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石綿健康被害救済基金の推計における当会の見解

更新日:2022年10月6日

公開日:2022年10月4日

2022年8月26日の中央環境審議会・石綿健康被害救済基金において環境省は次のような支出額等に関する推計資料(以下、環境省推計2022)を示してきました。

私たちは次のように考えています。

・この推計は私たちが提案している石綿健康被害救済基金の治療研究への活用の議論を封殺を意図するものとして示された資料である。

・推計自体に妥当性がない。2013年に環境自身が推計をしており、現在まで基金の拠出はその推計に基本的に沿っている状況である。

・今後の議論は2013年時の推計を原則に議論すべきである。一方で、治療研究の支援のあり方は基金の残高の趨勢を注視しつつ検討することも十分可能であり、今回の資料を根拠に石綿健康被害救済基金の活用等について議論を進めるべきである。

以下に今回の推計を前提とする議論が成立しない理由を説明します。

①環境省が示した支出額の推計(環境省推計2022)

環境省の推計は、支出のピークを令和16年と推計しています(ピークがR12(2030)と仮定して試算した図も示されているが省略)。R4(2022)からピークR16(2034)まで年8%(直近5年の増加率平均)ずつ支出額が増加すると仮定、ピーク経過後は支出額が漸減し、R60(2078)にゼロとなると仮定されています。R48(2066)年度まで赤字です(ピークがR12(2030)年だとR43(2061)年度まで赤字)。

②環境省が示した基金残高の推計(環境省推計2022)

以下の図では、ピークをR16(2034)年と想定した場合にR17(2035)年度以降に基金残高がマイナスと予測されています。赤字幅が最大で約1500億円となるとされています。

なお、ピークがR12(2030)年と想定した場合は、R20(2038)年度以降残高がマイナスになり、R42(2060)年度頃が赤字幅が最大(500億円強)となるとされています。

③環境省推計2022の算定根拠

同試算で用いた、R3年度の「直近5年増減率相乗平均」は、H28年度(34.1億円)からR3年度(48.9億円)まで5年間の増加率(48.9/34.1=43.5%増加)の5乗根(相乗平均)=(48.9/34.1))^(1/5)-1=7.5%(四捨五入して8%)が推計の算定に用いられました。他の年度についても同様に「直近5年増減率相乗平均」を計算しました。

なお、後述する「環境省推計2013」時点の数字に置き換えた場合、H25年度の「直近5年増減率相乗平均」は5.8%になります。

 

①〜③は環境省が2022年8月26日に示した資料ですが、一方で、2013年にも環境省は推計をしています。環境省推計2022とは全く異なるものです

④環境省推計2013における石綿健康被害救済基金支出額と拠出額の推移(シミュレーション)

以下の図(緑文字部分は当方が追加)は、私たちが情報開示請求により取得していた、環境省が2013年時点で作成していた資料です(以下、環境省推計2013)。

環境省推計2013では、次のように試算しています。

①H25(2013)~H40(R20=2038)は支出額が40億円で一定であると想定

② H41(R21=2039)以降、支出額が漸減し、H80(R50=2068)に支出額がゼロになると想定。

 

⑤環境省推計2013における基金残高予測

環境省推計2013では、以下の図(緑文字部分は当方が追加)にあるように基金の残高予測を次のようにしていました。

① H25(2013)~H40(R20=2038)は支出額が40億円で一定であると想定。

② H41(R21=2039)以降、支出額が漸減し、H80(R50=2068)に支出額がゼロになると想定。

環境省はまず、2013年と2022年の推計が大きく異なる理由を説明すべきです。私たちは、2013年と2022年のあいだに、推計をする上での基礎的状況の変化はないと考えています。

⑥環境省推計2022の算定方法を2013年時点にあてはめた場合の試算

仮に、環境省2022年推計と同じ方法で2013年からの支出を推計すると現在の実績とは全く異なるものになることがわかります。

令和3年度の支出実績値がやや大きくなっていますが、これは新型コロナウイルス感染症拡大の影響で審査業務が停止等になった影響で令和2年度の認定実績が少なくなった反動です。現時点までの2022年度認定実績値は2021年度実績を下回っていますので、それを証明するものであり、ましてや認定者の大幅な増加傾向にあるとは言えません。なお、最新で発表されている2021年の中皮腫死亡者数は1635人ですが、その5年前にあたる2016年の1550人との比較では「微増」と言える状況です。

以上を踏まえて、私たちは環境省が新たに示してきた推計(2022)に対して、次のように考えます。

  • 仮にR4年環境省試算のほうが妥当と考えるのであれば、R17年度(ピークをR16年と仮定した場合、ピークをR12年と仮定した場合にはR20年度)以降、基金残高が赤字に転じる可能性について、一般拠出金率の引き上げを含めて対策が検討されなければならないと考えるが、環境省からは何の提案等もなされていない。
  • R4年環境試算は、支出額等の推移についてより正確な見通しをもつことにより基金及び救済制度のあり方の検討に資することを目的としたものとは言えない。
  • むしろ、2022.8.26第2回小委員会の運営の経過も踏まえれば、2022.6.6回開催の第1回小委員会において、治療研究への基金活用を支持する意見が多数派であった事態に対して、「基金が足りなくなる可能性もある」からという理由でそれ以上の議論を封殺することだけを目的にした無責任なものと言わざるを得ない。
  • 基金の将来見通しについて、現時点では、2013年環境省試算に基づいて議論するのが相対的に妥当であると考える。
  • なお、補償・救済すべき被害者数の現状・将来予測や石綿健康被害救済基金がカバーしなければならない割合等については、また別の問題である。

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