労省・環境省
・被災者の各種制度における認定・不認定に直結、ないしは間接的に直結する議題が含まれる国が主催する審議会や検討会・委員会等の各種会議(委嘱を含む)に、アスベスト被害者が損害賠償請求等を行った被告企業の証人、あるいは被告側の意見書作成に協力した研究者を参加させることは明らかな利益相反です。過去5年間程度を目安に、アスベスト健康被害をめぐる民事裁判に証人等で参加していないかの事実確認を徹底し、金品の授受があった場合はその事実を速やかに報告させ、公表してください。金品の受領以降の審査等において申請者等に不利益があった事案について再審査してください。
総務省
・総務省は統計法を改正して、人口動態調査における「死亡小票」を石綿健康被害の救済に活用できるようにしてください。
厚労省・環境省
・公務災害では中皮腫のセカンドオピニオンの費用を支給しています。労災と石綿救済制度でも中皮腫の特殊性に鑑み、セカンドオピニオンの費用を支給してください。