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【労災・給付金の可能性】中皮腫・肺がんなどのアスベスト被害が松竹芸能を含む俳優・劇団・芸能・舞台関係者にも発生

公開日:2023年4月30日

執筆者:事務局 澤田慎一郎

これまで、中皮腫・肺がんなどのアスベスト被害が俳優・芸能・舞台関係者に発生しています。俳優・芸能・舞台関係者の中には、労災保険制度や建設アスベスト給付金制度で認定される可能性のある方がいます。2023年4月28日に毎日新聞社が劇団関係者として発生した被害における5例目の労災認定を報じました。当該の被害者は大手芸能プロダクション「松竹芸能」に勤務し、各種制作業務に従事し、退職後の2021年に中皮腫を発症。道具・照明などの舞台設営に関係する作業に関連して石綿にばく露したとされています。

この認定に先立つ4例についてはすべて当会が関与したものでした。私たちの取り組みが新たな被害発生の救済につながったと考えます。労災認定はもちろん、建設アスベスト給付金の対象となる可能性もあることから、以下の事例を参考に、これら職業歴のある方で中皮腫や肺がんなどを発症された方は請求を検討してください。

俳優・劇団・芸能・舞台関係者の全国初となったアスベスト肺がん発生事例

2020年7月にアスベスト肺がんの患者として初めて認定された被災者の男性Aさんは、東京都内に在住の78歳(当時)の男性。1960年代から2018年まで劇団に所属していましたが、退団する少し前の2016年2月に肺腺がんを発症しました。劇団に所属して俳優として活動していた当時、公演でまわった現場はほぼ全て学校でした。劇団内で班編成をおこない、1班10人から25人くらいになって全国津々浦々、毎日違う場所で公演をしていました。入団から15年ほどは、学校の天井裏に上がって公演の準備段階で照明機材の吊り下げ、幕を貼るなどの作業をしていました。天井裏はホコリがすごかったことを労災請求時も記憶していました。また、自身が天井裏にのぼって作業をしなくなって以降も、天井にロープをひっかけるなどの作業をした際には、天井からホコリが落ちてくることも日常茶飯事で、必要に応じて床に落ちたホコリを取るために掃除をしたこともありました。

労災認定までの経過

2020年1月に渋谷労働基準監督署に労災請求し、同年7月に労災認定されました。認定にあたって、いくつか注目すべき点があります。

労災認定のポイント1:医学的所見

一点目は被災者の医学的所見ですが、労災局医の判断として胸膜プラーク所見とあわせて石綿肺所見が確認されたことです。ここでいう石綿肺は、アスベスト肺がんの労災認定基準に定める石綿肺所見(じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺所見)です。石綿肺は、『石綿による健康被害に係る医学的判断に関する考え方」報告書』(平成18年2月7日)で、「石綿を大量に吸入することによって発生する職業性の疾患」であるとされている。すなわち、この被災者の石綿ばく露は石綿製品製造業や建設業従事者ほど多くはなかったとみえる反面、事実として一定以上の石綿肺所見が確認されたことは、舞台設営にかかる石綿ばく露の危険性が軽視できないことを示しています。

労災認定のポイント2:石綿ばく露現場

二点目は、石綿ばく露の現場の特定が厳密に特定されず、認められている点です。すでに触れたように、被災者は全国各地の学校で公演活動をしていたが、どこの学校施設にアスベストが使用されていたという主張はしていませんし、調査結果復命書からも原処分庁が何らかの特定をした形跡はありません。原処分庁が石綿ばく露の認定にあたって、「石綿に関する健康管理等専門家会議」が作成した『石綿ばく露歴把握のための手引き』(平成18年2月24日)に、「学校などの講堂・体育館にはかつて相当数の吹き付け石綿がありました。ボールをぶつけるなどで石綿が飛散する可能性があり、施設管理者等が長期にわたりばく露した可能性があります」との記載を引用し、学校の体育館に吹き付け石綿が多用されていたことが認められているとの判断をしています。これについては2018年の劇団俳優認定事例においても同様に、具体的なばく露現場の特定はしていません。また、後述するもう一例の被災者の事例についても同様です。建設業従事者以外の被災者が、ばく露現場が具体的に特定されずに認定されるというのは、すぐに思いつくものもなく、珍しいと言えます。

労災認定のポイント3:労働者性

三点目は労働者性の問題である。周知のように建設業界や芸能業界を筆頭に、労働者性をめぐる問題は現在でも議論が尽きることはありません。労災請求にあたってAさんは、劇団とのあいだに指揮命令関係にあったことに加えて、70年代後半から給料制になったと主張しました。結果的に、劇団側がAさんの入団当時から給料制であった旨を主張したこともあり、労働者性も大きな問題とならずに認定されました。

俳優・劇団・芸能・舞台関係者の中皮腫発生事例

2020年11月に認定された被災者Bさんは、都内在住の55歳の中皮腫を発症した男性でした。

1990年から2008年3月まで東京都内の劇団に俳優として所属。入団時から俳優として、日本各地の学校、会館・センター・ホールなどの公共施設を公演でまわりました。特に若い頃は設営の関係で準備などもしており、照明器具以外の小道具(例えば、「雪」などの紙を舞台上に撒く仕掛け)を設置する際に天井にのぼりましたが、その際に石綿が吹き付けられた鉄骨などに触れることがありました。照明機材は専門の業者が「バトン」という道具を使用して設置していましたが、設置する際に天井に吹き付けられたホコリが舞台上に落ちてきていました。公演前には欠かさず、そのような作業で舞台上に落ちたホコリをはき掃除をしました。

労災認定までの経過

2020年5月に品川労働基準監督署に労災請求し、同年11月に労災認定されました(決定は池袋基準監督署)。

労災認定のポイント1:労働者性

労働者性については、請求時に次の点を主張しました。
①入団当時から、劇団から公演毎に手当が支払われていた。
②公演のキャスティング決定は希望を募った上で配役が決められ、配役の決定後に個人の都合で代役を立てるようなことはなく、することもできなかった。
③公演にあたっては、劇団内の演出家・舞台監督を務める劇団員の指示に従っていた。
④公演の時間やタイムスケジュール等も自己の判断で時間設定などは決めることもできなかった。

上記は、「労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)」(昭和60年12月19日)と「労働基準法研究会労働契約等法制部会 労働者性検討専門部会報告」(平成8年3月)に照らして要点をまとめて主張したものでした。

労災認定のポイント2:石綿ばく露現場

Bさんは中皮腫の罹患者の中では、比較的若い。劇団でのばく露がはじまった90年の少し前、1987年には大阪大学や東京大学などの学校施設に端を発して学校施設における吹き付けアスベストの問題に社会的な関心が集まった時期でした。当時の文部省は全国の公立学校等に実態調査を指示し、88年には各地の学校で除去等の工事もされるという動きがありました。しかし、国の施策が不十分であったことはBさんの発病実態からも明らかです。

文部科学大臣および文化庁長官へ要請

私たちは2020年12月16日、文部科学大臣および文化庁長官あてに「劇団関係者および学校関係者へのアスベスト健康被害の周知徹底に関する要望書」を提出しています。要請事項は次の二点でした。①各種学校に対して、本件について周知し、体育館をはじめ学校施設全体におけるアスベスト被害の危険性について改めて情報提供し、労災補償制度・公務災害補償制度をはじめとする制度枠組みに関しても周知徹底をすること。②劇団をはじめとする舞台芸術関係団体に対し、本件について周知し、学校施設における体育館はもちろん、各地舞台施設におけるアスベスト被害の危険性について改めて情報提供し、労災補償制度をはじめとする制度枠組みに関しても周知徹底をすること。

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