お知らせ

お知らせ

【最新治療への考え方】悪性胸膜中皮腫に対するオプジーボ(一般名:ニボルマブ)とヤーボイ(一般名:イピリムマブ)の併用療法と副作用

更新日:2023年5月18日
公開日:2023年5月15日

監修者:後藤悌(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科外来医長)

悪性胸膜中皮腫では、2021527日に厚生労働省がオプジーボ(一般名:ニボルマブ)とヤーボイ(一般名:イピリムマブ)の併用療法が承認され、これが化学療法における最新の治療法として広く実施されています。

一方で、2023年4月28日に国立研究開発法人国立がん研究センター日本臨床腫瘍研究グループが「非小細胞肺がんを対象としたニボルマブ+イピリムマブ併用療法の多施設共同臨床試験に係る現状と重要な注意事項について」を発表しました。

私どもも「【重要な注意事項:中皮腫・肺がん関連】オプジーボ(ニボルマブ)とヤーボイ(イピリムマブ)の併用療法の治療歴のある非小細胞肺がんに発生した副作用情報」において注意喚起をしています。今般の状況を踏まえ、中皮腫治療にあたっている経験豊富な医療者の考え方をお示し致します。

なお、記載の内容は公開日ないしは更新日時点の医師個人の考え方であり、今後の治療方針については主治医を含め、経験豊富な医療者との相談の上で検討していただくようお願いします。

胸膜中皮腫の最新治療への考え方:国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科外来医長 後藤悌 医師

執筆 後藤悌(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科外来医長)

ニボルマブ+イピリムマブは有効な治療である一方で、有害事象が懸念されます。

非上皮型では化学療法群の成績が著しく不良であるために、有害事象を配慮したとしてもイピリムマブ+ニボルマブが第一選択です。

一方で、治験(注)の成績では上皮型ではニボルマブ+イピリムマブとシスプラチン+ペメトレキセド(総称名:アリムタ)では大きな差がありません。

さらに、日本ではシスプラチン+ペメトレキセドが終わった後にニボルマブが投与できるために、治験(無作為化フェーズ3試験CheckMate-743試験)よりも良い成績が期待できます。治験では、化学療法群の20%しか化学療法後に免疫療法を受けていません。

イピリムマブ+ニボルマブは副作用、シスプラチン+ペメトレキセド⇒ニボルマブはデータ不足が懸念事項です。

参考情報としてですが、他のがんでも、ニボルマブ単剤治療後のニボルマブ+イピリムマブの有効性(副作用の影響含む)は示されていません。

胸膜中皮腫の最新治療への考え方:岡山労災病院呼吸器内科部長・腫瘍内科部長 藤本伸一 医師

執筆 藤本伸一(岡山労災病院呼吸器内科部長・腫瘍内科部長)

このたび、非小細胞肺癌に対し化学療法とイピリムマブ、ニボルマブを併用した患者さんにおいて有害事象によると思われる死亡例が報告されています。
非小細胞肺癌においては、治療成績がそれほど大差ない複数の治療選択肢がありますので、あえて「化学療法とイピリムマブ、ニボルマブの併用療法」が選択される例は今後限られてくると思われます。
胸膜中皮腫の治療における「イピリムマブ、ニボルマブ併用療法」の位置づけが現段階で大きく変わるものとは考えておりませんが、「イピリムマブ、ニボルマブ併用療法」においても様々な有害事象が生じることは事実ですので、今後も最新の情報に基づいた治療を心がけていきたいと思います。

胸膜中皮腫の最新治療への考え方:広島大学腫瘍外科診療科長 岡田守人 医師

執筆 岡田守人(広島大学腫瘍外科診療科長)

非小細胞肺がんにおけるイピリムマブ(抗CTLA-4抗体)+ ニボルマブ(抗PD-1抗体)(イピニボ)の臨床試験が副作用の懸念により中止されました。

イピニボが非小細胞肺がんにおいて副作用の懸念により中止されたという情報は、中皮腫の患者さんに直接的な影響を与えるわけではありません。しかし、この情報を受けて、中皮腫の治療において同様の治療法を検討している場合、副作用のリスクを充分に理解する必要があります。

中皮腫の治療における最善のアプローチは、個々の患者さんの状態や医師の判断に基づきます。医師との相談を通じて、利益とリスクを考慮し、最適な治療戦略を選択することが重要です。

胸膜中皮腫の最新治療への考え方:国際医療福祉大学成田病院呼吸器内科 多田裕司 医師

執筆 多田裕司(国際医療福祉大学成田病院呼吸器内科)

肺がんの臨床試験において、イピリムマブとニボルマブの併用群で重大な有害事象が発生したことを受け、中皮腫も含めて同レジメンを使用する他のがん腫においても注意喚起がなされています。

悪性中皮腫においては肉腫型・二相型(特に肉腫成分の多い)では、通常の抗がん剤が奏効しないこともあり、肺がんに準じてこのレジメンを自粛するのは難しいと思います。

一方で上皮型中皮腫では、現行の標準治療のプラチナ+ペメトレキセドと、セカンドラインとしてのニボルマブである程度の効果が得られるため、免疫チェックポイント阻害剤の併用が不可欠という状況ではないようにも考えられます。肺がんと中皮腫では患者さんの背景が異なりますので一概に言えませんが、学会等で国内での方針がある程度、決まるまでの間、同レジメンを施行中の方は主治医がよりいっそう注意を払って治療に当たることが必要と考えています。

胸膜中皮腫の最新治療への考え方:兵庫医科大学病院呼吸器内科診療部長 木島貴志 医師

執筆 木島貴志(兵庫医科大学病院呼吸器内科診療部長)

非上皮型症例においては、イピリムマブ+ニボルマブ併用療法は生命線となります。

非小細胞肺癌と悪性胸膜中皮腫では疾患自体が異なることや、そもそも悪性胸膜中皮腫ではプラチナ+ペメトレキセドとの併用をしているわけではないため、肺癌で起こったことが中皮腫でも同じような頻度や重篤化で起こるとは限りません。もちろん安全性に関しては、現在非小細胞肺癌を対象に行われているLIGHT-NING試験のように実臨床におけるデータを蓄積することは重要ですが、これまでの当施設の経験では、有害事象について慎重にフォローしながら投与を行えば、9LAレジメンほどは重篤な副作用は出ていないと理解しています。

胸膜中皮腫の最新治療への考え方:国立病院機構北海道がんセンター副院長・呼吸器内科 大泉聡史 医師

執筆 大泉聡史(国立病院機構北海道がんセンター副院長・呼吸器内科)

JCOG2007試験の化学療法/ニボルマブ/イピリムマブ療法を受けた集団において、副作用による死亡例が多く、研究が中止になったことが先日発表されました。

これを受けて、我々呼吸器腫瘍の治療を担当している医師は、ニボルマブ/イピリムマブを始めとした免疫チェックポイント阻害剤の併用療法について、これまで以上に安全性によく留意する必要があります。

ただし進行期非小細胞肺癌とは違って、治療選択肢が決して多くはない悪性胸膜中皮腫では、ニボルマブ/イピリムマブ療法はやはり重要な治療法と考えています。ご担当の先生方は、今回のJCOG2007試験の中止も含めた最新情報はもちろんのこと、いつも患者さんのご状態や併存症などについてよく把握されていらっしゃいます。ニボルマブ/イピリムマブ療法の適応(現在すでに治療中の患者さんはその継続)について、担当医やメディカルスタッフとよくご相談されることをお勧めいたします。

24時間365日受付

中皮腫・アスベスト被害全国無料相談

当サイトへのご相談・お問い合わせはこちらからご連絡ください。

中皮腫・アスベスト被害全国無料相談

0120-117-554

24時間365日受付