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中皮腫発症に伴う、就労記録や同僚証言のないアルバイトでの、 わずか2ヶ月間のアスベストばく露による労災認定

公開日:2022年12月16日

アスベスト疾患の悪性中皮腫を発症し、療養中の男性が労災を請求していた問題で、中皮腫の労災認定基準(石綿ばく露1年以上)を大きく下回る2ヶ月の石綿ばく露で認定される事案がありました。

また、本件請求においては、就労および石綿ばく露作業を客観的に裏付ける記録が全くないなかで、本人の申し立てのみで認定されました。客観的記録がなく、認定基準を大きく下回る石綿ばく露期間で認定された事例は私たちが把握している限り全国初の事案です。

石綿労災認定の概要

傷病名:悪性胸膜中皮腫

傷病発生日:2021年1月(当時77歳)

労災請求日:2021年9月(尼崎働基準監督署)

労災認定日:2022年5月

石綿ばく露歴

被災労働者は、昭和36年6月から昭和36年8月までの間、石綿鋼管の製造下請けを行う事業場に所属し、石綿等の運搬作業(大手機械メーカー株式会社Kの構内下請け会社N工業所のアルバイト社員として石綿水道管製造工場内においてベルトコンベアから地面に落ちてくる石綿を含む廃材料を一輪車で集めて廃液プールに運んで捨てるという仕事)に従事しており、当該作業において石綿ばく露がありました。

労災認定までの経過

アルバイトかつ、当時の居住地が下宿先であったことから就労を客観的に証明する記録が全く残っていませんでした。また石綿ばく露期間が極めて短かった(労災認定基準は石綿ばく露1年)ことから厚生労働省に設置されている専門家会議(石綿に係る疾病の業務上外に関する検討会)での本省協議を経て、業務上疾病として認定されました。

本省協議の判断理由

専門家会議での協議では、「提出された医証から、被災労働者に発症した疾病は悪性胸膜中皮腫と認められる。また、石灰化を伴う胸膜プラーク所見が認められるところ、被災労働者は、昭和36年6月から昭和36年8月までの間、石綿鋼管の製造下請けを行う事業場に所属し、石綿等の運搬作業に従事しており、当該作業において石綿ばく露があったと推認される。したがって、被災労働者に発症した中皮腫は、業務における石綿ばく露によるものと認められる。」と判断されました。 

本件労災認定の意義

①労災認定基準の1年を下回る、わずか「2ヶ月」での認定

これまでの労災認定事例で2ヶ月程度の石綿ばく露で認定された事例は数十件程度と思われます。

中皮腫の労災認定の基準では、「石綿ばく露作業従事期間1年以上」の定めがあります。本件被災者の石綿ばく露は2ヶ月でした。

個々の状況はもちろん違いますが、2018年4月11日には名古屋高裁で、学校教職員だった男性が中皮腫に罹患し、労災補償での支給が認められなかった事案(名古屋東労働基準監督署事案)について労災不支給とした原処分を取り消す判決がありました(のち、国は上告せず判決確定)。判決では、「わが国の中皮腫の労災認定基準において、仮に、厚生労働省との協議とするか否かを区切る基準としてばく露期間の要件を設定する必要があるとしても、それはせいぜい2、3か月程度を限度とするべきであると考えられる」との判断を示しています。すなわち、現在の認定基準が石綿ばく露1年とされていますが、司法レベルでは科学的に根拠がないこと、海外では「数週間」という基準もあることに照らして現行基準を真っ向から否定しています。今回の事例からも現行の労災認定基準の見直しを早急に図る必要があると言えます。

②客観的な就労と石綿ばく露の記録がない中での認定

労災認定される事案の多くは被保険者記録、雇用保険加入記録など公的記録などをもとに就労実態と石綿ばく露の可能性を判断します。これらの記録がない場合でも、同僚の証言等をもとに判断されることがほとんどです。

本件は幸いに、被災者本人が療養中で、具体的な就労内容に関する証言を重ねたことが労災認定につながる大きな要因になったと考えられます。

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