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アスベスト粉じんによる中皮腫や肺がんから子供たちを守ろう!近隣の改修・解体工事に注意!

更新日:2023年7月12日

公開日:2023年5月15日

執筆・建築物石綿含有建材調査者 永倉冬史
(中皮腫・じん肺・アスベストセンター事務局長)

身近な日常生活の中で、思わぬところでアスベスト粉じんを吸い込んでしまう(ばく露といいます。)危険性がひそんでいます。アスベストを含む建材は今でも建物の中に普通に大量に残っているからです。アスベスト粉じんばく露による疾患は、長い潜伏期間のあとに発症することが知られています。したがって、子供たちや若い人たちのばく露には特に注意しなければなりません。

子供たちが長い時間を過ごす幼稚園、保育園、学校にもいまだにアスベスト建材が残っている場合があります。粉じんになりやすい吹付けアスベストは、学校施設などからおおむね撤去されたとされていますが、実際にはまだまだ天井裏に残っていたり、薬剤で粉じんになりにくいように固められていても時とともに劣化し粉じんが発生していたりするケースがあります。

また、粉じんが発生しにくいとされている、アスベスト含有建材にしても、割れたり欠けたり表面が劣化して、アスベスト粉じんが発生している場合もあります。これらは目で確認することが困難なため、放置されているケースもあります。

日常の生活の中でアスベスト粉じんにばく露しやすい場面としては、幼稚園、保育園、学校などの改修工事や解体工事、駅前などで実施されている大規模地域開発事業に伴う解体工事、近所のアパート・マンションの解体工事、職場の改修工事など、さらに地震や台風など災害の際のがれき撤去作業、がれき集積所の周辺などがあげられます。

本来これらのような場合、アスベスト粉じんを発生させないような対策を採る必要がありますが、さまざまな原因でおろそかになり、結果としてアスベスト粉じんを発生させてしまいます。

このさまざまな原因とは、事前のアスベスト調査が不十分なまま工事が始まったり、アスベスト建材の除去計画が不十分であったり、そもそも解体費用をかけないようにするために意図的にアスベスト除去をやったように見せかける、もしくはアスベスト建材はないことにするなどさまざまです。これらの原因を取り除くためには工事現場内の第三者による確認が必要です。工事現場内で発生したアスベスト粉じんは、やすやすと周囲のパネルを超えて周辺に及びます。目に見えず臭いもない発がん物質が、工事現場の周囲の道路や隣の住宅などに忍び寄る危険性があります。

工事現場は高いパネルで囲われ、中でどんな工事が行われているか知ることは困難です。唯一、法的な権限を持ち工事現場内に立ち入り調査ができるのは、行政の担当職員、市役所や区役所などの環境課などの職員です。中をうかがい知ることができない周辺の住民は、役所の環境関連課に連絡して、アスベスト対策が十分に実施されているかどうかを確認しましょう。

すべての解体工事現場は、事前のアスベスト調査を行い、その結果を住民が見やすいところに掲示しなければなりません。ですから、すでに始まっている解体工事現場で、このアスベストの事前調査に基づく掲示が出ていなければ違法工事となります。

事前調査した結果、アスベスト建材がなかった場合でも、なかったことを掲示する義務が生じます。掲示板は「特定粉じん排出等作業に係る掲示」や、「建築物等の解体等の作業に関するお知らせ」、「調査結果の概要(部分と石綿含有建材(特定建築材料)の種類、判断根拠)」などの名称で、工事現場の出入り口周辺に貼り付けられています。確認してください。

アスベスト
築地市場の解体工事ではそれに伴う掲示と第三者による完了検査が適切に実施された。

さらに、解体工事の際には工事業者が周辺の住民に対して工事説明会を開くことがあります。説明会を開催することは義務化されていませんが、この説明会で実際の事業者に説明させることで、事業者のアスベスト対策に関する認識の深さを見ることができます。したがって、この工事説明会は大変重要です。近隣で解体工事が計画されている場合、地元の行政にはたらきかけ、出来れば行政の参加もお願いして工事説明会の開催を要請してください。

事前の工事説明会で、

・アスベスト建材がどこにどれだけあるか

⇒事前のアスベスト調査(分析調査に基づく調査表)の確認。

・アスベスト建材除去計画

⇒「施工計画書」に記載された内容を確認する。

などについて、事業者に説明してもらいましょう。具体的な内容によっては、専門的なものも含まれ、その場ですぐには理解できない場合もあります。また、工事の説明が納得できず工事のあり方に疑問が生じた場合、詳しい第三者に判断してもらう必要があります。詳しい第三者として、「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」(アスベストセンター)にご連絡をいただければできる限り対応したいと思います。遠方で、説明会への参加などの直接の対応が難しい場合でも、資料を送付してもらうことで確認することも可能です。

工事説明会での要望により、より安全なアスベスト除去が実現した事例

某東京都立高校で解体工事が計画され、周辺住民への工事説明会が開催されました。住民からアスベスト対策についてご相談があり、アスベストセンターが住民のオブザーバーとして工事説明会に参加しました。説明会では、工事業者から事前の調査に基づくアスベスト含有建材の目録の説明がありましたが、アスベストセンターの質問で、いくつかの建材の分析調査が実施されていないことが判明し調査が不十分であると判断されました。これを受けて、工事発注者である東京都は建材調査をあらためて実施し、より完全な調査に基づく工事計画を作成しなおし、工事説明会をやり直しました。このケースでは、都は周辺住民の要望を受け入れ、行政による工事現場の立ち入り調査にアスベストセンターの同行も認め、第三者によるアスベスト建材除去後の確認も実施しました。

これも都内の事例ですが、ある区立保育園ですぐ隣の大規模な公会堂施設の解体が計画され、アスベストセンターに保育園の保護者から依頼があり、工事説明会に参加しました。工事説明会では、アスベストセンターの質問に事業者はアスベスト含有建材はないと答え、施設の建設年代から考えてありえない回答だとして、説明会は紛糾しました。その後隣接する保育園が区立だということもあり、当該の区の環境政策を所管する課が、第三者として東京労働安全衛生センター(東京センター)にアスベストの事前調査と工事中の保育園での粉じん濃度管理を委託し、より安全な工事が実施されるに至りました。この東京センターによるアスベスト調査では、見逃されていた吹付けアスベストや過去の除去工事の取り残しなども確認され、第三者調査が実施されていなければ相当な量のアスベスト粉じん飛散が発生したと考えられます。

これらの事例のように、できる限り工事が始まる前の段階で、工事業者や発注者とコミュニケーションをとり安全な工事を実施させることが重要です。また、その際重要なことは地元の行政の担当者にできる限り参加してもらうことです。特に公共事業の解体工事では、発注者としての行政担当者もコミュニケーションに参加してもらいましょう。このようなコミュニケーションをリスクコミュニケーションと呼び、アスベスト飛散防止に有効とされています。ぜひ皆さんも近隣の解体工事や子供たちの通う幼稚園、保育園、学校施設の改修工事や解体工事の際には工事説明会に参加し、アスベスト飛散防止の工事を実現してアスベスト被害を無くしましょう。

参考:事前調査と掲示の根拠法令

事前調査の法令根拠は、石綿障害予防規則第3条(労働安全衛生法の中の規則)と、大気汚染防止法第18条の15第1項になります。

石綿障害予防規則 

(事前調査)

第三条 事業者は、次に掲げる作業を行うときは、石綿等による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、当該建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。以下同じ。)について、石綿等の使用の有無を目視、 設計図書等により調査し、その結果を記録しておかなければならない。

  一 建築物、工作物又は船舶の解体、破砕等の作業(石綿等の除去の作業を含む。以下「解体等の作業」と いう。)

  二 第十条第一項の規定による石綿等の封じ込め又は囲い込みの作業

2 事業者は、前項の調査を行ったにもかかわらず、当該建築物、工作物又は船舶について石綿等の使用の有 無が明らかとならなかったときは、石綿等の使用の有無を分析により調査し、その結果を記録しておかなけ ればならない。ただし、当該建築物、工作物又は船舶について石綿等が吹き付けられていないことが明らかである場合において、事業者が、当該建築物、工作物又は船舶について石綿等が使用されているものとみなして労働安全衛生法(以下「法」という。)及びこれに基づく命令に規定する措置を講ずるときは、この限 りでない。

3 事業者は、第一項各号に掲げる作業を行う作業場には、次の事項を、作業に従事する労働者が見やすい箇 所に掲示しなければならない。

  一 第一項の調査(前項の調査を行った場合にあっては、前二項の調査。次号において同じ。)を終了した 年月日 二 第一項の調査の方法及び結果の概要

大気汚染防止法

(解体等工事に係る調査及び説明等)

第十八条の十五 建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事(以下「解体等工事」という。)の元請業者(発注者(解体等工事の注文者で、他の者から請け負つた解体等工事の注文者以外のものをいう。以下同じ。)から直接解体等工事を請け負つた者をいう。以下同じ。)は、当該解体等工事が特定工事に該当するか否かについて、設計図書その他の書面による調査、特定建築材料の有無の目視による調査その他の環境省令で定める方法による調査を行うとともに、環境省令で定めるところにより、当該解体等工事の発注者に対し、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。

また、その結果を住民が見やすいところに掲示する法令根拠は、改正大気汚染防止法第18条の155項、改正大気汚染防止法施行規則第16条の10になります。

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