中皮腫の治療方法
(質問) 悪性胸膜中皮腫の治療法は、どう選択すれば良いのでしょうか?
(答) 悪性胸膜中皮腫の治療方法は、ステージ分類、本人の体力、全身の病気の有無、以前に他の肺の病気があるのかどうか、総合的に判断し選択されます。治療法には、心へのケアと緩和療法、手術療法、化学療法、放射線療法、免疫療法があります。
中皮腫は、身体の病気であると同時に「こころの」病気でもありますから、最初から生活の質を良い状態に保つために、心へのケアと症状をコントロールする緩和療法は最初から必要です。大きな病院ではこの点を十分対応してくださるところばかりともいえないので、親身に相談できるホームドクターを探すことも肝心です。
70才以下で、ステージ1の方は手術が原則です。60才以下でステージ2の場合、手術を実施する事が多いと思います。ステージ3は、手術の適応は本来ありません。
化学療法は、ステージ3及び4の方の最初の治療として実施される事が多いようです。ステージ2でも色々な理由で手術不能ならば、化学療法が実施されています。
ステージ4かつ80才以上の場合、免疫療法と緩和療法を最初から選択する事が多いです。
放射線療法は、手術後の再発防止や痛みの緩和目的で実施されます。3者(手術・抗ガン剤・放射線)併用療法が多くの癌に効果があるため、中皮腫で試験的な試みも実施されています。
免疫療法を行う方が増加している傾向にあります。
(質問) 中皮腫の場合は 手術のみが根治療法なのでしょうか?
(答) 手術療法(胸膜肺全摘術)は根治的な治療の可能性がある唯一の方法です。手術が成功し数年間以上健在の方もいらっしゃいますが、長時間に及ぶ難手術であるため、手術の危険も低くはありません。根治的な可能性のある方法のため、高齢でない方の場合に重要な選択枠となりますが、マイナス面を含め十分理解した上での治療が望まれます。
他にも治療法はあります。化学療法、放射線療法、・・・。その病院での治療の選択枠を医師に提示してもらい、自分の病状を把握しその病気に対する知識を深め、ライフスタイルに合った治療法を選択されるのが望ましいと思います。
納得いかない場合はセカンド・オピニオンで、他の医師に相談する事も大事です。WHO(世界保健機構)による健康の定義は、簡単にいうと「肉体的、精神的、社会的に完全に良好である状態」です。肉体的な部分は病院が治療しますが、精神的、社会的な部分は家族や周りの人々のサポートが不可欠です。病院、家族、周りの人々とのコミュニケーションを大切にしていき、患者本人のQOL(Quality
Of Life=生活の質)が維持・向上できるようにと望みます。
(質問) 胸膜中皮腫の手術施行例の多い病院はどこでしょうか? そこにかかれば良いですよね?
(答) 医療の判断で数ももちろん大事ですが、質も同様に大事です。手術例の多さだけみると、手術すべきでない進行したステージの中皮腫の方に手術している病院が一見手術数が増えています。進行したステージで手術を実施し命を縮めた遺族も会員の中には複数いらっしゃり、手術を後悔されている方がいるのも現実で、そうした会員からは手術のしすぎが警告されています。手術は、中皮腫のステージや組織型や体力やその他の疾患の有無等を総合的に適切に判断した上で実施する事が肝心です。手術数が多く一定の実力はあっても、労災の手続きをほとんどしてくれない病院もあります。当会では、手術数の多さのみが本人やご家族にとり大事とは考えていません。手術は総合的な判断が必要で、手術のうまさは病院でなく、ある病院のある医師の「神の手」でもあります。セカンド・オピニオンを求める方には、会は総合的な判断ができ、手術が適しているかどうかを判断できる医師をまず紹介し、その医師から手術に優れた外科医を紹介するようにしています。
(質問) 胸膜中皮腫の抗ガン剤の治療は何が良いでしょうか?
(答) 現在悪性胸膜中皮腫の治療として、良く使用されて抗ガン剤は、シスブラチンと塩酸ゲムシタビンでしょう。塩酸イリノテカン、カルボプラチン、ドキソルビシン、ドセタキセル水和物、酒石酸ビノレルビン、パクリタキセル、等様々な薬剤が使用されています。
現在まで使用されてきた中皮腫の抗ガン剤ですが、一時的に数か月腫瘍が縮小しても、半年後には元に戻る場合が殆どで、明らかな生存期間の延長が証明された抗ガン剤がない実情でした。完全に治癒する事は極めて稀で、進行を遅らせる事さえ十分にできなかったのです。中皮腫の進行を遅らせる事が初めて証明できたのが、シスプラチンとペメトレキセド(商品名アリムタ)です。この2種類の薬を使用したところ、9.3ヶ月の余命が12月となりました。ペメトレキセド(商品名アリムタ)は、肺の副作用で死亡者がでる場合があります。2006年6月に厚生労働省の審査が開始されました。承認された以降、中皮腫の抗ガン剤としてシスプラチンとアリムタが、安全に注意しながら使用される事が日本で増えると思います。
抗ガン剤は、からだが疲れる、食欲がなくなる等の副作用がある方も多いのです。効かない抗ガン剤は漫然と使い続けない事、生活の質を大事にして治療方法を大きく変える事も人生の上で大切です。
(質問) 胸膜中皮腫の新薬の現状を教えて下さい?
(答) 現在、欧米で使用されているのは、ペメトレキセド(商品名アリムタ)という新薬です。使用した方の生存期間を3ヶ月延長させた事が初めて立証された薬です。現在治験が終了し7月までに厚生労働省に申請が行われ、早期に認可されて保険での使用がまもなく開始される事と思います。詳しくは、イーライーリリー社HP(http://www.lilly.co.jp/CACHE/index_page_pageobj472_.cfm)を、ご参照ください。
肺毒性(薬剤性肺繊維症等の、薬物による肺の副作用。ステロイド剤の注射で全快する事もあるが、時に死亡に到る事があり、肺ガンの抗ガン剤「イレッサ」が問題となった。)に、注意しながら使用する事が望まれる、抗ガン剤です。
中皮腫の新薬は、ヨーロッパやアメリカ含めて様々な治験や検討が続けられています。2004年のIMIGでは、シスプラチン+アリムタ以外に画期的な薬はない状況でした。2006年10月に、シカゴでIMIGが開催されます。そこでどのような報告がなされるでしょうか?今後は、中皮とは何かという点を踏まえた開発が重要だと思います。
(質問) 胸膜中皮腫の手術で、「全摘出手術はできない」場合の判断基準を、教えて下さい。
(答) 悪性胸膜中皮腫には前述のIMIGステージ゙分類があります。論文で手術が絶対に薦められるのは、ステージ1Aです。ステージ゙1Bや2は他に有効な治療法がない事もあり、体力や全身の病気を考慮して、手術をしているのが現状だと思います。
「ステージ3やステージ4の胸膜中皮腫の方の手術は、原則的に勧められない」とする胸部外科医の判断が、妥当だと思います。
(質問) 自宅で療養したい場合どのような方法があるのでしょうか?
(答) 中皮腫は、最後の数日まで自宅で過ごせる病気です。在宅で悪性疾患に詳しいクリニックと訪問看護ステーションの方が、どの地域にもいますので、病院の医療相談室等に相談しましょう。すべて医療保険で可能で、自己負担は毎月10万円以下です。会でご相談にのりますので、ご連絡ください。
(質問) 放射線療法の効果は、どうでしょうか?
(答) 中皮腫は、放射腺療法で全快させる治療方法ではありません。中皮腫の一部で一時的に腫瘍が縮小する場合もありますが、完全に治す治療とはされていません。そのため中皮腫に放射線治療を行わない医療機関が多いと思われます。
放射線療法には、中皮腫の疼痛を和らげる効果があるため、その目的で実施される事があります。多くの癌で、手術と抗ガン剤と放射線の3者を組み合わせると治療効果が上がる場合も多いので、欧米でも中皮腫に手術と抗ガン剤と放射線を組みあわせた治療法が試験的に行われています。日本でも同様の考えで、3者併用療法が試みられています。
(質問) 胸膜中皮腫の、免疫療法はどうでしょうか?
(答) 免疫療法では、丸山ワクチンの使用、リンパ球療法等を行われている方、食養生を行われている方、漢方薬の使用等をされている会員さんをよく見かけます。温泉に行く方も多いようです。免疫療法は副作用が少ない治療も多いので、免疫療法を併用される方は実際にかなり多いと思います。
但し時々、藁をもすがる患者さんの弱みにつきこむかのように、高額の治療を行う医療機関もあるようです。月額50万円を超す様な治療方法は、少し冷静に判断される事も必要でしょう。なお胸膜中皮腫の生存期間を延ばす事が確実な治療法ではない点もご了解いただければと思います。
(質問) 中皮腫の治療には、全人的な治療が必要と思うのですが?
(答) そのとおりです。身体的な面では症状に対して、きめ細かな対応が、それぞれの状態に応じて必要です。中皮腫の症状の進行に沿って早め早めに対応が必要です。そうすることで随分、毎日が暮らしやすくなります。精神的には、こんな病気にどうして自分がなったのかと将来への不安が募ります。それぞれに応じた相談する先が必要です。
社会的には、経済面が大きく、労災申請やらを含み、様々な面での手続き上の問題も次々と出てきます。家族関係、職場関係、地域とのつながりでの人間関係こういったことも、悩みの為となる方も居られます。
スピリチュァル(霊的)な面でも、病気が進んでいく中で、自分の存在の意義は何なのか、生きていてもしょうがないなどと悩むこともあります。このように、人間の持つ様々な側面を多面的にとらえてのケアが必要とされます。医師・看護師・ソーシャルワーカー・薬剤師などの専門家によるチームが組まれるのがベストですが、「患者と家族の会」の相談員や支部の世話人が、それぞれの地域での相談窓口を見つけてくれるお手伝いもしています。