住宅アスベスト問題に対する声明

2017/07/10 月曜日

 

2017年7月10日

住宅アスベスト問題に対する声明

中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会

会長 小林雅行

 

私たちはこの度の住宅によるアスベスト被害事例と、数万コールにおよぶ多くの住民の電話相談で判明した不安をもとに、以下のとおり各関係省庁に申し入れます。関係省庁および地方自治体は誠実な対策を速やかに実施するようお願いします。

 

1.基本的認識

アスベストによる健康被害は、過去の問題でなく、現在進行形の日本に住むすべての人々の重大課題です。

日本の石綿関連の法律体系は、労働安全衛生法と石綿則、大気汚染防止法、建築基準法等が建物等の改築や解体時になり初めて規制のかかる法体系であり、一方では石綿関連疾患が発症した際に労災補償法、石綿健康被害救済法の対象となるなど、対策を推進・整備する側面、石綿ばく露労働者への石綿健診等を除き健康診断体制の構築が少ない等、基本的な問題をも含んでいます。

この認識に立ち、①被害発症者への平等で隙間のない補償・救済の実施、治療体制の一層の拡充と治療方法の研究開発、②既に石綿ばく露した被害発症予備群が膨大に存在する事実を踏まえ、日本における石綿の使用実態を徹底的に調査し、調査結果を積極的に公開する事、③新たな石綿ばく露者を出さないための関係法令の遵守と新規法制定を求めます。

 

2.吹付アスベストの使用実態の把握と情報公開

今回明らかになった吹付けアスベストを使用していた住宅は「公共賃貸住宅(国土交通省管轄)」のみです。しかし以下のとおり吹付けアスベストが使用されていた住宅はそれ以外にも多数存在しますし、現に今回の電話相談でも以下の住宅に住んでいた方らか多数相談が寄せられています。

よって関係省庁や地方自治体は、以下を含む賃貸、不特定多数の住民が使用する箇所(通路等)団地の吹付アスベストの使用実態を建築物石綿含有建材調査者等を活用して徹底的に調査し、2018年度までに調査結果を広く公開する事を求めます。

また国土交通省は民間の社宅の調査に関する通知をすべきです。

加えてアスベストについての全ての文書等の永久保存、適切な管理、破棄文書の復元を求めます。

名  称 種  別 所  轄
合同宿舎 国家公務員宿舎 財務省
省庁別宿舎 国家公務員宿舎 各省庁
営舎 国家公務員宿舎 自衛隊
地方公務員宿舎 公務員宿舎 自治体
 消防署 待機宿舎 消防署 自治体/総務省消防庁
 警察署 警察署 自治体/警察庁
 教職員住宅 公務員宿舎 自治体/教育委員会
 看護師宿舎

公立病院職員宿舎

公務員宿舎 自治体
雇用促進住宅 公営住宅 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

 

3.封じ込め済の吹付石綿について

吹付石綿の封じ込めはあくまでも一時的な措置であることを踏まえ、封じ込め済の吹付石綿についても、期限を設けて確実に除去工事を実施するためのガイドラインを作成すること。

 

4.全自治体による、責任ある建築物調査が可能となる体制作りと、アスベスト相談窓口の設置

石井国土交通大臣は「建設をしてから対策を行うまでの期間を精査した上で、必要な情報提供を行うことを促していきたい(2017年6月13日閣議後会見)」と発言しています。

今回の住宅アスベスト問題を契機に、一部の自治体で相談窓口が設置されましたが、全国の自治体に広げることを求めます。建築物の石綿がわからない職員が配置されては問題が解決はしないため、各都道府県の建築物石綿含有建材調査者と連携した調査相談体制づくりを求めます。

「既に除去工事等の対策済だから心配いらない」という対応でなく、除去工事等の対策前の吹付けアスベストのばく露についての丁寧な説明と誠実な対応を求めます。

 

5.住宅アスベスト被害者の調査

今回の住宅によるアスベスト被害は他にも多数存在するが埋もれていると考えられるので、「石綿健康被害救済制度における被認定者に関する居住地情報(過去居住含む)」等のアスベスト健康被害の届出情報その他を使い、住宅によるアスベスト被害について過去の発症実態を調査する必要があります。

山本環境大臣は「健康被害が生じてきていると言う実態が生まれてくるならば、ある意味からいったら関心を寄せるべき事項だろう」「住宅に使用されていた石綿が経年劣化によって飛散すると言う状況と言うのは今まで誰も多分ほぼ注目していなかったんだろう」「これから関係省庁と対応を協議して参りたい」(いずれも2017年6月16日閣議後会見)と発言しています。

特に今回の被災者の神奈川県営千丸台団地に関しては除去工事前に居住していた全ての入居者への注意喚起と希望者への健康診断を求めます。

 

6.既存の各種石綿被害調査への追加

今回の住宅によるアスベスト被害の発症を受け、①石綿健康被害救済制度における被認定者に関する石綿ばく露調査項目に「住宅の吹付アスベストばく露」の項目を追加する事、②「石綿ばく露者の健康管理に係る試行調査」の対象者に「住宅の吹付アスベストばく露者」を加える事を求めます。

 

7. 吹付アスベスト対策の遅れ

1975年に吹付アスベストは原則禁止されたにも関わらず、吹付アスベストを既に使用していた既存建築についてはその対策が放置され続けました。遅れること13年後の1988年に、国は「公共住宅の吹付けアスベストに係る当面の対策について」を関係自治体に通知し、それを受け吹付アスベストの除去工事等の対策をする事になりました。この対策の遅れについて問題がなかったのか、第3者的立場の専門家からなる委員会を設け、検証を求めます。また委員会にはアスベスト疾患の患者団体が推薦するメンバーを入れることを求めます。

 

8.石綿健康被害対策推進法

アスベスト対策は他分野にまたがる課題であり、これをそれぞれ担当省庁でバラバラに実施しているだけでは、対応に隙間が生じ、根本的な解決には至りません。したがって、例えば内閣府に一元的にアスベスト問題を担当する部署を設けるなどして対策にあたる必要があります。

また今回の問題を契機に、アスベスト被害は公害であるとの認識に立ち、石綿健康被害対策推進法(仮称)を制定し、全ての石綿被害の補償救済や予防と根絶を進めるように求めます。

 

以上

Copyright © 2004-2017 JAMARDVF. All rights reserved.