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中皮腫の遅延損害金の起算日に関するアスベスト裁判の札幌高裁判決確定(最高裁による上告不受理決定)

公開日:2022年11月7日

 

令和4年10月27日,最高裁判所第一小法廷が,泉南型(工場型)アスベスト国家賠償請求事件における遅延損害金の起算日を死亡時ではなく中皮腫の発症日とした二つの札幌高裁判決に対する国の上告について不受理決定を出しました。これにより,原告側勝訴の高裁判決が確定しました。
これらの事件を担当しておりましたので,ご報告させていただきます。

 

1 本アスベスト裁判(中皮腫被害)の事案

まずこれらの二つの事案についてご紹介します。

一つ目の事件(第1事件)は,自動車整備工として従事していた被災者が,自動車整備工場において,石綿含有ブレーキライニングの研磨作業等により石綿にばく露し,平成17年に腹膜中皮腫を発症し,平成19年に同疾患が原因で亡くなられた事案になります。国は被災者が石綿疾患により死亡したことについて国に賠償義務があることを認めました。しかし,原告側が賠償金の遅延損害金の起算日(いつから発生するか)が発症日であると主張していました。

二つ目の事件(第2事件)は,板金工として従事していた被災者が工場内で石綿建材を取扱ったことで石綿にばく露し,平成25年に胸膜中皮腫を発症し,平成30年に同疾患が原因で亡くなられた事案です。この件でも国は第一事件同様に自らの賠償義務を認めつつも賠償金の遅延損害金の起算日が死亡時であると主張をしていました。

いずれの事件も地裁判決,高裁判決は国の主張を退けており,それに対して国が最高裁判所に上告をしていましたが,今回最高裁において国の上告を不受理とする決定を出しました。

《第1事件経過》

令和元年10月8日 札幌地裁に提訴

令和3年5月31日 札幌地裁判決 (原告勝訴)→国,控訴

令和4年1月21日 札幌高裁判決 控訴棄却(原告勝訴)→国,上告

令和4年10月27日 最高裁(第一小法廷) 国の上告不受理決定(原告勝訴確定)

《第2事件経過》

令和2年6月22日 旭川地裁に提訴

令和3年9月21日 旭川地裁判決(原告勝訴)→国,控訴

令和4年5月13日 札幌高裁判決 控訴棄却(原告勝訴) →国,上告

令和4年10月27日 最高裁(第一小法廷) 国の上告不受理決定(原告勝訴判決確定)

 

2 本アスベスト裁判(中皮腫被害)の争点についての解説

ここでは細かい話は省略させていただきますが,遅延損害金というのは利息のようなものになります。国が支払うべき賠償金に対して法律が決めた利率で遅延損害金が発生します。このため,遅延損害金の起算日が前倒しになればそれだけ国の金額が増えるということになります。

第1事件,第2事件の場合には,国と原告の主張でそれぞれ約116万円,約389万円の差が生じていました。

 

3 本アスベスト裁判(中皮腫被害)の本件上告不受理決定の意義

国はこれまで工場型,建設型で被災者遺族と和解をする場合遅延損害金の起算日について死亡時で無ければ和解に応じてきませんでしたが,今回,起算日を発症日とした原告勝訴の判決が確定したことによって,国の和解での対応が変わることが期待されています。

また,遅延損害金の起算日の論点は,国家賠償請求訴訟だけでなく,石綿被害にかかる建設アスベスト訴訟における建材メーカーを相手にする事件や,元勤務先に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求をする事件でも同様に問題となりますので,本件高裁判決,上告不受理決定は広範囲に影響を及ぼすことになろうかと思います。

石綿被害関係事件の加害者側に紛争の早期解決の利点が一層明確になったことで他の事件の早期解決に繋がることを期待しています。

 

4 本アスベスト裁判(中皮腫被害)を踏まえて残された課題

中皮腫ではなく肺癌で死亡された方の事件で本件と同様の争点が問題となっているケースがあり,本件同様に札幌高裁で原告側勝訴の判決が言い渡されましたが,その後国が最高裁に上告をしています。当職が本寄稿文を執筆をしている時点では,まだ最高裁の最終判断は出ていません。この寄稿が掲載されたころには解決していることを祈ります。

また,札幌高裁判決の判示からは石綿肺に関しても同様の結論を導くことが出来るかについて疑義が残ることとなり,今後の課題と思われます。

 

5 最後に

今回,本件事件だけでなく,他の被災者にも有利な影響を及ぼすことになる先例を築くことが出来,とても嬉しく思っています。最高裁まで訴訟を維持することが出来たのは,被災者のご遺族が最後まで我慢強く戦い続けて下さったためです。

国の提示した内容で早期に和解をすることも出来たのですが,他の被災者のためにもと,長期化を覚悟の上で訴訟を維持し,代理人をも励まし続けて下さいました。

今回の上告不受理決定を受けて,ご遺族の一人が「お金の問題ではない。家族や本人(被災者)が最も辛い想いをした,発症から亡くなるまでの期間が無かったことにされるのがおかしいという思いでいた。この期間の自分たちの辛い想いが認められたようで良かった」等と仰っていました。

先に色々書きましたが,この一言が本件の上告不受理決定の正当性を端的に示していると思います。

また,本件決定が出るまでの間,全国の弁護団の先生方等に多くの情報提供をいただき,他の先生方が切り開かれた先行の諸判決にも大いに助けられました。この場を借りてお礼を申し上げます。

執筆・弁護士 段林 君子(桜花法律事務所/札幌弁護士会)

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