元労働者に団交権なし?
2008年7月、奈良県労働委員会はニチアスに対して、元従業員らで作る労働組合と被害の補償や実態解明を求めた団体交渉に応じるよう命令していた。しかし先日、ニチアスが再審査を申し立てた中央労働委員会が組合側の求めを棄却する決定を出した。その理由は「団交を義務付けることに疑問を抱かざるを得ないほど長期間が経過し、会社側も健康管理手帳を交付するなど救済措置を講じている」とされている。しかし、アスベスト疾患は長時間を経過して発症することを考えるとこの決定はおかしいと思う。さらに健康管理手帳の交付などは会社側の救済措置ではない。国の管理する制度だ。
2007年、ニチアス王寺工場の担当者に会った時「当時の労働者はアスベストの危険性が解っていた」といった。その言葉を聞いて「え~!」と思った。本当に危険性が解って働いていたのだろうか?しかし多くの元労働者は「知らされていなかった」という。危険性が解っていたのは会社と一部の人達だけではなかったのか?アスベストの危険性も知らされずに働いてきて、「長期間経過」したのちに健康障害を起こした彼らの怒りと苦しみは、想像を絶するものがあるはずだ。
先日、泉南アスベスト国賠の勝利判決では国の不作為が認められた。その中でまだこのような時代錯誤ともいうべき話があったのか、と棄却のニュースを読んでわが目を疑った。中央労働委員会は労働者の想いが通じないところだった。
私のもとには日々「静かな時限爆弾」の被害者の悲痛な声が届いている。公正な判断をする労働委員会は「長期間の経過」の後に起こる、時空を超えた苦しみをもっと理解してほしい。(古川)
