お知らせ

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令和4年第2回石綿健康被害救済小委員会(2022年8月26日)議事録

公開:2022年9月8日

本議事録は、環境省ホームページにおいて公開された音声情報を文字データとして書き起こしたものです。書き起こした文字情報は音声情報をもとにできるだけ忠実に書き起こしておりますが、後日、環境省ホームページに公開される議事録と異なる箇所が生じる可能性もありますのでご注意ください。

議事録

【小笠原】それでは、定刻になりましたので、ただ今より令和4年度第2回中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会を開催いたします。

環境保健部環境保健企画管理課石綿健康被害対策室の小笠原でございます。議事の開始まで進行を務めさせていただきます。委員の皆様におかれましては、ご多忙のところ、ご出席をいただきまして誠にありがとうございます。

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、Web会議での開催とさせていただいております。会議中、音声が聞きにくい等の不具合がございましたら事務局までお電話、またはWeb会議のチャット機能でお知らせください。機器の不具合等によりご発言いただけなかった場合にはお電話にてご意見いただきまして、後日、議事録に掲載させていただきます。

本日の会議は公開であり、環境省大臣官房環境保健部環境保健企画管理課公式動画チャンネルでライブ配信を行っております。通信環境の負荷低減のため、カメラ機能はオフにしていただき、ご発言の際のみオンにしていただきますようお願いいたします。

発言のご意思のある委員におかれましては、お名前の横にあります挙手アイコンをクリックしていただくか、チャット機能で発言したい旨をお知らせ願います。委員長から指名を受けた場合、マイクのミュートを解除してご発言いただきますようお願いいたします。ご発言のあとには再びミュートにしていただくとともに、挙手アイコンを忘れずにクリックして元に戻すよう操作をお願いいたします。

また、本委員会は原則公開で開催いたしますが、石綿による健康被害を受けた方など傍聴が困難な方への迅速な情報提供を図るため、議事録が公開されるまでの間に限り、会議の音声を公開することといたしております。

本日は、小委員会委員10名のうち10名のご出席をいただいており、定足数を満たしております。また、本日はヒアリングを行うため、奈良県立医科大学の明神先生、アスベスト患者と家族の会連絡会から2名、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会から3名の方にお越しいただいております。

なお、ヒアリングに当たっては、予定経過時間の2分前に呼び鈴を1回、予定時間経過時に呼び鈴を2回、事務局から鳴らしますので、発言をまとめる参考としていただければ幸いです。

審議に先立ちまして、委員の任命についてご報告いたします。令和4年7月6日付で今村聡委員が退任されました。退任されました今村委員におかれましては、石綿健康被害救済小委員会の審議等に多大なるご貢献をいただきまして、ありがとうございました。同日付で、細川秀一委員が新任されております。細川委員、一言ご挨拶をお願いいたします。

 

【細川】皆様、こんにちは。日本医師会の常任理事の細川でございます。前担当より受け継いでおります。どうぞよろしくお願いします。

 

【小笠原】ありがとうございました。

次に事務局に人事異動がございましたので、ご紹介をいたします。

まず、大臣官房審議官の小森でございます。

 

【小森】よろしくお願いいたします。

 

【小笠原】続きまして、環境保健企画管理課長の熊倉でございます。

 

【熊倉】よろしくお願いいたします。

 

【小笠原】続きまして、石綿健康被害対策室長の木内でございます。

 

【木内】どうぞよろしくお願いいたします。

 

【小笠原】ありがとうございました。それでは次に、本日の資料の確認をいたします。

資料は、事前にメールでお送りしております。議事次第、資料1から4まで、委員提出資料1および2、ヒアリング資料1から3まで、ならびに参考資料でございます。なお、ヒアリング資料のうち、個人情報等が含まれる資料については委員限りの資料配布となっております。

説明に当たっては、事務局が画面上に資料を共有して進行いたします。傍聴されている方におかれましては、環境省ホームページの環境保健部会石綿健康被害救済小委員会のページにアップロードしておりますので、そちらをご覧いただきますようお願いいたします。

それでは、ここからの議事進行は浅野委員長にお願いしたいと思います。浅野委員長、よろしくお願いいたします。

 

【浅野】それでは、本日もお集まりいただきまして、ありがとうございます。お忙しい中でございますが、どうぞよろしくお願いいたします。

それではまず、本日の審議の最初でございますけれども、資料の2、資料の3について事務局から説明いただいたあと、質疑応答、意見交換の時間を持ちたいと思います。

それでは、前回の議論についての整理をしていただいたもの、その他、事務局から説明をいただきます。よろしくお願いいたします。

 

【木内】石綿健康被害対策室でございます。この小委員会の論点というものにつきまして、平成28年、6年前にこの委員会で取りまとめをいただいた内容、また、前回6月に第1回救済小委員会で委員の皆さまからいただいたご意見というものをもとに、論点の案というものを事務局のほうでまとめさせていただいております。それが資料2になります。

この個別の論点にある議論というものは、このあとで順次していただきたいと考えておりますけれども、まずはこの論点のラインナップにつきまして、項目の並びにつきましてご確認をいただきたいという趣旨でございます。

簡単に平成28年取りまとめの方向性、第1回救済小委員会でのご意見のところに絞ってご紹介をさせていただきたいと思います。

まず、救済給付のうち、「救済」の考え方というところでございます。前回小委員会で、被害者間の格差を埋める制度にすべきであるというご意見がございました。

また、その下。給付の内容につきましてですけれども、28年取りまとめにおきまして、救済制度の被認定者の介護等について実態調査を行うべきという取りまとめになっておられます。前回の委員会では、療養手当の見直し、遺族年金や交通費の支払い、物価の急上昇への対応などを検討するべき。また、肺がんの申請に当たっての検査費用や文書料等を助成するべきというご意見がございました。

その下。指定疾病・認定基準に関して、特に肺がん認定における作業従事歴の取扱いにつきまして、28年取りまとめにおきまして、肺がん申請者における石綿ばく露作業従事歴等に関する調査を含め、石綿による肺がんについて引き続き知見の収集に努めるべき。作業従事歴等については、医療機関における肺がん診断の際に、石綿による肺がんに特徴的な医学的所見を確認するための情報として活用され、本制度の申請につながるよう一層の周知を図るべきという取りまとめが行われております。前回の小委員会では、 肺がんの認定基準に石綿ばく露作業従事歴を含めるべきとご意見がございました。

その下でございます。28年取りまとめにおきまして、症状がさまざまである良性石綿胸水および石綿肺合併症を一律に対象とすることは困難であるが、今後、良性石綿胸水のうち被包化された胸水貯留が認められる症例については、「びまん性胸膜肥厚」として取り扱うことができるかどうか、その具体的な医学的判定基準も含めて検討を行い、必要な知見が整った場合には救済対象とすることが望ましいと、そういうような取りまとめをいただいております。前回の委員会におきましても、良性石綿胸水を指定疾病に追加するべきというご意見がございました。

その下でございます。28年取りまとめに記載はございませんが、前回の救済小委員会におきまして、いざというときのために救済の基金を治療・研究にも使えるようにしておくべき。また、正確な診断のための研究にも使えるようにするべき。一方で、制度の迅速な救済を図るものであり、また個別の被害者の救済を目的とする、そういう制度の趣旨を踏まえるべきというようなご意見がございました。

次のページにまいります。制度運用でございます。広報・周知に関しまして、28年取りまとめにおきまして、中皮腫と診断された方に対し、専門医療機関のリスト、救済制度や地域医療・介護・福祉サービス、緩和医療等に関する総合的な情報の提供を検討するべき。また、一般向けの広報活動は継続しつつ、医療現場において制度への申請を勧奨できるよう、関連の学会や医療団体、関係団体等に対して周知を図るべきだ。特に石綿による肺がんについては重点的に医療現場への周知を図るべきという取りまとめがございました。前回の会議におきましても、建設アスベスト給付金制度を隙間なく周知するべき、また死亡小票を活用するべき。医療機関に対して、患者の救済制度への情報提供を義務づけるべき。医師の卒前教育に石綿健康被害救済制度を盛り込むべき。民間部門におけるピアサポート活動を周知、支援するべきと、このようなご意見をいただいてございます。

28年取りまとめにおきまして、肺がんの医学的判定のための繊維計測の体制整備を実施する。それで精度管理を徹底しつつ計測の迅速化を図るべきという取りまとめが行われております。また、申請書類の電子入力化等を行うとともに、申請に当たっての課題を踏まえて申請窓口である保健所職員の研修を強化すべきという取りまとめがあります。前回も、申請者の負担軽減のため、手続きの簡素化を進めるべきとご意見いただいております。

健康管理でございます。効果的な、効率的な健康管理のあり方の検討でございます。27年度から実施をされております試行調査を継続し、効果的、効率的な健康管理のあり方について引き続き検討していくべきという取りまとめ。試行調査において保健指導に関するマニュアルの作成や研修会のさらなる充実を図るべきというまとめがございました。

調査研究でございます。中皮腫登録の活用でございます。救済制度で認定を受けた中皮腫患者の医学情報の登録を継続して、症例の蓄積を行いつつ、医療機関での中皮腫の診断制度の向上に資する情報を提供できるよう検討すべき。また、中皮腫登録とがん登録の利活用の在り方を改めて検討するべきとご意見をいただいております。

最後、がん登録制度の趣旨や内容を踏まえて、活用方法について関係省庁と連携して検討するべきという取りまとめがございました。繰り返しでございますが、当日の、論点についての議論は今後ということでございまして、リストについてご確認をいただきたいと考えています。

続きで、資料3についてもご説明をさせていただきます。今日含めて、今後の、救済小委員会の進め方案についてご説明をさせていただきます。第1回はすでに済んでおりますが、本日第2回ということでございまして、まず平成28年の取りまとめからのフォローを見て、資料2として今お伝えしたものでございます。それから、救済小委員会の今後の進め方ということで、これはこの資料でご説明をするものでございます。また、前回委員の皆さまからいただきましたご指摘事項で、今基金の関係というものがございましたために、これに対する解答を事務局のほうから差し上げまして、関連で有識者からヒアリングをしてはどうか。また当事者たる患者会の皆さまからヒアリングをしてはどうかということでございます。第3回以降、以下の論点について、今申し上げました論点についてご確認をいただきましたら、これについて順にご説明もし、議論をしていきたいと考えております。第3回、第4回と順に議論いたしまして、第5回、年度内の報告書の取りまとめを想定をしているところでございます。その下、米印で注を付けております、これはあくまで現時点での案としてお図りをするものではございまして、議論の状況に応じて議題が変更となる可能性は当然あるものと考えております。また、議論の際には必要に応じて、必要が出てきましたらば、有識者ヒアリングをこれとは別に行うことは想定をしているということでございます。事務局からの説明は以上でございます。ご確認をいただければと思います。

 

【浅野】はい、どうもありがとうございました。これまでの議論の流れを整理していただき、今回の小委員会でどういう議論をしなきゃいけないかっていうことについての整理をしていただきました。大きなくくりとしての枠組みがございますので、細かい論点につきましては、この大きな枠組みのくくりの中に入れられる物は次々に入れていくことになりますが、大きく見てこんなふうな整理ではどうかというのが事務局からの整理、ご提案でございます。次回以降の進め方についても今日、事務局から提案がございましたら、この資料の特に3のかたちで今後の議論をしていくということでございますが、この点に関して、あるいは資料の2での論点整理に関して、何かご質問ご意見などございましたら、どうぞ挙手のクリックをしていただければと思います。はい、右田委員、どうぞよろしくお願いいたします。

 

【右田】右田でございます。ちょっと、事務局に強く要請したいんですけれども、この資料来たのが、実は昨日なんですけれども、昨日来て、他の委員の方でも、これを読み込んでいる方も少ないと思うんですね。こういう状況の中で、今回本当にその議論はできるのかっていう部分が1つ不安点としてあります。他に、フォロー、あと2つほどあるんですけれども、ここはフォローアップの、及び論点の資料2の件についてなんですけれども、基金の使途に関して、ご提示いただいている資料では、本来の本質が伝わっていません。

本日私が提出しました資料に記載されておりますけれども、FDAで認可されている治療法が未だに日本で認可されていない。一部の臨床試験で興味深い結果が出てきており、遺伝子パネル検査等の進歩によって治療の推進に展望が開きつつある状況にありますが、このような状況を踏まえて、学会からの声明文や民間部門における治療推進支援の動きが出ているわけですけれども、現在の治療環境の展望を捉えれば、すでに、オーストラリア、イタリアで実施され、アメリカでも立法において提案がされております中皮腫患者のレジストリデータの構築は極めて大切な課題です。私どもの調査では中皮腫のレジストリデータ構築には、年間で1億円もあれば十分な物ができると確信しております。このような状況があることを、事務局作成の資料にもきちんと書いていただきたいなということです。

大塚委員の発言部分と認識していますけれども、いざというときのために、基金を治療・研究にも使えるようにしておくべきと書かれていますが、大塚先生が前回の小委員会で言われたんですけれども、「すぐに基金を使うような研究があるかどうか」や「法改正」という語句が意図的に抜かれていると思われます。また、給付の内容に関しましても、司法判断の積み上げによって、国の果たすべき役割に変化が出ていること、さらにそのような変化を捉えて、新たな制度構築に向けた法学者などからの提言が成されていますので、私の資料にも記載がありますので、漏れのないようにきちんと記載してほしいということです。

広報、周知に関しても、本年6月に解説された時効救済制度の周知が十分になされておりませんので、この点についても課題があることを十分に記載してほしいということです。さらに、前回の小委員会で発案され、調査された、介護実態調査の報告など、一切記載されていません。当時の岩崎室長含めて、事務方の皆さんが汗を書かれて実施まで至ったわけですから、きちんとやはり報告してほしいと思います。

続きまして、資料3についてですけれども、実は、本日環境大臣や環境保健部長、委員長宛に、抗議文を、実際出そうかと考えておりました。前回の資料では、第3回目に有識者からのヒアリングが予定されていたかと思いますけれども、8月中旬に室長からメールで私のほうに、「小委員会でのヒアリング候補として数名の医学法学の専門家を提示していましたが、同じく医学法学の専門家の参加している委員同士の議論を充実させて審議時間を十分確保するため、これらの専門家のヒアリングについては行わないこととします」と一方的な報告があったんです。私たちは治療の状況や制度を取り巻く変化について、他の委員の皆さまと基本的な共通理解を作って議論が有意義になるように提案をさせていただいたわけですけれども、現にある医療関係者の先生には9月16日の予定を空けておくように、前室長が依頼していたわけです。ところがどのような理由か分かりませんけれども、なくなってしまったわけですね。その、私たちに通知があったのちに、日程を空けておくように頼まれた先生に問い合わせると、その後何の連絡も来ていないと言われてしまいました。確かにご多忙のところ、時間を作ってくださった先生方に対して大変失礼ですし、どのような理由かわかりませんが、やり方が姑息(こそく)だと思っています。

前回の資料にも今後のスケジュールは示されており、3回目以降に専門家のヒアリングが予定されていましたが、それがなくなったことも、この委員会で報告、確認されていません。まったく民主的な運営がなされておらず、この委員会の合意形成のそのものを軽視していると言わざるを得ません。学校のPTAでもこんな運営はしないと思います。この話は、本日するつもりではございませんでした。しかし昨日、事前説明ということで説明を伺った際に事前に予定をしていただいていた先生方のヒアリングは、何の断りもなく勝手になくすという通知を受けたにもかかわらず、今回、明神先生のヒアリングが入れておられると。のちほど明神先生にもお話をお伺いしたいとは思っていますが、私たちが先ほどから申し上げているように、現在の中皮腫治療の現状や課題、展望について、他の委員の先生方と認識を共有して、有意義な議論をしていきたいわけです。

また後ほど示されると思いますが、基金の残高の推計にあまりにも乱暴でいかにも現状維持をしたいがためだけに練られたとしか思えない資料でしたので、問題も指摘させていただきました。木内室長からもきちんとした、コミュニケーションを取ろうとする姿勢が伝わってきませんでした。この場を借りまして、事務局運営に強く抗議させていただきまして、適正かつ公正な委員会運営をしていただくように要請させていただきます。

書面に、正式に書面として提出するかどうかは今後後日検討させていただくとします。そもそも状況がさまざま変化している中で、取りまとめを含めて、5回しか予定されていないのは、事務局ができるだけ議論をしたくないという意思表示にしか映りません。先ほども、話がありました、参議院議員での付帯決議も、事実上無視されているわけで、立法軽視も看過しがたいものです。

本日の私の資料にもありますが、私どものほうで、治療・研究への活用について、全都道府県へのアンケートを取りましたら、全ての県が関心を持ってくださっています。いくつかの県は、立場もあるかと思うのですが、明確に推進すべし、とお声があったり、前向きな意見も少なくなかったです。非常に多くの関係者が本委員会の動向を注視しております。委員長、すでに私の資料、提出資料にも記載しておりますが、日本石綿中皮腫学会から、声明も出されていますし、また日本で臨床試験やゲノム検査の中心的な拠点病院である国立がん研究センターや中皮腫治療推進基金の代表理事の中川先生は、肺がんや中皮腫での臨床試験の第1人者であります。ぜひ他の委員の皆さまと、意見を伺ってみてはいかがでしょうかと思うんですよ。また、やはり石綿健康被害の救済制度の見直しを考える上でも、石綿被害救済制度研究会に、提言を出されてるみたいですので、意見を聞いてみたいと思います。そのようなかたちで進めていただけないでしょうかということです。よろしくお願いいたします。

 

【浅野】ありがとうございました。いろいろとご議論、ご意見がありました。細かい項目については今日事務局のほう、整理してくれた大枠の中に入れる物は十分に入れていくということを考えておりますので、次回以降どういうことを議論するかに関しては、本日のメモにはあまり書いていないことについてもこれまでのご意見やただ今のご発言などを踏まえて、入れるべき物は入れることになるだろうと思いますが。さらに、ヒアリングにつきましては、必要に応じてヒアリングを行うと事務局が書いておりますので、その辺のところは、さらにまた検討させていただければと思います。他に委員から何かこの資料の2、3についてございますでしょうか? よろしゅうございますか?

それではただ今の右田委員からのご発言を踏まえた取り扱い、少し、補充していくことについては事務局と相談をしてさらに検討させていただきたいと思いますが。回数についてもこの回数で終わるかどうかについては議論の進展具合によってはさらに回数を増やす必要はあるかもしれないと考えておりますけれども、とりあえず次は10月というこの予定で進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、今ご指摘がありましたが、本日の次のテーマということでございますけれども、明神先生からヒアリングを行いたいと事務局が考えて、明神先生にも本日ご出席をいただいておりますので、明神先生にご説明いただきたいと思います。これまで、中皮腫死亡者の推計について論文も書いておられます。10分の時間ということでお話をいただきますので、よろしくお願いします。

 

【木内】失礼します。すいません、浅野先生、すいません。今明神先生からのご意見とおっしゃっていただいたんですけれども、先に事務局のほうから資料の説明をさせていただいてもよろしいでしょうか?

 

【浅野】あ、そうですね、はい。それでは、先に資料の説明をしたいということですので、すいません。資料の4の説明をいただいて、それに基づいて明神先生の話を伺おうということでございます。よろしくお願いいたします。

 

【木内】はい。それでは、事務局から許可をいただきまして、資料4のご説明をさせていただきます。資料3にも少し記載をしておりましたけれども、前回第1回の委員会の中で、複数の委員の皆さまから、この救済基金の残高ないし支出額等の推移について将来見通しはどうなのかということでお尋ねがございました。これはなかなか将来のことですので、非常に難しいと事務局でも前回お答えをしていたところでございますけれども、お尋ねがあったことから、環境事務局の環境省と基金の事務を行います環境再生保全機構におきまして、一定の仮定を置いてその仮定に基づく推計ということで資料を作成をさせていただいたものでございます。

資料、上半分と下半分に分かれておりまして、上半分が、基金にかかる支出額と拠出額の推移を示すグラフでございます。棒グラフが支出額、折れ線グラフが拠出額、拠出額は収入ですね。となっておりまして、特に令和3年度までは実績の値を入れております。令和4年度以降に推測の値を入れているというものでございます。それで、下半分にその仮定に基づく推計による残高の推移を、これも令和4年度以降の予測を示してございます。左と右と2つございますのは、あとでご説明します仮定が2種類あるということでございます。

推計に当たっての仮定というところ、グラフの下にも記載しておりますけれども、細かくご説明を申し上げます。なかなか支出額について、その予測が難しいというところがございまして、まず足元の数字、平成28年度から直近5年間の支出額の推移を見まして、これが平均、年率約8%増加をしていることが分かりますので、この伸びを外挿いたしまして、年8%ずつの増というものを仮定をしてございます。それが1つ目の仮定でございます。

そして、これが、しかし増加傾向というもの、中皮腫の死亡者数等も足元で増加しているということがございますが、さまざま中皮腫の死亡者数の推計というのは過去にもございました。2006年の村山らの論文におきましては、この中皮腫の死亡者数の増加のピークは2030年から34年というような推計も示されてございます。基金の安定的な運用を念頭に置きまして、このような推計もございますことから、2030年度と2034年度の2点を設定いたしまして、これは令和12年度と令和16年度ということでございますけれども、そこに、そこまでの間、この今のトレンドが続くという仮定を置いてございます。

支出額についてもう1つ仮定がございます。その令和12年度、16年度のあとでありますけれども、支出額が0になる年度としまして、仮にこれは平成24年に新たな石綿製品の使用が完全禁止をされております。また石綿関連疾患につきましては、ばく露から発症まで40年程度かかるものがあると知られております。また未申請死亡者の特別遺族弔慰金等の請求期限は死亡のときから25年を経過するまでとされておりますので、こうしたことから、仮に平成23年に石綿にばく露いたしまして40年後に発症、お亡くなりになった方が、その25年に請求するという場合、令和60年度近くになることから、ここを0と仮定をしまして、漸減をするような推計ということをしてございます。

拠出額につきましては、直近の約35億の額を横ばいとするかたちでしてございます。あくまで仮定に基づく計算でございますので、必ずこのように推移するというものではございませんが、このような可能性もあるのではないかということで事務局のほうで話をさせていただいたものでございます。いずれにしましても、救済制度は認定された方への着実な給付が第一でございます。そうしたことを念頭に運営していきたいと考えてございます。資料4につきまして、事務局からの説明は以上でございます。

 

【浅野】はい、どうもありがとうございました。前回基金がどうなっているかというご意見が出されたことを踏まえて、今事務局が最近の状況を前提にして、試算をしてみたという説明でございました。これに関連するお話として、お呼びいたしました、奈良県立医大の明神先生からヒアリングをしたいと思います。これまで、中皮腫死亡者数の推計について論文をお書きになっていらっしゃいますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

【右田】浅野先生、すいません。ちょっとご意見よろしいでしょうか? 委員長、すいません、右田ですけれども。

 

【浅野】議論、このあとまたやりますので、よろしいですか? とりあえずヒアリングをさせてください。

 

【右田】資料4の件についてなんですけれども。

 

【浅野】あとで少し議論する時間を取りたいと思います。まず、明神先生のお話を聞いてからにさせていただけませんでしょうか?

 

【右田】できれば、こっち、先、資料について話させていただきたいんですけれども。

 

【浅野】たぶん関連することだと思いますので、すいません、もうご準備いただいてますので、ヒアリングを先にさせてください。ちょっとお待ちいただけませんか?

 

【右田】はい。

 

【浅野】それでは、お待たせいたしました。よろしくお願いいたします。明神先生からまずご発言をいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 

【明神】あ、よろしくお願いいたします。聞こえてますでしょうか?

 

【浅野】聞こえております、大丈夫です。

 

【明神】じゃあこの場でちょっとコメントさせていただきます。次のページお願いできますか? すいません。あれを、自己紹介をちょっとまずさせていただきたいんですけれども、その資料はなかったですかね。すいません。すいません、差し替え前のもので、ないでしょうか。そうですね、すいません、ありがとうございます。

ちょっと、どこの馬の骨とも分からない者だと思いますので、ちょっと簡単に自己紹介させていただきまして。現在奈良医大という地方医大で研究者しながら病理をさせていただいているんですけれども、元々工学系で環境衛生学をやっておりました。そのときに研究者の道を考えていたんですけれども、今で言うハラスメント受けたりしてて、研究者の道を諦めてシステム屋さんになったりしてたんですけれども、当時、今もそうかもしれないんですけれども、シミュレーション、環境衛生でシミュレーションしてたんですが、そのときにシステムを使うので、疫学とIT企業、近かったということでIT企業に一度働いて、その後浜松で2度目の学生をしながら研究したり病理診断を奈良でさせていただきながら研究したり、厚労省に出向したりして、今はレセプトを中心とした臨床疫学だったり、公衆衛生学の研究をしながら病理をさせていただいています。次のページお願いします。

今回この中皮腫の研究の件でお呼びいただいたと認識しています。主に修士課程時代の研究なんですけれども、ラストオーサーの内山巌雄先生が私の指導教官だったんですけれども、平成28年の救済小委員会の委員をされていた方でもあるので、まあご存じの委員の皆さまいらっしゃるかもしれません。次のページお願いします。

ちょっとまず今回基金の予測に対する見解なんですけれども、その前にちょっとこの論文、研究で何をやったかを簡単に紹介させていただきます。これ、中皮腫の死亡数を予測したものになります。当時早稲田大学にいらっしゃった村山先生のAge-cohort modelであったり、環境省が輸入量170トンあたり、1人死亡するという予測を立てられていたんですけれども、私を含む当時の研究グループは、リスクモデルを作りまして、それに当てはめる手法を採りました。ここにお示ししているのがモデルなんですけれども、アスベストばく露するであろう労働者の人口であったり、アスベストの輸入量を設定しまして、アスベストばく露後から発症までのリスク、確率ですね。それを仮定において、それを出生年ごと、その出生した人の年齢ごとに確率を出して人口をかけて患者数、死亡数を積算していくものでした。要は、アスベストの使用量やアスベストばく露された人の数など、あといつ何歳のときばく露されましたか、何年間ばく露されましたかっていうような疫学調査の結果を求めて、それを足す仮説はあるんですけれども、生年齢別に計算していったということで、それを最終的にアスベストで中皮腫になって亡くなった方を予測したものになります。今コロナの患者数、ちょっと話飛びますけれども、コロナの患者数がどれぐらいになるかみたいなのを政府だったり研究者がいろいろシミュレーションしてるんですけれども、そのシミュレーションほど難しい複雑な式ではないんですけれども、似たような手法を使っているイメージになります。次のページお願いできますか?

その結果がこちらになります。これ、あくまで2010年頃に出した当時の予測になりまして、アスベストばく露して何年後に中皮腫で亡くなるだろうというのをいくつかパターン分けして設定したんですね。モデル、8つほどあるんですけれども、ちょっとすいません。先ほどのページに戻っていただいてもいいですか? 右下に大体こんなイメージってあるんですが、大体中皮腫ばく露してから何年ぐらいで発症するだろうと。アスベスト、非常に予後の良くない疾患ですので、そうするとその何年後かに一般的には亡くなることが多いかなっていうのを仮説として置いて計算しました。次のページお願い、元に戻っていただいて、次のページお願いします。

この研究自体は2010年ちょっと前に行ったものなんですけど、その後2015年ぐらいに再計算したら、その時点では1番右のパターンですね。1番死亡数が多いというパターンにフィットします。直近データではやっていないので、なんとも言えないんですけれども、少なくとも2015年ごろのデータだったらモデル8が一番フィットしたかなというところがあります。このように計算したこと、論文の内容を簡単にご説明させていただきました。

次、お願いします。ようやく本題になるわけなんですけれども、今回先ほど環境省の皆さまが説明された予測に対する見解をちょっとコメントさせていただきます。8%っていう予測。平均の、平成28年度からの支出額の増加率平均を元にして立てられてますけれども、そもそも予測は皆さまご存じだと思いますが、今のコロナと同じで予測って非常に難しくて、いろいろな要素を組み合わせていく必要があります。その要素が正しいのかどうなのかもきちんと検証してやっていく必要があります。私のときは、最初にアスベストにばく露されたときの年齢でどれぐらいばく露したかなっていうのを疫学調査の結果を基に持ってきて、さまざま、できるだけ日本の現実に合ったものにするのを心がけてモデル式を作りました。先ほど求めたもの、基金の関係ということで出されたものは、直近の増加率を見たもので、それ以外の要素は抜けていますと。なので、もちろんそれを仮定に置いたのであれば、それはそれで一つのモデルだとは思うんですけれども、ちょっとその抜けている要素をコメントさせていただきます。

抜けてるのは上振れするものだったり、下振れするものだったりがあります。ここに5点ほど挙げてるんですけれども、まず一点目がアスベストの廃棄に考慮してないと。これはこの基金の予測というよりも私たちであったり過去の環境省がやったものも、全てアスベストの使用に着目しているもので、廃棄は考えられてないんですね。

ここにいらっしゃる皆さんもうご存じだとは思うんですけれども、アスベストは日本ではほとんど産出されてないので輸入に頼ってましたと。それを、建物建てるのに使いました。船を造るのに使いました。でも、そのときに建てられたものというのはまだ建ったままなんですよね。これを壊すときにもアスベストが出てくると。それによる被害というのも。なので、最近というかちょっと前ですけど阪神大震災のときだったり。そういったそこの考慮というのが抜けてるのかなと。なのでこれは、この1点目というのは予想より上振れする可能性があるものですと。

二つ目はアスベストの種別ですと。こちらも釈迦に説法かもしれませんけれども、日本で使われたのは主に3種類あって、1995年以降はもうクリソタイル(白アスベスト)しか使われてませんよ。だけど、それより前は茶色とか青のアスベストも使われてましたと。ただ、その内訳というのは残されていないので、もう当時の研究というのはアスベストの使用量というかたちでくくってましたと。これ、そうすると白アスベストのほうが、最後のほうというか1990年以降は使われていたので、これらは患者さん死亡者数というのは下振れする要因になるかなと思います。

三つ目は、アスベスト以外でも、いわゆる自然発症のような中皮腫は存在しますと。比較的若い女性への腹膜に発生するというふうに言われてますが、これはアスベストばく露が万一ゼロになったとしても続くと思うので、これ、中皮腫という部分に限定しますけれども続くとは思います。これは上振れ要素ですね。

四つ目が診断技術の向上ですと。これ、私も病理医を勉強し始めてから、やり始めてから知ったんですけれども、FISHだったり免疫染色というのを、きちんとしてます。なので、病理医はきちんと診断、ある程度できるようになりましたと。臨床の先生方も中皮腫の存在というのがより身近というか非常にまれな疾患ではなくなった。ちゃんと鑑別に上がるようになった。というところで診断精度が高まった。今まで1990年代とか、見逃しとか誤診とかあったかもしれません。だけど、そういうものはほぼなくなったと。これは下振れも上振れもって書いてますけども、どちらかというと、これは上振れする要素になるんじゃないかなと思います。

最後に喫煙率です。これは中皮腫ではなくて肺がんなんですけれども、喫煙はアスベスト肺がんの発症を促進すると言われていますが、その喫煙率が下がってるので、肺がんの発症率も下がるんじゃないかな。これは下振れですね。

こういったように、さまざま考えないといけないことがあるんですね。このあたり、あくまで中皮腫や肺がんに着目したものだったので、他のアスベスト関連疾患というのは出してないんですけれども、基本的にはこの五つに準ずるかたちになるかなと思います。

これらが基金の予測部分では考えられてないですと。ただ、これは実際検証してみないと分からないし、検証したところで断言はできないと思うんですが、今、さまざまな患者数予測などもしているんですけども、そういった上振れ要素、下振れ要素というのはあるんですね。ただ、結果的には、トータルで見たら上振れした部分と下振れした部分が一緒になって、とんとんになるかなと。そういうの考えると、基金の予測というのも実際のところ、あんまりこれと変わらないものになるんじゃないかなというのが、あくまで私の感触です。

ただ、何度も申し上げているように、きちんと検証しないと分からないですし、検証したところで断言はできないというのが現状になります。

ちょっとすみません、時間いただきましたが以上となります。

 

【浅野】どうもありがとうございました。右田さん、どうぞ。先ほどの環境省事務局からの資料の説明についてご発言、ご希望だったんですね。どうぞ。

 

【右田】ありがとうございます。明神先生、ありがとうございました。

明神先生の話につきまして質問ではないんですけれども、明神先生の話を伺いまして、やっぱり、なお、財政論等を含めて有識者の方々の幅広い意見を伺いたいと感じました。石綿被害救済制度研究会の先生方のヒアリングを含め、むしろ私は2010年時のようなワーキンググループを設置して本腰を入れて議論をしていただきたいなと思っておりますがいかがでしょうか。

で、話変わりますけども、資料4について先ほどの件なんですけども、ちょっとこちらのほうで画面共有させていただいてよろしいでしょうかね。いいですか、はい、すみません。

待ってください。できてないか。すみません、共有。見えましたかね。

こちら、お示しされてる資料は私たちの推計とまったく異なるもので、このようなグラフができる明確な数字のデータをいただきたいと思うんですけども、委員会資料として速やかに、数式も含めて根拠となる数字をホームページに示してくださいというのがこちらの意見でございます。それがなければ、やっぱりまったく信頼性がないものなんですね。で、数字遊びをしているにも度が過ぎてるというしか思えません。国のね、委員会であるということを考えれば言語道断であり容認できないものというものです。

というのも私たちが今、情報公開で取得した、環境省が財務省へ説明した2013年8月6日の文書で、平成25年度から平成40年度までの予測支出額は40億円とされています。実際2013年度から2021年度の事務経費を除く給付支出額の平均は約36億円で、環境省の旧来からの予測の範囲内です。

2013年7月以降に環境省が作成した一般拠出金の改定に関する想定問答でも平成29年以降はほぼ横ばいとなることが見込まれてます。これですけどね。この傾向もコロナの関係で、やや目立つ増減はありますけども、旧来からの環境省の予測の範囲内です。

その意味で、本日環境省が示した資料において2028年度の支出額が85億円程度に算出されているのは過去の推計とまったく異なるものということで、根拠が不明ということです。

さらに、支出のピークを2035年としていますけども、2013年8月22日の事務局からの環境大臣への説明資料では、日本の石綿輸入量から推計した被害のピークを2028年としており、以降、被害は激減してきて2035年に年間死者数が1000人ほどになると推計されています。

被害のピークが2028年ごろというのは、本日ヒアリングに来ていただいてる明神先生の2012年に発表された論文でも同じです。ましてや2030年以降も大きく増加するという推計データはありません。本日の資料は明らかに誤増ですし、何か事務局が意図的にもって作成したとしか思えないというのがあります。

仮に石綿輸入量から環境省が推計して環境大臣にも示した資料にある2009年ごろか2019年ごろに後ろ倒しになっているとしても、そこからの被害者数のピークは約1.2倍です。これなんですね。

2021年度の事務経費を除いた支出実績は約50億円です。これはコロナの影響で2020年度実績がかなり低かったのでその反動だと思いますが、その50億円をベースにして1.2倍ではなく、過大な数字ですが1.5倍の金額に当たる75億円の支出が2022年度から2030年度まで続くとすると、合計は675億円となります。

また、こちらも過大な数字だとは思いますが、事務局が示したように年率8%ずつ支出が増えるとすると、2021年度の実績値を基礎に計算すると、2022年度から2030年度までの事務費を除く支出合計額は約660億円になります。先ほどの2021年度実績から想定されるピーク以上の1.5倍の拠出が2022年度からいきなり生じたと仮定して、2030年度まで続くと仮定した合計額の675億円と同程度です。かなり過大評価ということは繰り返し述べさせていただきますが。

つまり2021年度の基金残高は約770億円ですから、本日の過大な推計に基づいた金額を差し引いても2030年時点で約100億円が残っていることになります。この金額には事業主の皆さまのご協力は含まれていません。2022年度から2030年度にかけて、これまでと変わらないかたちで事業主拠出金において企業の皆さまのご協力があるとして、2017年度から2021年度の事業主拠出金の実績の平均金額である34億円の拠出を毎年いただけることを前提とすると、2022年度から2030年度の合計は約300億円になります。

すなわち、今年度の拠出予測を過大に評価しても、事務局が示された支出が年間8%増加するとしても、今と変わらない枠組みのご協力を企業の皆さまからいただければ、2030年度末で約400億円の残高があることになります。以降は被害者が減少していきますから基金の安定的な運用に支障はありません。

速やかに基金の治療・研究への活用に向けた検討をするために現在の医療状況と課題を整理すべきです。基金を有効に活用してほしいという意見は他の委員の先生や自治体の関係者からも、前回の小委員会も含めて上がってきてますが、貴重な委員会の時間を有効に活用してほしいと思います。

 

【浅野】よろしゅうございますか。

 

【右田】よろしくお願いします。

 

【浅野】ただ今、事務局の出しました推計と過去の推計の違いについてのご指摘がありましたが、この点について事務局は何かコメントがありますか。

 

【木内】石綿室からお答えをさせていただきます。ちょっと今、右田委員からお示しをいただいた資料について、どういったものであるかというところ、直ちに今、確認はできないところでありますけれども、将来推計につきましては先ほども申し上げました通り本当に難しい、何がどうなるかというのは難しいものがあると思っております。

今回出させていただきました資料4につきましては、この直近の5年間の増加傾向が支出額におきまして年率8%であるということを捉えまして、それを外挿しまして推計を行ったものでございます。

計算につきましては、単に仮説を計算に入れているだけでありますので、別途お示しすることはできると思っております。検討させていただきます。

 

【浅野】ありがとうございました。過去に推計を行った段階と現在では、患者さんの発生の状況にだいぶ違いがあるんだということは言われてるようでありますが、臨床に関わっておられます岸本委員から、患者さんの発生の程度等について何かご意見があればいただけませんでしょうか。

 

【岸本】はい。それでは私の用意した委員提出資料1をお願いできますでしょうか。はい、これですね。

今の明神先生のモデル8というカーブがございましたが、日本における中皮腫年間死亡者数というのは1995年に500人だったというのが今、このグラフにお示しいたしますように2017年まで増加をしております。右から3番目と2番目は18年、19年、減少傾向にありましたので、我々もピークアウトしたのかなと思っていたんですけれども、2020年には増加して1600人を超えております。やはり、過去の石綿の使用から考えてみて、明神先生のモデルのように、まだ中皮腫というのは増えていくんではないかというふうに思っております。

一方、これは死亡者数でありまして中皮腫に対する予後はどうか、診断はどうかということになります。今日も出席されておられます大林先生たち、病理の先生たちの診断技術が非常にこの2、3年向上いたしまして、胸部CTによって腫瘍性胸膜肥厚がないような胸水だけのような症例が細胞診断で診断できるようになっております。かつてはこのような症例が中皮腫と診断されずに、訳の分からない病気ということになっていたんではないかなというふうに私たちは推測しております。

ただ、このように腫瘍性胸膜肥厚のない早期病変というのは呼吸器外科の先生方が非常に積極的に胸膜剥離術という手術をしてくださっておりますので、こういう早期病変というのは大変予後がよくなっております。明らかに日本では中皮腫の患者さんが予後が良くなっているというふうに実感しております。私も40年、この中皮腫等を扱ってきておりますので、1990年代に比べて変わったなという気はしております。

それと、かつては2003年のシスプラチン、アリムタの化学療法しかなかったんですけれども、最近はニボルマブのセカンドラインへの適用、最近はもっと効果のいい免疫チェックポイント阻害剤のヤーボイ、オプジーボの併用療法、これも保険適用で認められておりまして、かつては想像できなかった腫瘍性胸膜肥厚の完成したような症例であっても3年以上の生存が十分期待されているというような現状でございますので、死亡者数のカーブはこうなんですけども、生存をされる方が明らかに増えていますので、この状況については十分考慮していかないと先ほどの財源について私、分かりませんけれども、長く生きる、そういう方々にもきちっとお金が払われるということがこの制度でありますので、それは十分考慮していただきたいなというふうに思っております。

一方、これは中皮腫の話であって、あと、石綿肺がんも対象疾病でございます。日本では肺がんは、皆さんご存じのように増加をしておりまして死亡者数も一番ということでございます。しかし、この肺がん、特に肺腺がんに関しては、最近有効な薬剤が多々開発されておりまして、予後が非常に伸びているというのも事実でございますし、我々が認定しております石綿肺がんの方々もかなり予後がいいと。

それから検診も十分行われておりますので早期肺がんの症例も増えておりまして、取りあえず早期肺がんで手術例は5年で切っていますけれども、こういう例、主治医がもう治療必要がないと言ってこられる例も増えているというのも事実でございます。肺がんは増えていますが、予後のいい方も増えているということで、これも中皮腫と同じトレンドではないかなというふうに思ってます。

あとは、事務局が先ほど言われましたように、未申請死亡。10数年以上前に死亡した過去例についても認めようということで、最近はこういう申請が増えていまして、こういう申請者の認定例も増えているということでございますので、救済法の対象疾病が増えているのも事実だろうと思っております。

さらにですね、これは悪性腫瘍ではなくて良性疾患である、びまん性胸膜肥厚。というのは、胸水が貯留している例が80%以上、90%程度ありましてですね。この胸水をどういうふうに扱うかというのが、前の救済委員会で問題になりまして。私を中心として、平成28年にですね、皮質下胸水もびまん性胸膜肥厚としていいという認定基準を作りまして。これは、速やかに環境省のほうで認めていただきました。で、現在こういう症例、増えております。なので、この病気は悪性腫瘍ではありませんので、生存期間も長いのでですね、すべてが、中皮腫のこの死亡カーブで論じることが、私は危険があるというふうに思っておりますし、対象疾病もそれなりに医学が進んでおりますので、予後が良好になっているのも事実でございます。で、このような疾患自体の予後の改善等々がありますし、私はこの委員会に最初から出席をしております。この基金は本来、患者さんの救済のために使用するということで始まったわけでございますので、これはやはり患者さんのために使うというのが、これがやはり命題だろうというふうに思います。私も前回、認定に携わっている身で、使わせていただけるんだったら、臓器診断だとか石綿肺がんのクオリティーを診るためにお金がいるので、できれば使わせていただきたいというふうに、まぁ申し上げましたけれども、こういう資質と患者数の増加等を考えた上では、認定に携わっている一人としてですね、患者さんのための基金は、やはり患者さんに還元すべきであろうというふうに思っております。以上です。

 

【浅野】どうもありがとうございました。石綿については、事務局の説明が不十分だということを、今、先ほどもですね、右田委員からご質問ありましたが。ただ、患者さんの発症の状況等が大分変わってきているというお話を今承ったところです。ところで、基金の使途の問題について、法学的な問題がないかということについても、ご意見を聞きたいと思いますが。新美委員、いかがですか?

 

【新美】はい、新美でございます。使途についてはですね、やはり、法律家としてまず言わなければいけないのは、この法律の目的がなんであるかというと、ただいまご発言いただいたように、患者さんの救済ということが第一でありまして、治療研究、あるいは、治療法の改善については、特にこの法律の中には、現在は書いてないということからすると、法律の範囲内での行政という部分からいくと、使途の変更というのは、今の段階では難しいだろうというふうに思います。で、じゃあ法律の改正をすればいいじゃないかって話になるかもしれませんが、法律の改正の前にですね、今患者さんたちの意見にあったように、余裕が出るから回せという議論をするとですね、これはちょっとやぶ蛇になりそうで。余るならば拠出金減らせというのが、まず法律の枠内の議論になりまして。拠出金を減らさないために新たな使途を作って改正をするというのは、これは本来の目的からすると外れます。そういう意味では、治療の改善等については、非常に重要であるとは思いますけれども、現在の法律の下では、目的外使用ということになってしまうと思いますので、やや無理筋かなというふうに思います。これが第一点。それからもう一つはですね、これ仮に、法改正を許してしまうとですね、今後いろんな救済制度をやるときにですね、拠出金をお願いするときにですね、使途を決めてお願いしてるのに、あとで拡大して金はもっと出せと言われると、これはもう制度設計が非常に困難になるという、やや全体を見渡した、行政という観点からいくと、やはりまずい効果が出てきてしまう。そういう印象というか、そういうふうに考えておりますので、ちょっと法律的な観点からいくと、今現在この法律を前提にした場合に、使途を拡大するというのは、相当難しいなというふうに思っております。以上です。

 

【浅野】ありがとうございました。拠出者である産業界代表から、ご意見を伺えればと思います。岩村議員、お願いいたします。

 

【岩村】はい、経団連岩村でございます。聞こえていらっしゃいますでしょうか?

 

【浅野】聞こえております。

 

【岩村】はい。この基金は、個別の石綿健康被害患者の方の救済、これを目的に拠出・造成されてきたものでございます。従いましてですね、基金の資金を、拠出金になって別の目的で支出すること、これは制度運用の在り方として疑問を持っています。また、個別の石綿健康被害患者の方を救済することを目的として拠出してきた事業者、この代表といたしましても、これまでもご意見ございましたけれども、拠出事実と別の目的に使用することについてはですね、同意することができないと。つまり、目的外の支出には反対でございます。加えまして、資料4ですね。今後15年前後で、基金が底をつく可能性が示されておりまして。使途拡大を行うことで、救済といった本来の目的を果たせなくなるということになると、本末転倒ではないかと、強く懸念するところでございます。一方でですね、治療研究の推進、これにつきましては、中皮腫をはじめとする石綿関連疾患を「治る病気」とする上でですね、重要な課題であると認識してございます。本制度とは異なる方法、この方法につきまして、費用負担の在り方も含めて別途議論する必要があるのではないかと考えてございます。事務局におかれましては、関係省庁とも調整の上、対応をご検討いただきたいと思います。合わせてですね、制度の安定的な運用、こういった観点から、国、それから地方自治体による、基金への今後の拠出ですね、これについてもご検討いただきたいと思います。以上でございます。

 

【浅野】ありがとうございました。右田委員、挙手をしておられます。ご発言をご希望でしょうか。

 

【右田】はい。先ほど、今もちょっといろいろお伺いしたんですけれども。やっぱり患者の救済ということは、経済的な救済もですけれども、やはり命の救済ということも考えてほしいわけですね。で、いわゆる、中皮腫が治るような、他の病気、アスベスト疾患が治るような治療法ができると、いわゆる環境省も今進めてますよね、症状固定というふうなところができてくるわけなんですよ。で、症状固定=完治というふうに見なされて、そのときは患者自身も働けるというふうな部分で、そうなるとですね、やはりそういった部分に対するお金が必要なくなるということも考えられるので、やはり患者としては、救済給付金の増額も必要ですけども、治療法が必要というのは、本来の患者としての思いなんですね。そのへん、ちょっとご理解していただいてですね、対応していただきたいなと思います。あと、環境省のさっきの予測なんですけども、2013年度の推計はですね、当時から基本的に、状況は変わってない。確かにオプジーボはできたっていってもですね、ほとんど状況は変わってません。いわゆる生存期間が延びたっていっても、私からすると、やはり1年・2年・3年、延びたか延びてないかという部分なんですね。やはり、画期的に延びるような部分、中皮腫が治るような新薬、薬を用意していただけると、症状固定という部分もちゃんと明確に環境省のほうも言えると思うんですね。だから、そういった部分で、私ども、そういうふうに要望したいと思います。あと、事務局への要請ですけれども、速やかに、先ほど言ったグラフについてですね、数式も含めて根拠のある数字をですね、ホームページに上げていただきたいなと思いますので、よろしくお願いします。

 

【浅野】ありがとうございました。では、ご要望については、事務局、しっかり検討してください。ただ今までの議論に関してですね、ほかの委員の方では、なにかご発言をご希望の方はいらっしゃいますでしょうか?

 

【右田】委員長、すいません。事務局のほうに、いわゆるホームページ、速やかに数字を出すように、数字を出すということを約束してもらえませんでしょうか。

 

【浅野】ちょっとそれは、事務局、今直ちに……。

 

【木内】どういったかたちでお出しができるかというのは、ちょっと検討して、場合によっては委員の先生にもご相談させていただきたいと思いますが、仮定のものを計算しただけですので、なんらか検討できるかなというふうに思います。検討させていただきます。

 

【浅野】ほかの委員の方、ご発言をご希望ございますでしょうか。よろしいですか?ただ今までのところでですね、推計についてはちょっと意見が分かれていますが。しかし、専門家の先生方、あるいは、臨床の先生方のお話をお聞きしていますと、必ずしも基金が余るという状況であるということについては断言できないような感じになります。それから、拠出者としての産業界から、当初の目的とは違う目的外使用というのは非常に疑問であるというようなご意見や、法学者からの消極的な発言もありましたが。しかし、少なくとも、治療研究を拡大しなければいけないということに関しては、だれも異論がないところでありますので、資金の使途というところに結びつけないで、なんらかの治療研究の拡大の方策について考えていくということは、考えざるを得ないというふうに思うわけですね。なお、この推計についても、さらに今後検討して、知見の修正をするということはあるかもしれませんけれども。とりあえず、これについては検討をさらにするということにしたいと思います。治療研究を拡大しなきゃいけないということについては、基金を使うということ以外の方法も当然あり得るというふうに思いますので、この点を、今後の検討のなかでは十分に議論していきたいというふうに考えています。それでは次に、議事の2に移りたいと思います。ヒアリングを行うということを予定しておりますが、今日は、アスベスト患者と家族の会の連絡会のお二方から、15分でお話をいただく。さらに…。

 

【男性】先生すいません、新美先生から……。

 

【浅野】あ、新美先生……。

 

【新美】新見です、はい。時間は取らせませんので、一言だけ申し上げます。委員長がおっしゃったように、治療研究の開発っていうのは、これ、患者さんのことを思ったら非常に大事なんですが、もう一つは、環境省の所管事務でそれができるのかという、ある意味で、たらい回しにする意味ではありませんけれども、設置法を見てですね、治療研究……あの、治療方法については、厚労省の所管事項になってるんじゃないかと思いますので、そちらとの連携を考えたうえで、治療研究をすすめるというようなことを考えていただけたらというふうに、個人的には思っておりますので、ちょっと環境省のもっぱら、環境省でやれるかどうかちょっと疑問ですので、一言申し上げたいと思った次第です。

 

【浅野】ありがとうございました。その点はもちろん、中央環境審議会から環境省に対してだけ要望ということでもないだろうと思いますから、今の新美先生のことは当然踏まえた上で、必要な厚労省のアクションを求めるということもあり得るだろうというふうに思います。それらも含めて、今後の議論の中で、報告書にまとめていきたいと思います。それでは、ヒアリングを行いたいと思いますので。まず、15分の時間ということでお願いしておりました、アスベスト患者と家族の会連絡会からお話をいただきます。よろしくお願いいたします。

 

【平地】平地でございます。声が届いているでしょうか。

 

【浅野】届いております。大丈夫ですよ。

 

【平地】ちょっと、私、機械に不慣れで、ビデオがようプラスにしないんですけれども、構いませんでしょうか?

 

【浅野】構いませんよ、お声が十分聞こえておりますので。

 

【平地】はい、分かりました。では、始めさせていただきます。皆さんこんにちは。私は、兵庫県尼崎市在住の、平地千鶴子と申します。アスベスト患者と家族の会連絡会の共同代表をさせていただいております。本日は、小委員会でのヒアリング、ありがとうございます。いろんな意見があることを承知のうえで、環境ばく露で夫を亡くした被害者の一人として、意見を述べさせていただきます。15年前、60歳の夫を、中皮腫で亡くしております。アスベストが暮らしの中のいろんな用途に使われていたこと、そして、本当にこのアスベストがこんなに怖い病気を引き起こすなら、これはまさに公害であり、この先大きな社会問題になるだろうと、私たちは心配していました。実際、夫が生まれ育った尼崎市小田地区での被害は著しく、公害だと思った人は、うちの夫だけではありませんでした。そして、療養している最中、2005年6月末に、クボタショックが起きました。それを機に、被害者のなかから尼崎支部が作られ、クボタとの話し合いの末、一定の合意に達することができました。裁判もせずに、当事者と加害企業で直接合意できたことは、大変珍しいケースだそうです。当時、毎日のように報道されるアスベストのニュースに、政府も、なんとか救済できる制度を作ろうと努力され、クボタとの合意発表とほぼ同時期に作られたのが、この救済法でした。あれから16年となりましたが、その間には、泉南の国賠訴訟を始め、建設アスベスト裁判が起こされ、私たちも共に傍聴し、応援し、祈る思いで判決を見守りました。特に昨年5月、建設アスベスト裁判の最高裁の判決を聞いてからは、補償と救済は種類が違うものだから、そういう理由だけではどうしても納得できない気持ちになりました。仕事でのばく露と、ただ生まれ育った地域でのばく露と、原因は同じアスベストであるのにもかかわらず、なぜこんなに大きな格差があるんでしょうか。冒頭にも書きましたが、救済法対象のアスベスト被害者が、47都道府県の全てに広がり、公害の要素も強い。アスベスト対策への国の責任が認められた今、見舞金的なものという救済金への考え方には、大きな疑問が出てまいります。類似する他の救済金制度を参考にはしても、一番必要と思われる生活保障的な項目と、遺族年金は採用せずに作られた見舞金的なもの。そして、医療費、療養手当、葬祭料のみ支給するという制度ですが、治療するにも療養生活を続けていくにも、まず基盤となる日常生活がある程度安定して営めることが不可欠です。いくら生活費を切り詰めても、収入が途絶えますから、裕福なご家庭でないかぎり、家計は火の車となります。やむなく貯蓄を切り崩すような不安な暮らしの中で、患者さんやご家族は、療養に果たして専念できるでしょうか。どんな方でも、自分自身が中皮腫やアスベスト疾患を発症したという前提に立って考えていただければ、理屈抜きにお分かりいただけることだと思います。医療費自己負担分や、約10万円の医療手当は、確かに、ないよりかはありがたいです。しかし、収入が途絶えた状態では、ともすれば、その療養手当が実質、生活費の一部に当てられる可能性は高いです。私たちは、決してぜいたくを望むわけではなく、まず人並みの生活が成り立つようにご検討いただきたいと思います。生活が成り立ってこその治療・介護ではないでしょうか。前回、6年前、平成28年の12月になりますか、救済小委員会から発表された「今後の方向性」という資料では、論点や今後の方向性にいろんな考え方があり、基金もそのまま補償に充当できないことが書かれていました。しかし、現役世代の方が発症すれば、「補償だ」と構えるまでもなく、誰が考えても、大変なことになることは分かるはずです。そこでまず、当面の案として、個人的因果関係を一つ一つ照明していくことはとっても難しく、時間を要することですので、例えばですね、54歳までに発症された患者さんには一律10万。そして、55歳から64歳までの発症は一律5万円を、毎月の療養費に定額で上乗せして支給する方法はいかがでしょうか。患者さんやご家族が、より安心して療養生活を送れるのではないかと思います。補償ではなく、療養手当の底上げとして、提案させていただきたいと思います。さらに原則、遺族に関しても、せめて当面の暮らしが立て直せるまでの数年、ないし、10年程度、死亡時の年齢により大きな幅はありますが、生活の助け、扶助として、なんらかの制度を新設していただいてでも、手当が必要なことを付け加えます。懸命に生きてきて、思いもよらない環境ばく露、家庭内ばく露、一人親方の場合も含めてのばく露などで家族を失い、揚げ句の果てどうしようもなくなった場合のセーフティーネットが、生活保護に頼るしかない、こういう状況は、それは筋違いではないかなと思うところです。実際、若くして夫を中皮腫で亡くされたご遺族が高齢の位置にさしかかる今現在も、フルタイムで働いておられるというケースを見てきております。なぜこうなったかを冷静に考えれば、賛否両論、いろんなご意見があるなかでも、原因者負担も視野に入れた対処をご検討いただく必要もあるかと思います。同じ人間として、公平性のある救済・補償を切望いたします。生活の扶助と遺族手当は必要です。隙間なき救済を掲げて、社会全体で、健康被害者の経済的負担軽減を図るために作られた制度の基金が、今、約800億円に積み上がっていると聞きます。私たち一般人には、この基金についての難しい詳細は把握しづらいことですが、執行残高がなぜここまで多額になったのか、制度設計と経過の総括が必要ではないかと思います。少し割愛します。付帯決議にもありましたが、肺がん認定の考え方に、労災と同じようにばく露歴を活用すること、そして、労災においては、指定疾病とされている良性石綿胸水、または、石綿肺合併症についても、指定疾病に追加されるよう、ご検討ください。治療のための研究・開発、これは急がれるところであります。まず、個別の被害者救済という、基金の本来の目的も、見失うことのない議論を希望しております。また、がんの療養は、健康保険と介護保険を併用して行われますから、アスベストが原因で必要となった介護保険の自己負担分も、医療費と同様の扱いになるように、法改正を希望します。アスベスト被害さえなければ、まだ元気で活躍できた人はたくさんおられるはずです。厳しい現実を、患者・家族をはじめ、遺族は歯を食いしばって乗り越えてきております。どうか、道義的責任に基づいての対処で、被害者の心が少しでも穏やかになれる日が訪れますことを、心より願っております。以上です。ありがとうございました。

 

【浅野】平地さん、ありがとうございました。それでは次の、中皮腫・アスベスト疾患患者と家族の会の方に、代わっていただいてよろしいでしょうか。

 

【木内】浅野先生、恐縮でございます。連絡会の方、もう1名ご発言というふうにお伺いしております。

 

【浅野】はい、では、どうぞ続けてお願いします。

 

【久保】本日は、ヒアリングの機会をいただき、ありがとうございます。アスベスト患者と家族の会連絡会共同代表の久保啓二です。私は、平成19年12月末に、60歳定年退職をしました。平成20年1月1日から、嘱託として再雇用で同じ会社の同じ職場で働きました。平成20年8月に、職場で石綿健康診断があり、要経過観察の通知をもらい、体調の異変を感じて、平成20年10月29日、山口宇部医療センターへ検査に行き、CT検査で肺がんの発症がみられ、肺の切除手術を受けました。平成21年1月、労災申請を提出し、7月に労災認定を受けました。労災給付金が少ないのではないかとの思いがありました。再雇用の嘱託で、発症日から算定した基礎日額は、6784円で、平成19年12月末で定年退職での算定した基礎日額は、12306円となります。私は、平成17年6月末で、現場監督業務から、後進の指導と管理事務業務に職場が変わり、基礎日額は13310円となります。私は低額給付について監督署に相談し、労働保険審査請求があることを知り、平成22年10月に、労働保険審査請求書を、労働保険審査官殿に提出しました。平成22年12月に、山口労働者災害補償保険審査官から決定書が出され、審査請求が棄却されました。私は、平成23年2月に、労働保険審査会会長殿に、再審査請求書を提出しました。平成23年10月に裁決書が出され、再審査請求が棄却されました。ところが、平成28年7月の労働保険審査会は、再雇用の契約社員で定額の男性が、悪性中皮腫を発症して療養され、審査会の審議で、定年退職を契機として、いったん会社を離職し、その後新たな会社と、従来とは異なった内容の労働契約を締結して、会社に改めて再雇用されたものとみるのが相当とし、男性の給与基礎日額を、再雇用時の賃金ではなく、より高い定年時の賃金で算定することを明示・採決しました。厚生労働省労働局保証課長は、基発0626第一号で、都道府県労働局部長宛てに、定年退職後同一企業に再雇用された労働者が、再雇用後に石綿関連疾患等の遅発性疾患を発症した場合の給付日額の算定について通達を出しました。私は、平成22年の審査請求、平成23年の再審査請求で、まったく聞き入れてもらえませんでした。平成29年、基発0626通達後変わりましたが、それ以前に決定された被害者は、支給さえされずに、定額のまま取り残されています。私は、救済法改正で、厚生労働省関係では、法の見直す場がなく、私たち患者が入った石綿健康被害救済推進協議会を創設すべきで、過労死等防止対策協議会にならい、ILOの三者原則、公益、労働者代表、使用者代表、プラス当事者の4者という公平な委員構成にすべきです。若年時ばく露離職、労災特別加入、ばく露等労災定額で格差問題があります。労災基礎日額定額決定者は、定額のままです。訴求見直しをし、格差問題を公正に解決すべきです。また、救済給付の判定に問題があります。肺がん労災認定の過半数を占める、「石綿ばく露10年以上、かつ、胸膜プラーク」という累計が、救済法から排除されています。現場が点々とし、建設労働者と一人親方の条件は同じ。「石綿ばく露歴、かつ、胸膜プラーク」で救済給付を支給すべきです。悪性胸膜中皮腫や、肺がんに関する労災保険制度のために、監督署長宛の診断書には、多数の問題点があります。話したいことはたくさんありますが、5分間では説明できません。以上です。

 

【浅野】久保さん、どうもありがとうございました。続きまして、中皮腫アスベスト疾患患者と家族の会から、ご発言いただきます。お願いいたします。

 

【高瀬】すいません、聞こえてますか?

 

【浅野】聞こえてます。

 

【高瀬】夫のは、1965年7月1日生まれで、高卒直後の1984年4月から2008年3月までの24年間、スレート工、屋根工として、多くの建築現場で働きました。2007年11月頃、咳、息切れ症状を自覚するようになりました。徐々に症状が悪化していき、普通には働けなくなり、2008年3月に、働いていた工務店を退職に追い込まれました。少しでも家計の足しにするためにと、咳に苦しみながら、トラック運転手のアルバイトで、月5~6万円を得ましたが、2009年夏頃には、それもできなくなりました。自営業のため労災がもらえない悔しさ、激しい病苦のなか2011年5月22日、45歳の若さで息を引き取りました。あとには、夫と同い年、45歳の私、16歳、高校2年生の長女、14歳、中学2年生の次女が残されました。石綿健康被害救済法の申請は、夫の生前の2010年12月に申請していました。死後1年以上たって、不認定となりましたが、審査請求で不認定を取り消す裁決を受け取りました。その裁決からさらに半年後の2014年5月、280万円が支給されました。私たちが受け取ったのはこれだけでした。夫は、国民健康保険、国民年金に加入していました。病気になったとき勤めていた工務店も、知り合いの個人事業主で、国保、国民年金でした。そのため、サラリーマン向けの社会保険、厚生年金の加入者であれば、病気・休業のときにもらえる傷病手当金にあたるものが、夫にはありませんでした。工務店病気退職とともに、夫の収入、40万円を一気に失いました。我が家の収入は、月3~4万円の、私のパート収入だけになりました。元気だったときに購入した自宅のローンの月々の返済が到底できなくなり、弁護士に相談し、「自己破産するしか方法がない」となりました。生命保険・がん保険は全て解約。自宅を手放し、市営住宅に引っ越しました。そして、生活保護を受けることにしました。一家4人で24~25万円。市営住宅の家賃を引かれて、約20万円が振り込まれます。入院した市立病院で診断書を作ってもらい、身体障害認定を申請し、身体障害者3級と認定されましたが、国民年金加入者は、3級では障害年金をもらえません。もしこの時、石綿健康被害救済法の認定を受けていれば、療養手当10万3870円がもらえていたはずです。サラリーマンならもらえる傷病手当金もない状況のもとで、この額の療養手当をもらえたとしても、自己破産が免れたかどうか、生活保護を受けないで乗り切れたかどうかは、それは正直分かりません。ですが、私たちのように労災補償がもらえない立場の者、まして、50歳も超えていない年代の者にとっては、10万3870円はあまりにも少ない額です。私たちのような境遇の被害者は決して少なくありませんから、療養手当の改善は、ぜひ必要だと思います。また、生活保護を受けていた私たちのような場合は、療養手当のうち、33300円だけが収入認定を受けないことにされていますので、療養手当をもらっていたとしても、実質68%の大幅減額支給になります。これでは救済の目的に反するので、全額を収入認定しないよう改善してもらいたいと思います。死亡後にようやく280万円の支給がありました。しかしこれは、夫が生前に受ける権利があったものを、私たちが受け取ったにすぎません。救済給付を受けた遺族は全てそうなのです。私たちの場合、国民年金の加入者であった夫の死後の私たちへの公的補償は、遺族年金の一つの遺族基礎年金でした。遺族基礎年金の対象者は、子のある配偶者と子です。私たちの場合は、夫が亡くなったとき高校2年生だった長女、中学2年生だった次女、そして、その子たちの母である私、ということになります。年金開始当初額は、年額およそ120万円。その後、長女の高校の卒業の年の4月に減額。続いて、次女の高校卒業の2016年3月をもって、遺族基礎年金は終わってしまいました。ただし、生活保護を受けている間は、遺族基礎年金の全てが収入認定され、生活保護費として相殺されていました。遺族基礎年金の修了時、まだ私は50歳でした。私には、60歳から65歳になるまで、寡婦年金が支給されるということですが、50歳から59歳までその間、私には公的補償は一切ございません。ところが、もし夫がサラリーマンで厚生年金に入っていたならば、経済的な補償がまったく違うのです。夫がサラリーマンだったとしたときの妻の私には、遺族基礎年金に合わせて、遺族厚生年金が支給されることになります。また、子どもの年齢が進むと、遺族基礎年金も終了してしまいますが、私が65歳になるまでの間、中高齢寡婦加算、約58万円ももらえることになります。しかし、現実の私には、遺族厚生年金はありません。中高齢寡婦加算もありません。60歳になるまでは、なんの補償もございません。このように、遺族の中にもこんなにも格差があることを知ってほしいです。私のような境遇のものを救済するために、石綿健康被害救済法の中で、遺族給付制度をぜひ作ってください。私は今、給料は安いですが、発達障害の児童を支援する事業所で働いています。長女は高校卒業と同時に家を出て独立しましたが、次女は二十歳の時に発達障害であると診断され、精神障害2級と認定されて、障害基礎年金をもらいながら、現在は就労移行事業所に通っています。アスベスト被害の苦境を生きる今の私たちを助けるために、1日も早く、より良い制度にしてください。どうかよろしくお願いいたします。以上です。

 

【浅野】どうも、高瀬さんありがとうございました。どうぞ、続けてお願いします。

 

【平田】声聞こえてますでしょうか。

 

【浅野】はい、聞こえてます。どうぞ、続けてください。

 

【平田】私は、岐阜県内に住んでいる、41歳、悪性胸膜中皮腫患者の妻です。夫は、2021年7月に、40歳で悪性胸膜中皮腫を発症しました。勤務先の健康診断でがんの疑いを指摘され、その後診断されました。その1年前の検診でも、異常が指摘されていましたが、腫瘍マーカーなどに異常がなかったので、そのままとなっていました。夫は若い頃から水泳をしていたこともあり、体格も良く、大きな病気もしたことがなく、健康に過ごしていましたので、まさかこのような病気になるとは思っていませんでした。医師の説明や、診断後に情報を集めると、中皮腫がとても深刻な病気であることが分かりました。少しでも経験が豊富な、実績のある医療機関での手術などの治療を求めて、関西の医療機関を受診し、術後の現在も通院しています。夫にはアスベストを吸った記憶がなく、労災請求もまったく検討ができません。希少で、 根治どころか1年先もまったく見据えられない大変な病気になったばかりか、原因がどこにあるかもわからず、はっきりせず、労災などの請求も考えられず、病気になった夫には救済給付のわずかな支給だけです。夫ならきっと乗り越えられると信じている一方で、毎日が不安です。不安で不安で、ずっと不安です。私と夫には、7歳と4歳の子供がいます。子供の口から、「他のの子のパパは珍しい病気になってないからいいな」という言葉が出たときは、私は返す言葉がありませんでした。子どもに願い事を聞くと、「パパの病気が治りますように」と言います。とにかく、夫の健康な体を取り戻す努力を、関係者が一丸となってしてください。間違っても、石綿健康被害救済基金は、環境省が管理しているお金だからという理由で、厚労省や他の省庁・機関と連帯して有効に活用しない、などと考えているのであれば、基金の趣旨を改めて見つめ直してください。夫と同じように苦しむ患者の皆さんの命を救うための最善の方策を進めてください。夫が発病したのは、現在住んでいる家を建築中のことです。すでに家のローンも組んだあとでした。一家を支える人間の収入が、病気のためにほぼ途絶えました。わずかに救済給付金が入ってきますが、助かっている部分はありますが、本人になんの落ち度もなく、国が少なからず使用を推進したり許可してきた石綿のために病気で苦しむだけでなく、なぜ経済的な問題で子供の生活まで脅かさないといけないのでしょうか。救済給付金は、本人が発病時に得ていた収入や、扶養家族の人数なども考慮されず、一律極めて低額な給付がされていますが、患者の年齢や所得、家庭状況に考慮していただきたいと思います。医療機関の選択をするにおいても、病気の困難性も考慮すると、私たちのように、比較的遠方の医療機関への受診を望む患者・家族も多いはずです。通院を一人ですることも物理的には可能ですが、できる限り家族の誰かが付き添ってサポートをしないと、移動中の不測の事態に対応できませんし、不安な状態で医師の説明等を聞いても、本人がすぐに頭を整理することは難しかったりするからです。そうすると、交通費も倍以上になりますし、移住する地域によっては、経済的な事情で、希望する医療機関を選択できない患者さんもおられると思います。考えたくもないことですが、もしも夫になにかあったときに、労災の対象にならない家族には、事実上なんの給付もありません。私一人ならなんとかできますが、経済的な問題で、二人の子供の将来をこのような理不尽なことで不安に陥れられなければいけないのかと思うと、到底納得できません。私たち、患者であり家族ですが、それぞれ皆さんの生活状況は異なります。私たちの置かれている立場が最も厳しいとは言いませんが、もう少し経済状況や家庭環境などの総合的な考慮をして、患者と家族の生活を支えていただき、患者本人が納得した治療に専念できるようにお願いします。以上です。ありがとうございます。

 

【浅野】どうも、平田さんありがとうございました。それでは、もうお一方、お願いします。

 

【Y・O】聞こえてますでしょうか。

 

【浅野】声が小さいようです。大きい声でお願いします。

 

【Y・O】はい、聞こえてますでしょうか?

 

【浅野】はい、大丈夫ですよ。

 

【Y・O】本日、ヒアリングの機会をいただきまして、ありがとうございます。この場に参加させていただき、色々なご意見があることをお聞きしました。話を聞いていただき、少しでも中皮腫患者の気持ちが伝わればと思います。私は、40代の悪性胸膜中皮腫患者です。現在東海地方に住んで治療をしています。左胸の違和感を感じ、2020年3月に近所のクリニックを受診したところ、胸水が確認され、5月に総合病院で確定診断を受けました。4月に、確定診断のための胸膜生検手術前の説明を受けましたが、そこで悪性胸膜中皮腫の可能性が高いと、説明書類に書かれていました。簡単な知識として、中皮腫は、発症すれば死に至る可能性の高い恐ろしい病気という認識は持っていましたが、正直、自分には関係ない病気だと思っていました。そのときは、まったく予期しない出来事で、医師の説明時に、机に顔を伏せて、声を上げて泣いたことを覚えています。良心は一般の会社員で、住んでいた環境の周辺に、アスベストを吸ってしまうような鉱山や工場などはありませんでした。学生時代は、社会人時代のアルバイトでは、弁当やスーパー、結婚式場などでしたので、まったく思い当たりません。正社員として歯科衛生士や建材メーカーの事務職をしていましたが、工事現場などには行っていませんので、思い当たるものがありません。小学校の高学年時に学校の体育館が取り壊され、新しい体育館が建設されることがありました。比較的長期間の工事で、私はよく隣接するグラウンドの遊具などで遊んでいたので、もしかしたらそこでアスベストを吸い込んでしまったのかもしれません。発病時、子どもの進学など、将来を見据えて社会復帰しようとしていた矢先の出来事でした。今後治療が継続できたとしても、満足に働ける状態はなかなか想像できません。治療の継続により、経済的な負担が続いていくことの不安も耐えません。私はこれまで、何度も絶望し、死を覚悟しました。でも、どうしても生きることを諦められません。なぜなら、まだ小学校4年生の娘と、2年生の息子がいるからです。子どもたちが成人になるまで生きられるだろうか。それは無理だと、何度も自分に言い聞かせました。しかし、諦めることはできず、日に日に、まだまだ生きたいという気持ちが強くなっています。子どもを育て、成長を見守る義務を、母親としてなんとしても果たしたいと思っています。先日、現在取り組んでいる最先端の標準治療に関して、主治医から「効果が出ていない」と説明を受けました。主治医も選択肢が限られる中、今後の治療について提案し、最善を尽くそうとしてくれてはいますが、前向きな展望が描ける状況にはありません。治療を受ける体力はまだまだあるのに、有効な治療法がありません。この悔しさや不安をどこにぶつけて良いのかもわかりません。そのころ、小学校4年生の娘は、道徳教育でがんの学習をしていましたので、自分の病気ががんであることを伝えました。娘は、自分が大人になったら、私と一緒にかなえたい夢があります。娘はそのことを話し、泣きながら「お母さん死んじゃうの?大人になったときは、お母さんいないの?」と問いかけてきました。私は娘に、「もしかしたらいないかもしれないけれど、いなくならないために今お母さんは頑張っている。病院の先生や看護師さん達も頑張ってくれている」ということを伝えました。病気になって、周りの方々から、多くの温かみのある優しさをいただいています。病気にならなければ分からなかったことがたくさんありました。今回皆さまにお話しさせていただくことができたことも、なにかのご縁かもしれません。希望は捨てていない一方で、現実は厳しいものがあります。標準治療における治療の道が閉ざされてしまいましたので、遺伝子パネル検査や、いくつかの治験を調べていますが、身体的な状態などの要件に合致せず、道が開けずにいます。いろいろな障壁はあるかもしれませんが、研究に熱心に取り組んでくださるお医者様が多くいらっしゃいます。公的な基金を活用し、中皮腫の新薬の開発、治療を進めていただきたいのです。一人でも多くの患者さん達の命を救うために、大きな1歩を踏み出すきっかけをいただけないでしょうか。患者は、1日1日不安を抱え、精一杯病と闘いながら生きています。健康な人であれば、1年・2年、たいしたことない期間に感じるかもしれませんが、私たち患者には、もう待っている時間がありません。どうか一刻も早く、現在中皮腫で苦しんでいる患者さん達を救うために、関係者の皆さんで最大限の協力をして、石綿健康被害救済基金を、治療の研究や新薬の開発に活用することを認めていただけないでしょうか。どうか私に、母親として、子どもたちの成長を見守らせていただけないでしょうか。私たち患者は、まだまだ長く生きたいのです。多くの大切な命を救うために、よろしくお願い申し上げます。以上です。

 

【浅野】どうもありがとうございました。しっかり意見を受け止めたいと思います。委員の方で、なにかご質問をご希望の方はいらっしゃいますか? 質問したいこと、よろしゅうございますか? それでは、右田さん、どうぞ。

 

【右田】ありがとうございます。多くの方々からのヒアリング、すごく参考になったと思います。いくつか質問させていただきたいんですけれども。まず、平地さん、よろしいでしょうか。

 

【平地】はい。聞こえております。どうぞ、右田さん。

 

【右田】平地さんの連れ合い様が闘病されていた当時はですね、まだアリムタもまだ承認されていなかったと思うんです。

 

【平地】丁度ギリギリだったです。亡くなる年の年明けに、平成19年の1月に解禁になりました。

 

【右田】ですよね。だから、たぶん、大変な治療・療養をされていたと思うんですけれども。ご無理のない範囲で、当時、いかに治療環境が困難だったかをお聞かせ願えないでしょうか。

 

【平地】まず、選択肢がなかったことですね。一番大きいのは。つまり、肺全摘出手術をしまして、あとは、病院によっても違うんでしょうけれども、温熱化学療法という、半年にいっぺんずつまた手術をして、肺の空洞をきれいに洗い流して、またふたをすると。それを、元気な間続けて、また転移が認められたらそれはできないと。そんな中で、亡くなるその年に、ようやくアリムタが解禁になって、3クール受けたんですけれども、まったく効果がなくて、やめました。その年の秋に他界しております。そんな状態でした。

 

【右田】ありがとうございます。お話を聞く限りでは、やはり私もですね、さまざまなご遺族の皆様とお話しさせていただきましたが、同じような思いをされるご遺族の方がたくさんいて、やっぱりこれ以上そういったことのないようにしたいわけですよね。

 

【平地】はい。

 

【右田】やっぱり、大切な方を失うことの辛さや困難さはですね、やっぱりその方でしかわからないと思うんです。私もいろんなご遺族・ご家族の方のお話を聞かせていただいてますけれども、全てやっぱり、中皮腫患者本人ですけれども、全てを理解することはできないんですよね。ただ一つ言えることは、やはり、同じようなつらい思いをされているご家族を一人でも減らしたいということは、たぶん一緒やと思うんですね。

 

【平地】同じです、それは。はい。

 

【右田】平地さんもたぶん今、そのように思っていただいてる。みなさんやっぱり、ご遺族の方でも決して少なくない方がですね、中皮腫を治す病気にしてほしいとやっぱり伝えてくださってます。

 

【平地】はい。

 

【右田】やっぱり、中皮腫が治る病気になるようにですね、切に願っていますし、それがまぁ、夫への一番の供養になると思いますという言葉をいただいてますけれども、たぶん平地さんもそのように思っておられると思います。ありがとうございます。

 

【平地】はい。

 

【右田】私自身、本心を言えばですね、私はこの委員会で、治療研究についてですね、基金の活用や治療研究の推進を訴えてもですね、私自身すでに7年目にさしかかってるわけですけど、だから、自分への恩恵はなにひとつ得られないかなというふうに思っております。こんなに元気でも、いつ中皮腫患者っていうのは急変するか分かりませんので、これはちょっと、私もやっぱり心得ております。でもやっぱり、平地さんのお連れ様も含めてですね、アリムタの早期承認を認めてくださって、この恩恵を今私自身が受けてるんですね。これまでの患者さんやご家族のご尽力の上にですね、私は今生きていられると思ってます。今後はですね、私が将来の患者さんのためにですね、やっぱり頑張る必要があると思ってますので、今必死に訴えさせていただいてる次第でございますけれども。引き続き、一人でも多くの方々がですね、つらい思いをしながら頑張っていかなあかんと思ってるような状況です。

 

【浅野】右田さん、ありがとうございます。ほかの委員の方で、ご質問はございますか?

 

【右田】先生、まだちょっと、すいません、もうちょっとあの、お二人、質問があるんですけれども。

 

【浅野】時間が6時までということで、ほかの委員の方、次の予定を立てているお方もあると思いますので。

 

【右田】とりあえず、今回ちょっと、やっぱりヒアリングしていただいたんで、その方の思いを、やっぱりみなさんに伝えたいと思いますので、もう少しだけお時間をいただけませんでしょうか。

 

【浅野】あと3分ぐらいしかないので、その時間でお願いできますか?

 

【右田】Y・Oさんへの質問です。お話ありがとうございました。Y・Oさん、大丈夫ですか?

 

【浅野】先ほどご発言いただいた方にご質問だと思います。よろしいですか?

 

【Y・O】そうです、はい。

 

【浅野】お願いします、時間があまりございませんので。

 

【右田】はい。ご自身がですね、中皮腫に罹患(りかん)してですね、やっぱりこれまで生きる望みを持ってたくさんの治療をしてると思いますけれども。小学生のお子さまの話もありましたけど、一瞬だけ救済基金への言及がありましたが、私も一人の患者として、命の救済をしていくためにですね、基金の基本的な運営を維持することを前提にですね、治療研究の支援への活用をしてほしいと、率直に思ってるんですけれども。この点ですね、改めてお気持ちをお聞かせいただけませんでしょうか。

 

【女性】中皮腫になって、子どもたちを支えて見守っていたつもりが、今では私を気遣い、子供たちが心配してくれています。日々一緒に過ごして、成長を感じて、そのたびにまだまだこれから先も子どもたちと一緒にいたいと思っています。私にとって本当に大切な子どもたちです。その子どもたちに、母親を亡くすような悲しい思いをさせたくありません。大人になるまでそばで支えていける存在になりたいです。私にとって子どもたちは、生きる原動力です。治療の効果が出ていなくて、治療法がなくても、遺伝子パネル検査を受けたり治験を探したり、私は必死に生きようともがいています。きっと私だけではなくて、中皮腫で苦しんでいる人も同じ思いだと思います。がんは、早期発見・早期治療で治る時代というように言われるようになりましたけど、中皮腫は早期発見でも治る人は多くありません。予後が良好になり、3年以上生きられると言われても、まあ、以前と比べたら生きられるようになったかもしれませんけど、私はまだ40代です。3年じゃ足りません。先ほどから、法律の改正が難しいという話をお聞きしましたが、早急に救済基金を、新薬の開発や治療研究に活用することを認めていただきたいです。よろしくお願いいたします。

 

【右田】ありがとうございます。最後にですね、事務局のほうにお話ししたいんですけれども。

 

【浅野】すいません、そろそろ打ち切りをさせていただけませんでしょうか。

 

【右田】私どもも、今聞かれたことをですね、やっぱり委員の人にわかっていただきたいし、やっぱり事務局の人にお伺いしたいんですけれども。何人かの方からですね、基金の治療研究への活用について言及がありましたけれども、また前回の小委員会でもですね、多数の委員の皆さんから検討すべき旨の発言があったり、その数日後にはですね、環境委員会の付帯決議でもって、早急に検討すべきと決議されてます。今、仮になにができるか、もちろんこれまでの枠組みの中でですね、基本部分を安定的に運営させることを前提に、予算的な問題もきちんと議論できるようにですね、していただきたいなと思います。できるだけ具体的なですね、事実整理をしていただく必要があると思いますから、どのように考えてるんでしょうか。

 

【浅野】次回以降さらに議論を続けることにせざるを得ませんね。今日はほんとに貴重なご意見をいただきまして、委員の一人一人が、患者の皆さん方の思いはしっかり受け止めることができたのではないかと思います。今後、論点として、運用をしっかりしていきたいと思います。本日は本当に申し訳ありませんが、時間もございませんので。

 

【右田】先ほど、どなたかの意見の中でもですね、縦割り行政……

 

【浅野】あの、もうそろそろ、お気持ちは良くわかりますが、おやめいただけませんでしょうか。

 

【右田】気持ちはわかるんであれば、あと1・2分いただいてもよろしいかと思うんですけれども。

 

【浅野】もう時間になっておりますので、あとは事務局から、今後のことについてのお話を簡単にさせていただいて、これで本日は閉会いたします。事務局、お願いします。

 

【小笠原】事務局でございます。次回の小委員会の日程については、現在調整中でございますので、決まりましたらご連絡いたします。また、本日の議事録につきましては、事務局で原案を作成し、委員の皆さまにご確認いただいたあと、環境省のホームページに掲載する予定ですので、よろしくお願いいたします。それまでの間につきましては、主に委員会の運営方針に基づき、会議の音声を環境省のホームページで掲載する予定でございます。それでは以上で、令和4年度第2回石綿健康被害救済小委員会を終了いたします。ありがとうございました。

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